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印南敦史の「毎日書評」

スタートアップ経営の達人が説く。価値あるビジネスを生むCEO実践ガイド

author 印南敦史
スタートアップ経営の達人が説く。価値あるビジネスを生むCEO実践ガイド
Photo: 印南敦史

スタートアップ・マネジメント 破壊的成長を生み出すための「実践ガイドブック」』(マット・ブランバーグ 著、杉江 陸 訳、ダイヤモンド社)は、日本を代表するユニコーン企業である「Paidy(ペイディ)」CEOの杉江陸氏が、座右の書として認める『Startup CEO』を自ら翻訳したもの。

Paidy創業者であるラッセル・カマー氏と杉江氏にとって、本書は「ハドルを組み、仲よく喧嘩しながら納得感のある経営をするうえで、とくに『いま私たちはなにを解決したいのか』をすり合わせ、解決方法の第一仮説を得るためのバイブルであり続けているのだそうです。

当然ながらスタートアップにとっても、伝統的な大企業にとっても、「こうすれば必ずうまくいく」というマニュアルなどあるはずがありません。

しかし、「もっとうまくあり続けよう」という意思を持つ人にとって、具体的な“型”を示し、訓練の機会を与える本書は革新的な存在だというのです。

本書は、起業家もしくは起業を志す者、スタートアップ界隈のVC・CVC関係者は勿論のことだが、大企業の第一線で今置かれた状況を変えて見せようともがくプロフェッショナルにもぜひ読んでいただきたい。(「訳者まえがき」より)

ちなみに杉江氏によれば、著者のマット・ブランバーグ氏は“スタートアップ経営の達人”。

VC(ベンチャーキャピタル)での投資、経営コンサルティング会社での助言、事業会社でのデジタル・マーケティング責任者としての活動などを経て、1999年に「Return Path(リターン・パス)」を立ち上げて成功させた人物です。

つまり本書では、そうした実績によって培われた“真に価値あるビジネスを築くためのマネジメント手法”が緻密に解説されているわけです。

本編前の「導入」部分から、基本的な考え方を確認してみましょう。

経営のなかでもっとも困難な仕事とは?

著者は約14年前、リターン・パスCEOとして初めて仕事に臨む日に、「誰かからプレゼントされたらどんなによかっただろう」と思えるような本が書きたいと、本書執筆開始時に考えていたのだそうです。

なぜ、そう感じたのか。重要なポイントは、「CEOであるためのマニュアルやフィールドガイドは存在しない」という事実。

大手企業のCEOになるのであれば、何十年もの時間をかけてそのための訓練を受けることになるのでしょう。

ところが自分で初めて会社を立ち上げるのであれば、そんな贅沢な状況などありえないわけです。事実、著者も最初の段階で壁にぶつかったようです。

私が29歳でReturn Pathを立ち上げた時、私はそれなりに経験を積んできたと思っていた。 経営コンサルティング。 VC。大企業CEO傘下の直轄インターネットスタートアップのゼネラルマネージャー。

しかしCEOとして実際に職務に就いてみると、自分が何をしているのかまったくわかっていないことに気付いた。(15ページより)

そうした苦い経験があるからこそ、著者は「経営のなかでもっとも困難な仕事は『初めてCEO』となることだ」と断言しているのです。

初めてCEOの職に就く者の、少なくとも75%がなんらかのレベルで失敗するのではないかとも。(15ページより)

失敗は必ずしも致命的なことではない

その結果、クビになる人、沈みゆく船とともに沈んでいく人、自ら辞めていく人も少なくないでしょう。あるいは、正しいやり方を知り、事業の可能性を発揮し切る前に事業売却を余儀なくされる人もいるかもしれません。

しかしそれでも、最も純粋な資本主義の形であるベンチャーキャピタリズムにおいては、失敗がすべて悪いとは限らないと著者はいいます。

なぜなら優秀なビジネスパーソンであれば、多くの場合には最速で学習を重ねるものだから。

同じ失敗を繰り返さないし、誰よりも早く構想し、よく人の話を聞く。

そして支出を減らし、よりよい人材を採用する。

このような学びのリストを並べればキリがない。(16ページより)

それは、ベンチャーキャピタリストにとってはなにを意味するのでしょうか?

この問いに対して著者は、(未経験のものではなく)すでに経験のある起業家たちを支援するべきということだと主張しています。それが不可能で、初めてのCEOを支援するのであれば、大切なのはそのリスクを認識し、メンターやコーチとして動き、最新の注意を払うこと。

では、起業家や経営者にとって意味するものは?

初めて事業を立ち上げる際は、自分が直面している問題の存在を受け入れるべきだ。

エゴを捨て、取締役会で助けを求め、コーチングやメンタリングを受ける。

失敗の可能性を理解し、失敗に対する恐怖心を乗り越える必要がある。

失敗は必ずしも致命的なことではなく、ただ単に誰もが通る通過点なのかもしれない。(16ページより)

重要なポイントは、ここではないでしょうか?

事実、著者もCEOとして、本書に記されたすべての間違いを少なくとも一度は犯していると自己分析しています(それどころか、二度やらかしてしまった間違いもいくつか)。

そんな過去があるからこそ、本書において「初めてのCEOとして、14年間の経験から得た教訓を、他の起業家や、将来的に起業を目指している人に伝えたい」という思いがあるようです。

そんな本書は、著者と、著者がよく知る数人のCEOの経験に基づくものだそう。

したがってCEOの仕事に関するすべての質問や難題に即答できるようなものではなく、著者自身も「すべての答えを持ち合わせてはいないし、なにもかもがわかっているわけではない」と認めています。

しかし、だからこそ、いいかえれば、絶対的な経験値が基盤になっているからこそ、本書からは強い説得力を感じることができるのです。

こうした考え方を軸として、以後の章では「ストーリー」についてのコンセプト、人的資本の構築方法、他者の管理のための自己管理、そして会社の売却など、さまざまな角度から実践的なメソッドが紹介されています。

そのアプローチは決して華やかなものではないかもしれませんが、別な表現を用いるなら「地に足がついた」ものでもあるといえます。それぞれの角度から起業と向き合うビジネスパーソンは、将来のためにぜひとも熟読しておきたいところです。

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Source: ダイヤモンド社

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