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HOW I WORK

ベストパフォーマンスを発揮するために。元サッカー日本代表・鈴木啓太さんの仕事術

author 取材・執筆/岡本英子 写真/本人提供
ベストパフォーマンスを発揮するために。元サッカー日本代表・鈴木啓太さんの仕事術

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。

今回お話を伺ったのは、Jリーグ・浦和レッズのMFとして活躍した元サッカー日本代表の鈴木啓太さんです。

鈴木啓太さんの仕事歴:

東海大翔洋高校卒業後、2000年に18歳で浦和レッズに加入。3シーズンに渡り主将を務めたほか、Jリーグベストイレブンに2度輝くなど、16年間にわたり浦和レッズ一筋でプレー。

2006年にはイビチャ・オシムが監督に就任した日本代表に選出され、オシムジャパンでは唯一、全試合先発出場を果たす。2015年に現役を引退。

現在、750人以上のトップアスリートの腸内細菌研究や、研究成果をもとに腸内環境を整えるための食品・飲料などの開発などを手がけるAuB(オーブ)株式会社でCEOを務める。

現役時代から「ネクストキャリアはどうあるべきか、ずっと考えていた」という鈴木さんは、現役引退後、アスリートの“うんち”を集めて腸内細菌を解析・研究をするベンチャー企業「AuBのCEOに就任。

会社設立から今年で6年。アスリートからベンチャー企業のCEOへと転身した鈴木さんの働き方とは?

現役時代からネクストキャリアは模索していた

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ーAuBを創業した経緯を教えてください。

現役時代からネクストキャリアはどうあるべきかずっと考えていました。そのきっかけは、元サッカー日本代表の中田英寿さんです。

僕が高校生の頃、中田さんはヨーロッパのチームで活躍していたり、日本代表に選ばれたりしていました。そんな第一線で活躍する現役選手でありながら、中田さんはその時すでに資格取得のための勉強をされていたんです。

サッカー選手としての高い目標を持ちながら、それだけでは駄目だと危機感を持っていた。こういった中田さんの姿勢、考え方を知ったことは、僕にとって大きなターニングポイントになりました。

その後、僕自身もネクストキャリアを模索していたのですが、なかなかこれというものが見つからなくて。そんな中、2015年にうんちの記録アプリを作っている人がいることを知り、そんなにおもしろい人がいるんだと思って会いに行きました。

なぜ興味を持ったのかというと、子どもの頃から母親に「人間は腸が一番大事」と言われて育ったので、普段からお腹の調子を気にしてコンディションを整えていたからなんです。

実際、その方とお会いして「絶対におもしろいことになる。これは自分の使命かもしれない!」と感じ、この道に進みました。

コンディションを整えることでベストパフォーマンスが発揮できる

ーAuBでの仕事内容を教えてください。

CEOに就任してから始めの4年間は大学の先生と共同研究をしたり、研究に協力してくれるアスリートの検体を集めたりしていました。

ラグビー、野球、陸上長距離、相撲、自転車競技、ハンドボールなどの選手に協力していただき、4年間で27競技の検体を集めたのですが、これが一番大変でしたね。

「腸内細菌の研究って何?」、「うんちを集めて何をするの?」と聞かれることも多く、理解してもらうのが大変で。

それがここ数年で、世界中で腸内細菌の研究が進み、認知症や癌などの疾患との関係がわかってきたんです。これにより、アスリートの認識も変わり、最近は自ら調べて欲しいと志願してくださるケースも増えました。

その結果、現時点で33競技750名以上のアスリートに協力していただき、検体数は約1700になりました。

AuBでは「すべての人を、ベストコンディションに」をキャッチフレーズに掲げています。

アスリートはパフォーマンスを最大限に発揮しなければいけないわけですが、そのために最も大切なのはコンディションです。それはあらゆる人に置き換えても同じで、コンディションが整うことで良いパフォーマンスが発揮できると考えています。

それを一番体現しているのがアスリートなので、AuBはアスリートの腸内環境を研究し、その研究が色々な方のコンディショニングに役立てられたらと思い活動しています。

仕事はルーティンになり過ぎないよう意識している

ー1日の仕事の流れを教えてください。

コロナ禍ということもあり、基本的に今は在宅で仕事をしています。

毎日朝5時ぐらいに起床して、軽い食事をした後にしっかり筋トレをして、7時くらいから午前中いっぱいはミーティングをしていることが多いですね。

午後は夕方くらいまで資料などを読み、途中で気分転換にゴルフの打ちっぱなしに行ったり、公園で体を動かしたり、散歩したり。時には夜遅い時間に仕事をしていることもあります。

ただ、これも日によって変わります。というのも、ルーティンはオートマチックにできる良さがある反面、思考が停止するとも感じるから。

そうすると、本来大切にしている“感覚”が失われる気がするし、逆に感覚だけに頼るとちょっと物足りないというか、負荷が足りないとも感じる。なのでバランスをとることを意識しています。

どうしたら楽しいかを常に考え、未来を妄想する

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ー仕事のパフォーマンスや集中力を上げるために心がけていることはありますか?

コンディションを整えることがパフォーマンスを上げる最大の近道だと思うんです。体調が悪い時って何もやる気が起きないですよね。だから体調が良い時間を増やす。そこに意識を向けていくことが重要だと思います。

僕は基本的には、追い込まれたときと楽しいときにパフォーマンスが上がるんです。だから、追い込まれたときには、「これをやり遂げたらどんな未来になるだろうか?」と妄想しながら、できるだけ楽しんで仕事をするようにしています。

また、仕事をしていると、ひたすら目の前のタスクに追われて余裕がなくなりがちですよね。そうなったときにはあえて一度切り替えて、自然のある場所に行く、筋トレをするなどして自分にとって楽しい状態を作り出すようにしています。

あと1つ、パフォーマンスを上げるためには、自分を客観的に見てくれる人を周りに置くこと。例えばアスリートだとコーチやトレーナーになりますが、ビジネスパーソンなら、会社の同僚や上司、別部署で信頼できる人でもいいと思います。

すばらしいコーチングをしてくれる人と出会うと人は伸びる。僕が現役時代に感じたことです。

“失敗をどのように受け止めるか”が成長のヒントに 

ーこれまでもらったアドバイスの中で、特に印象深いものはありますか?

最近、サッカー解説者で元サッカー日本代表の福田正博さんとYouTubeで対談しました。

ミスターレッズと呼ばれた福田さんは2008年〜2010年の2年間、浦和レッズのコーチだったんですが、当時の監督だったフォルカー・フィンケ氏がよく「リアクションが大事」と言っていたという話をしてくれました。

想定外のことや失敗などネガティブなことが起きた後、そのことをどのように受け止めてどのようなリアクションを示すかが成長していく上で重要で、そこを指導者は見ていると。

例えば選手なら、ゲームから外された直後に不満な表情を見せても、次の日にグラウンドでどういうリアクションをとるのか。トレーニングをするのか、ピッチ外での振る舞いはどうか、そういったパーソナリティな部分がものすごく重要だと。前向きなリアクションを示す人は必ず良い方向にいくと言っていました。

これってどんなことにでも当てはまると思うんです。

ダメだと言われてそのままチャレンジせずに終わるのか、もう1回やらせてくださいと言うのか。そこに人の成長のヒントがあるんじゃないかって、福田さんいいこと言うなって思ったんですよね。

ー仕事において役に立った本はありますか?

元プロ野球監督である落合博満さんの著書「決断=実行(ダイヤモンド社) です。

落合さんは選手としてはもちろん、監督としてもすばらしい方。その落合さんが、監督としての目線で組織やビジネスをする上での判断や考え方について、をわかりやすく伝えてくれています。

マネジメントする上で勉強になりました。

サッカーの可能性を活かして街をつくりたい

ー今後のキャリアの展望はありますか?

サッカー界に戻りたいという思いがあります。「スポーツってこんなにおもしろいんだ」とか、「こんなに人って成長できるんだ」と地域の人たちに感じてもらえたり、喜んでもらえたりするようなサッカー×街作りに貢献したいんです。

そう思うのはサッカーが好きだからでもありますし、スポーツにはいろいろな可能性があると思っているからなんです。

その可能性の1つにヘルスケアがあります。

Jリーグのクラブチームは本拠地のある地域との結びつきが深く、プロアスリートである選手はその街のアイコンのような存在でもあります。

彼らの協力により集まった腸内細菌に関するデータを街の人たちの健康に役立てることができたら幸せですし、その街の人たちがサッカーを観戦しに来ることで、より一層良い循環が生まれて、街全体が活性化するんじゃないかと思うんです。

さらにスポーツは教育にもシナジーがあって学べることが沢山あるので、スポーツを軸にした教育もできるんじゃないかと考えています。

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