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心理学者が発見した「良い人生」を送るための3つの道筋

author Inc./訳:伊藤貴之
心理学者が発見した「良い人生」を送るための3つの道筋
Image: Shutterstock

数年前、経済学者のTyler Cowen氏によるインタビューに答えて、ノーベル賞を受賞した心理学者のDaniel Kahneman氏が驚くような発言をしました。

「人はなぜ、友人と過ごすといった、幸せになれる活動にもっと時間を割かないのか」とCowen氏に聞かれたKahneman氏は、「誰もが幸せを最大化しようとしているわけではないと思う」と答えたのです。

待って? 正気の人が自分をできるだけ幸せにしようとしていないとはどういうこと?

人生には2つの幸せがある

Kahneman氏は、幸せには2種類あると説明します。愛する人たちと過ごすなどの喜びに満ちた体験を求めることもできるし、人生への満足感を求めることもできます。

人生への満足感(life satisfaction)とは、一日、一年、あるいは人生全体を振り返ったときに、何か価値のあることをやり遂げたと感じられることです。

最終的に素晴らしい満足感を得られたとしても、その過程では決して楽しいことばかり経験するわけではありません。

たとえば、子供を立派に育て上げたと満足するためには、汚れたおむつを何度も交換しなければなりません。

ビジネスを立ち上げ軌道に乗せられたら、非常に大きな満足感が得られるでしょう。しかし、その道のりは苦しいものであることが多いのです。

つまり、Kahneman氏は、良い人生を送るための2つの道筋があり、どちらを選ぶかはそれぞれの価値観や好みによると言っているのです。

しかし、新しい研究によると、実は3つ目の選択肢もあるようです。

あなたは人生に快楽を求めることもできるし、満足感を求めることもできます。しかし、そのどちらも得られない状況にいるときには、心理的な豊かさを求めることができます。

逆境でも「良い人生」への道筋を見つけることができる

まず定義を確認しましょう。

心理的に豊かな人生とは、このテーマに関する新しい論文の著者によると、自分自身や世界の見え方が大きく変わるような、新しさや、複雑さを持った意味深い経験に満たされている人生のことを言います。

この論文をQuartzに寄稿したSarah Todd氏は、心理的に豊かな体験として海外留学を例に挙げています。留学生たちは「違う国の習慣や歴史を学んでいくうちに、自国の社会的慣習について見つめ直すようになることが多い」と指摘しています。

ときどき不快な思いをすることはあっても、留学はとても素晴らしい体験になります。もっとも、人生を心理的に豊かにしてくれる体験は、必ずしも楽しいものである必要はありません。

心理的な豊かさを求める道筋の大きな利点のひとつは、レモンからレモネードを作る方法を学べることなのです。

「戦争や自然災害を経験すると、幸せで意味のある人生を送れているとは感じられなくなるかもしれません。それでも、そうした体験から心理的豊かさを引き出すことはできます」とTodd氏は説明しています。

あるいは、不妊症、慢性疾患、失業など、それほど劇的でなくとも痛みを伴う出来事に遭遇するかもしれません。

いずれにせよ、たとえ苦しみを経験したとしても、その体験により、自分自身と世界への理解の仕方が変わったのだとしたら、そこに価値を見出すことができます。

この研究が学術的な理論構築以上の意味を持つのは、この点にあります。良い人生を送るとはどういうことかについて、異なる視点を持つことで、人生の経験を異なるレンズを通して見られるようになります。

幸福感と 人生への満足感との違いを理解することで、長期的な価値を得るための短期的な犠牲を受け入れられるかもしれません(起業家のみなさん、あなたたちのことです)。

また、「心理的な豊かさ」という言葉を覚えることで、困難な状況をよりポジティブに捉えることができるかもしれません。

理解すべきことは、人間は複雑な存在であり、それゆえに良い人生のビジョンも複雑であるということです。短期的な快楽、長期的な目標、自分の幅を広げてくれる経験との間のトレードオフで悩んだときは、このことを思い出してください。

そのどの道筋をたどっても良い人生へと至ることができます。そして私たちはみな、これらの道筋の間で最適なバランスを見つけようと揺れ動いているものなのです。


Source: Quartz, APA PsyNet

Originally published by Inc. [原文

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