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印南敦史の「毎日書評」

人間関係がスムーズに。「傾聴力」を高めるとよいこと

author 印南敦史
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人間関係がスムーズに。「傾聴力」を高めるとよいこと
Photo: 印南敦史

「ねえ、私の話聞いてる?」と言われない「聴く力」の強化書――あなたを聞き上手にする「傾聴力スイッチ」のつくりかた』(岩松正史 著、自由国民社)は、「傾聴」というコミュニケーションの方法を紹介した書籍。心理カウンセラー、傾聴講師である著者は、「傾聴」を次のように定義づけています。

傾聴は、相手との共通点を探して仲良くなることとも、相手を無視することとも違う「そのまま受け止めて支える」ための「聴き方」です。(「はじめに」より)

もしもいままで「人の話を聴くことは難しい」と思っていたなら、それはただ“聴くときに大切なこと”を知らなかっただけ。「聴く技術」を身につけるとなると時間がかかりそうですが、正しくしれば圧倒的に速く身につけることができるそう。

だとすれば、傾聴についてもう少し知っておきたいところ。そこで第1章「『話を聴く』って、どういうこと?」に焦点を当て、傾聴についての基本的な考え方を確認してみたいと思います。

傾聴ってなに?

「傾聴」のベースは、アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した心理療法「来談者中心療法」だといわれているそうです。

ロジャーズは、聴き手にとって大切な姿勢は「受容(無条件の積極的関心)」「共感(共感的理解)」「一致(純粋性)」の3つであると主張しているのだといいます。

受容

・相手の存在に条件をつけない

・一人の人間として尊重する

・いい悪いと評価しない

・否定、非難、批判、審判しない…などなど

共感

・相手とともにわかろうとする

・自分が感じているものが相手が感じているものと同じかどうか確認する

・あたかも相手の精神的世界を自分自身の世界であるかのように感じ、しかもその際自分の感情を巻きこませない…などなど

一致

・体験と自己認知にズレがない

・人と向き合っているときの自分に意識が向いていること

・必要があれば感覚的に正確に自分を表現できる状態にあること

・聴き手が自分自身を欺かない…などなど

(21〜22ページより)

ちなみに著者自身は、傾聴をこのように理解しているのだそうです。

「聴き手自身が自分の心を傾聴できた分だけ、話し手の心の声を聴けるようになること。またはそのための技術」(22ページより)

このように“自分なりの傾聴の定義(理解)”をひとつしっかり持っておくと、傾聴の練習がしやすくなるようです。(20ページより)

「認知」と「行動」の違いは?

著者はここでカウンセリングの話題を出しています。

カウンセリングのアプローチは、大きく「“行動”にアプローチする」「“認知”にアプローチする」「“感情”にアプローチする」の3つに分けられるのだと。

行動にアプローチするとは、すなわち「やらせてみる」ということ。やってみてうまくいったら「やった! できた!」と感情はよくなり、感情がよくなると「またやってみよう」と認知はプラスにとらえる(考える)ようになるもの。

そして、プラスにとらえると次の行動もプラスになるわけです。いわば、「その時に、なにをするか」という行動の部分に対してアプローチする方法なのでしょう。

認知にアプローチするとは、簡単にいえば「教育する」こと。

相手のいうことを聞いて納得して行動した結果、プラスの感情が生まれると、次に認知は「この人のことを信じてみよう」となり、またそのとおりに行動するーー。これが「認知からアプローチする」という例だそうです。

「考えてから行動する」という自然な流れからみると認知と行動は常にセットともいえます。

2つの違いをあえて言うと、 「行動」は何かをさせる、あるいは禁止するといった具合に「アウトプット」するものに注目したアプローチになります。

「認知」は知識や考え方に何をどう「インプット」するかに注目したアプローチと言えると思います。(26ページより)

いわゆる「アドバイス」は、認知または行動(あるいは両方)にアプローチする代表的な手法。(23ページより)

感情にアプローチする

次の「感情へのアプローチ」とは、「感情あるいはその人の存在そのものにアプローチする」こと。

情にアプローチするための方法のひとつが傾聴であり、そのことを説明するために著者は「心のバケツ」という話を引き合いに出しています。

胸のあたりに大きなバケツがあると思ってください。心のバケツです。

悩んだり苦しんだり気持ちがいっぱいいっぱいになっている人は、心のバケツから感情という水がダーッとあふれ出てしまっている状態です。

その人に向かって「ああ行動してみたら」「こう考えてみたら」と行動や認知に対するアドバイスをしたところで、「そうできればいいんだけれど、でも…」「うるさい!」と受けとってもらえないのではないでしょうか。

アドバイスした人が言っていることが、とても正しい正論だとしても、です。(27〜28ページより)

よかれと思ってアドバイスしたのに、相手にスッキリ受け取ってもらえなかったということはあるもの。そういう場合、相手は頭ではそれが正しいとわかっていても、気持ちが受けつけないわけです。

そんなときにまず必要なのは、あふれ出ているバケツの水を止めること。そしてできれば、心のバケツに隙間(余裕)をつくってあげたいところ。

そのための方法として傾聴が有効であると、前出のロジャーズは主張しているわけです(ただしこれはエビデンスとしてロジャーズが提唱した仮説に基づく研究結果であり、傾聴すれば誰でも元気になると保証するものではないそう)。

アドバイスをしてはいけないとはいわないものの、それよりまず大切なのは、十分に心のバケツの水位を下げること。そういう意味でも、傾聴はすべてのカウンセリングの基本だというのです。(27ページより)

書かれているのは特別なことではなく、誰にでもできる普通のこと。しかし、そんな本書を読むことで、手っ取り早く聴き上手になれると著者は断言しています。人の話を聴くことが苦手だと感じている方は、手に取ってみてはいかがでしょうか?

Source: 自由国民社

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