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期限ギリギリまで仕事が終わらない理由

author Fast Company/訳:春野ユリ
期限ギリギリまで仕事が終わらない理由
Image: Shutterstock

チームプロジェクトは予想以上に時間がかかることで知られており、それを示す事例は身近にいくらでもあります。

AppleはHomePodの発売を延期しました。

その理由は、HomePodを洗練させるために「もう少し時間が必要」だからです。

Windowsは、Windows 10に搭載されると思われていた機能の発表を延期し続け、最終的にはいつの間にかなかったことにしてしまいました。

シドニー・オペラハウスの建設も、当初は4年しかかからない予定でしたが、結局14年もかかりました。

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?なぜチームの生産性は予定通りにいかないのでしょうか(その結果、そのプロジェクトに関わっている人たちの予定も狂います)。これには、パーキンソンの法則が大いに関係しています。

パーキンソンの法則とは?

パーキンソンの法則とは、「仕事量は、与えられた時間をすべて満たすまで拡大する」という古い格言です。

この言葉は、1955年にCyril Northcote Parkinson氏が『The Economist』誌に寄稿したユーモラスなエッセイの中で初めて使われました。

簡単な例を挙げましょう。あなたは自分のチームと一緒に、1人の同僚のためにサプライズパーティーを計画することになりました。

そのために使える時間は2週間です。会議室を予約したり、ケーキを注文したり、パーティー用の帽子を買ったりするには十分すぎるほどの時間です。

しかし、使える時間が十分にあることがわかっているせいで、そのパーティーはまどんどん複雑になります。Kateさんはほのぼのしたスライドショーを作りたいと考えています。

Brandonさんは会議室の飾りつけに熱心です。Maureenさんは、チームで手作りのカードを作った方が良いと考えています。

こうなると、とてもシンプルですぐに終わるはずのパーティーの準備が実際に終わるのに2週間もかかってしまいます。これがパーキンソンの法則です。

期限ぎりぎりまで仕事が終わらない理由

仕事自体がどんどん複雑になるだけでなく、先延ばししてしまうこともパーキンソンの法則の重要な特徴です。

期限まで一定の時間があるとわかっていると、ギリギリまで仕事に着手せず、仕事の着手が遅れると、もともと割り当てられていた時間内で終わらず、期限に間に合わなくなります。

Atlassian社でプログラム・マネージャーを務めるAumarie Benipayoさんは、前職でこれを実体験しました。

彼女は、4週間という短期間で仕事を仕上げる計画の開発チームと一緒に働いていました。

その期間にしなければならない作業はどれも、ギリギリになってから私のところに回ってきました。その4週間で完了したことは何もありませんでした。

なぜこういうことが起こるのでしょうか。経験に基づいて憶測すると、期限が迫ってくると、それがモチベーションになると思われます。

ヤーキーズ・ドットソンの法則によると、最適レベルの覚醒があると、作業のパフォーマンスが向上します。

ですから、期限がどんどん迫ってくると、「大変だ!どうしよう!」と思うことで、腰を据えて集中できるようになります。

パーキンソンの凡俗法則

パーキンソンの法則は、個人の生産性について語るとき最も頻繁に使用されますが、グループでも同じことが言えます。

たとえば、パーキンソンの凡俗法則は、組織内の人々は些細な物事に対して、不釣り合いなほど重点を置くことが多いとしています。

社会的手抜きも発生します。グループで作業すると、プロジェクトに独りで取り組むときほど労力を使わない傾向があります。

臨床心理学者で作家のNick Wignall氏は、「責任を負う人が他にも大勢いることがわかっているので、自分の主体性が弱まり、社会的責任感がグループ全体に分散してしまうのです」と説明しています。

パーキンソンの法則を有利に使う方法

パーキンソンの法則を理解しただけでは、戦いの半分にすぎません。本当に知っておきたいのは、期限ギリギリで仕事を仕上げるような危うさを防ぐ方法です。

ただし、プロジェクトに取り組んでいる最中は、パーキンソンの法則になかなか抗えません。

最善の道は、まず、プロジェクトのキックオフミーティングをしっかり計画することで、早期にスタートすることです。

それにより、チームがプロジェクトの要件の変更や先延ばしが発生しがちな大型プロジェクトにどのようにアプローチして完成させるかについて期待値を設定できます。

ここからは、このキックオフミーティングで考慮すべきことをご紹介します。

1.ビジョンと目的を明確にする

上司から、山積みにされたファイルをアルファベット順に並べ替えるようにと言われたとします(急ぎではないので、できるときにやってと言われました)。

どのようなファイルなのか、重要なファイルなのか、なぜアルファベット順にする必要があるのかわかりません。こんな状態で、果たして、どの程度のモチベーションでこのファイルの山に取り組めるでしょうか。

あまりやる気になれませんよね。

その作業の重要性やその作業に、どのような意味があるか明確にされていないからです。調査によると、自分の仕事が全体のどの部分に当たるか理解しているチームの方が、作業効率が高いことがわかっています(おまけに、創造性もレジリエンスも高くなります)。

ですから、プロジェクトにグループで取り組むときは、プロジェクトの開始時に、次のことをチームに対して徹底的に明白にしましょう。

  • このプロジェクトにはどのような価値があるか(ビジョン
  • このプロジェクトはチームや組織にとってどのような意味があるか(目的意識)

上記の項目を全員で共有することで、チームメンバーは自分の仕事の意味を実感することができ、与えられた作業やマイルストーンに対するモチベーションや当事者意識を高めることができます。

2.各人の役割を明確にする

どのプロジェクトでもそうですが、特に多くの異なるプレーヤーやチームが混在するプロジェクトでは、各人の役割を明確に説明することが重要です。

Benipayoさんは、DACIフレームワークを使用して、グループワークと意思決定に関する役割を明確にします。

  • D =ドライバー:ステークホルダーを囲い込み、必要なすべての情報を照合し、合意された日付までに決定を下す責任がある人。どのような決定かによって、プロジェクトのフルタイム・オーナーである場合とそうでない場合がある。
  • A =承認者:決定を下す人。
  • C =貢献者:決定に影響を与えうる知識や専門知識を持つ人。発言権はあるが、投票権は無い。
  • I =被通知者:最終決定を通知される人。

この種のフレームワークを使用して、チームメンバーに自分の役割を把握させると、チームメンバーは割り当てられた責任と貢献に対してより多くの説明責任を負わなければならなくなるので、責任転換や手抜きを防ぐのに役立ちます。

また、グループプロジェクトで常に大きな障害になるコミュニケーションやフィードバックに関する期待値を合理化することもできます。

このフレームワークにより、誰が最終的な決定権を持つのかが明確になり、プロジェクトの拡大や長期化の原因となる、相反する修正や提案のやりとりを無くすことができます。

3.プロジェクトの範囲を明確にする

パーキンソンの法則とは、単なる先延ばしのことではなく、仕事量が与えられた時間枠ぎりぎりまで拡大することです。

プロジェクトのキックオフで、チームと共に、何がプロジェクトの範囲内で何が範囲外か予め合意しましょう。

このようなガイドラインを最初から決めておくと、チーム全員でパーキンソンの法則の芽を摘み取ることができます。

プロジェクトの途中で新しい機能を求められたり別の提案が浮上したときは、プロジェクトのキックオフを思い出し、その種のことは範囲外であることに誰もが合意していたことをチームに訴えることができます。

このステップは、プロジェクト用の箱を作るようなものだと思ってください。プロジェクトが収まるべきパラメーターを定義することで、進行中の作業の拡大を、作業スケジュールに支障をきたす前に確実にとらえることができます。

4.トレードオフを特定する

どんなに効果的なキックオフミーティングの開催に最善を尽くしても、いろいろなことが発生します。想定外のことが発生して、プロジェクト全体が範囲外になり、スケジュールが狂ってしまう恐れがあります。

そのような時には、早い段階でトレードオフを明確にしておいてよかったと思うでしょう。トレードオフがあれば、直前に調整が必要になったときに、プロジェクトの中で最も余裕があるところを確認することができます。

タイミング、範囲、予算は、ここで調整すべき最も一般的なベクトルであり、キックオフの際に優先して話し合う必要があります。

たとえば、チームが今後のユーザー会議に先立って新製品の作成に取り組んでいる場合は、タイミングが最も重要な指標です。ユーザー会議より前に製品を完成させる必要があります。

つまり、範囲(機能を削減する)や予算(投資を増やす)の観点からトレードオフを行う必要があるかもしれません。

プロジェクトの開始時にこれをするのは気が引けますが、意思決定が必要な重要な瞬間では、間違いなく役立ちます。

「予定していた時間内に作業が終わらないことに気付くと、チームは立ち戻って、製品を発表するために最も重要なことに優先順位を付け直すことができました」 とBenipayoさんは言います。

これはパーキンソンの法則とほぼ正反対の行動です。割り当てられた時間枠内で作業を拡大するのではなく、時間枠に合わせて作業やその他の期待値を削減する必要があるかもしれません。

5.タイムラインを設定する

タイムラインがプロジェクトのキックオフの最後のステップになっているのは興味深いことです。実生活ではほとんどありえないことですが、プロジェクトへのアプローチとしては賢明な方法です。

家を建てることを考えてみましょう。建設業者に対して「このサイズで、このサンプルとまったく同じような家にしたいんです。

それから、この日付までに建てる必要があります」というアプローチは取らないでしょう。

建設業者と共にこちらが期待することと必要な作業について話し合い、その情報を念頭に置いて完成日を設定するはずです。

現実には、グループプロジェクトもこれと同じです。チームメンバーと一緒にプロジェクトの範囲について合意し、タイムラインは最後になります。

タイムラインの概要を説明する際には、プロジェクトの最中に発生するマイルストーンと期限を特定しましょう。

「グループで取り組むプロジェクトや目標をサブグループに分割する際には、慎重に検討する必要があります」とWignallさんは説明しています。

これにより、大型プロジェクトを管理しやすくなり、早く作業に着手しようという気持ちが高まります。

さらに、チームはプロジェクトに関して有意義な勢いがついているように感じられるので、非常にやる気が出ます(これは進捗の原則と呼ばれます)。

パーキンソンの法則の芽を事前に摘む

グループプロジェクト(時間はたっぷりあると思っていたプロジェクト)が完全に予定より遅れていることに気づいてぞっとするという経験は、誰にでもあります。

そうなる原因がパーキンソンの法則であることはこれでおわかりでしょう。しかし、良いお知らせもあります。それは、対処の仕方があることです。

上記の手順に従うことで、プロジェクトのキックオフを成功させ、プロジェクトの開始時点からチームを成功に導くことができます。

わかってはいても、グループプロジェクトは相変わらず予定より早く完了しないかもしれませんが、少なくとも期限に終わる可能性は高くなります。それはそれで進歩と言えますよね。


Originally published by Fast Company [原文

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