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印南敦史の「毎日書評」

アドラー心理学と幸福学を仕事に生かす。身につけたい「勇気づけ」のことば

author 印南敦史
アドラー心理学と幸福学を仕事に生かす。身につけたい「勇気づけ」のことば
Photo: 印南敦史

アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法』(平本あきお、前野隆司 著、ワニプラス)は、アドラー心理学のエキスパートだというメンタルコーチの平本あきおさんと、現代の心理学である幸福学(ウェルビーイング・スタディ)の探究者である前野隆司さんの共著。

前野さんによれば、本書には次の3つの特徴があるのだそうです。

1 アドラー心理学と幸福学を俯瞰しわかりやすく対応づける本であること

2 わかりやすく役に立つ実践例を伝える本であること

3 平本さんと僕から心を込めてみなさんに贈る本であること

(「まえがき」より)

1つめは、100年前からのアドラー心理学と現代の幸福学を結びつけながら学べる初めての本であるということ。しかも2にあるように、あたかも光景が目に浮かぶような形で、よくある悩みの解決法をたっぷり述べているのだそうです。そして3についてはいわずもがな。ふたりの思いが凝縮されているわけです。

本を書くとき、僕は研究者である以前に、心を持った人間です。1人の研究者としてではなく、1人の生きる人間として、すべての人の幸せのために、本書を書いているのです。 そして、本書をお読みいただくとおわかりになると思いますが、平本さんも、人々が幸せに生きる世界をつくることを目的に活動されている方です。生きる目的自体が共同体感覚。僕と同じです。だからこそ、意気投合し、みなさんのために、この本を書いたのです。(「まえがき」より)

そんな本書の第4章「勇気づけとアサーションの実践例」のなかから、「褒める・叱るが通用した時代と通用しづらい時代、どこが変わった?」に焦点を当ててみたいと思います。

「褒める・叱る」が通用しづらい時代

かつての日本において、「褒める・叱る」というコミュニケーションは指導や教育、躾の基本であるかのようにみなされてきました。

だからこそ年長者ほど、そんな方法が通用しなくなったことに驚き、「時代が変わった」と嘆くことになってしまうわけです。

昔といまとでは、なにが変わったのでしょうか?

ポイントは、両者の立場です。

褒める・叱るというコミュニケーションには、上下関係が欠かせません。(202ページより)

かつて日本のほとんどの組織には、年功序列という確固たるヒエラルキーがありました。上の立場の人ほど豊富な知識と経験を持ち、成果も出しやすかったということ。

この場合、上下関係はお互いの了解のもとに成り立っているので、上の立場の人から「よくやった」とほめられれば、受け取る側(部下)も「すごい人に評価された」と思うことができます。

そのため「どうしてこんなことができないんだ!」と叱られたとしても、「もっとがんばって認めてもらおう」と発奮できたわけです。

ところが、いまの組織や社会ではそうはいきません。転職したり、ダブルワークしたりなど働き方も多様になってきているだけに、年齢や勤続年数、役職などで経験や知識を判断できなくなっているのです。

そんな時代においては、他業種から来たマネージャーより、現場のスタッフのほうがはるかに経験や知識が豊富だというケースも珍しくはないでしょう。だとすればそんな関係において、叱るのはもちろん論外。

「よくやった」と褒めても、「あなたにいわれたくないよ」となってしまうことも考えられます。

それどころか、「ここを改善したほうがいいですよ」というようなアドバイスさえ、「なにも知らないくせに、偉そうに」と思われてしまうかもしれません。

かつて「褒める・叱る」が通用する時代があったのは事実だったとしても、いまは違うということ。そして、これからはますます通用しなくなると考えたほうがいいでしょう。(202ページより)

時代に適した「アドラーの勇気づけ」

そんな時代にこそ活用すべきものとして紹介されているのが、アドラーの勇気づけ。

褒める・叱るというような上下関係で評価するのではなく、対等なヨコの関係で、相手の気が高まるように促すコミュニケーション技法なのだそうです。

そのことに関連して紹介されている“仮想問題”を見てみましょう。

仮想問題:年上で経験豊富な部下への接し方

自分よりも年上で、経験もある部下が成果を出した。 ここで年下の上司が「良くやってくれた」と言っても、たとえ「良くやってくれましたね」と敬語を使ったとしても、上からの評価目線になってしまう。ここでかけるべき言葉を考えてみてください。(204ページより)

この場合、正しい勇気づけのことばは次のようなものだそう。

「◯◯さんががんばってくれたおかげで、チームのみんなが助かりました」(205ページより)

つまり上から目線の評価ではなく、まわりの人や自分への貢献を指摘することで、相手を勇気づけるということ。

アドラー心理学をこのようにビジネスに応用できるというのは、意外でもあり、興味深くもあるのではないでしょうか?(204ページより)

本書を通じてアドラー心理学の体系を理解すれば、思考と知識の幅を広げることができるといいます。

「アドラー心理学に興味はあるけれど、どこから入ったらいいのかわからない」という方には最適な一冊だといえそうです。

Source: ワニプラス

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