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印南敦史の「毎日書評」

疲れない・疲労回復のための2つの「呼吸法」

author 印南敦史
疲れない・疲労回復のための2つの「呼吸法」
Photo: 印南敦史

疲れない・バテない・壊さない スタンフォード式 脳と体の強化書』(山田知生 著、大和書房)の著者は、米スタンフォード大学でアスレチックトレーナーを務めている人物。

アスレチックトレーナーとは、身体面と精神面の双方からスポーツ選手をサポートし、二人三脚でベストパフォーマンスを目指す仕事だそうです。

最新の科学的知見をもとに「選手にとってなにがベストか」を常に模索しているわけで、それこそが学問においてもスポーツにおいても優れた結果を出し続けてきたスタンフォード大学の強さの秘密。

つまり本書も、著者がいままで優れた専門家やリサーチャーと協力しながら研究を重ねてきたことの結晶だというわけです。

そんな著者は日本人の「疲労」に着目しています。

疲労が著しくパフォーマンスを下げることを知っているにもかかわらず、多くの方がいまだに慢性疲労を感じているのだとしたら、それは有効な回復方法を知らないため「仕方がないと諦めている」のではないかと。

ぜひここでお伝えしておきたいのは、疲労回復はまったく難しいものではない、ということです。

(中略)ちょっとした日常習慣で、「その日の疲れ」を「その日のうち」に、あるいは「今この瞬間の疲れ」を「今この瞬間」に解決することができます。

それも気合いと根性といった精神論ではなく、科学的根拠のある簡単な回復法があるのです。(「はじめに」より)

それらをわかりやすく解説した本書のPART 1「疲れないからだと心を手に入れるストレス最強マネジメント」のなかから、「呼吸」についてのポイントを抜き出してみたいと思います。

「口から吸う」ではなく「鼻から吸う」べき理由

口は「飲食のためにつくられた器官」であり、呼吸には適さない。呼吸のためにつくられた「鼻」で呼吸すれば、外気に含まれるチリ、菌やウイルスが侵入しづらくなる。

肺で酸素と二酸化炭素がガス交換される際に欠かせない一酸化窒素も、鼻呼吸によってつくられる。(80ページより)

口呼吸にすべきか、鼻呼吸にすべきか? この問題について著者は、「断然、鼻呼吸」であると断言しています。なぜなら口はあくまで“ものを食べるところ”であり、鼻こそが呼吸のためにつくられた器官だから。

鼻には細かい毛がびっしり生えており、空気の通り道も細くなっています。口から吸い込む空気を10とすれば、鼻から吸い込む空気は50ほど。こうした鼻の構造が、空気中に含まれる細かいチリや一部の細菌・ウイルスの侵入を防ぐ役割を果たしているわけです。

口から空気を吸うことの難点は、空気の通り道が大きいうえに鼻毛のようなフィルターがないこと。そのため、チリや細菌・ウイルスもろとも吸い込んでしまうというのです。そのため、口呼吸だと風邪をひきやすいともいわれているのだとか。

さらにもうひとつ、鼻呼吸には重要な作用があるそうです。

鼻呼吸をすると、鼻の奥のほうの「副鼻腔」の粘膜で「一酸化窒素」がつくられます。

空気は気管支の末端に膨大にある「肺胞」に送り込まれ、そこで空気中の酸素と二酸化炭素のガス交換が行われることに。そのとき必要になるのが、肺胞を拡張する作用のある一酸化窒素だというのです。

つまり鼻呼吸なら、酸素の「材料」となる空気と、酸素をつくる「ツール」である一酸化窒素をセットで肺に送り込めるわけです。

鼻呼吸時の一酸化窒素の産生量は口呼吸の6倍、ひと呼吸あたりの肺への酸素吸収量は口呼吸より10〜15%多いという実験データもあるそう。

同じ空気を吸い込むのでも、口呼吸と鼻呼吸では“呼吸の質”が格段に違うということです。(80ページより)

お腹に力を入れて「4秒で吸って、6秒で吐ききる」を繰り返す

ベーガル・トーンを上げる呼吸法「IAP呼吸法」には、お金も器具もいっさい不要。必要なのは「1日5分程度の時間」と「毎日、行なうこと」だけ。

それでいて、ベーガル・トーンを上げて副交感神経を優位にし、心身に落ち着きをもたらす効果は絶大。(82ページより)

ここで紹介されているのは、スタンフォード大学で用いられ、ベーガル・トーン(瞑想神経の活性度)を効果的に上げる「IAP呼吸法」の実践法。

リラックス状態をつくる副交感神経は、実は瞑想神経の支配下にあります。

瞑想神経が活性化されると、副交感神経が優位になり、生活に落ち着きと静けさがもたらされるということです。

瞑想神経は英語で「ベガス・ナーブ(Vagus nerve)」、そこから転じて、瞑想神経の活性度を「ベーガル・トーン(Vagal tone)」といいます。

瞑想神経は、いわば副交感神経の「元締め」のようなもの。その瞑想神経の活性度を上げること、つまりベーガル・トーンを上げることが、副交感神経を優位にする有効な戦略になるというわけです。(68ページより)

ベーガル・トーンを上げる呼吸法「IAP呼吸法」を行う際に意識したいのは、「おなかをふくらませたまま(腹圧をかけたまま)息を吐くこと。次の2点の要領で行うそうです。

1 息を吸うときは鼻から吸い、お腹をふくらませるように(風船のように)すること。

息を吸っている後半には、胸も上がってきます。吸う時間の目安は4秒間。

2 息を吐くときは、無理なくゆっくりと、お腹に圧がかかっているのを感じながら吐いていきます。

吐いている途中で多少、お腹がへこんできて、開いていた肋骨がお腹の内側に向かって閉じていきます。吐く時間の目安は6秒間。 (82ページより)

著者いわく、4秒吸って、6秒吐くという秒数設定は「ちゃんと吐く練習」をするためのもの。日ごろ「吸う」ばかりになりがちな現代人は、吐く秒数を長くしたほうがいいのだとか。

ちなみに、行う際のおすすめの時間帯は、長い会議や仕事が一段落したあと、そして寝る前だそうです。

そうしたタイミングでこの呼吸法を行うことでストレスがいったんリセットされれば、もうひとがんばりできるようになり、夜は健やかな入眠が促されるというわけです。(82ページより)

「努力を重ね、物事に励み、成果を出す」ということを、疲れ果て、苦しみながら続けるのは難しいもの。適切な休息で気力体力を十分に回復してこそ、楽しく幸せに努力を重ねることができるわけです。

心身がそのような状態にあるときにこそ、人は最大のパフォーマンスを発揮することができる。こうした考え方に基づく本書を活用すれば、疲れを解消できるようになるかもしれません。

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Source: 大和書房

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