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グッドカンパニー研究 Vol.1|なぜか「本屋」のあるオフィス『メディアジーン』

author 聞き手: 横石崇 文: 田邉愛理 撮影: 千葉顕弥
グッドカンパニー研究 Vol.1|なぜか「本屋」のあるオフィス『メディアジーン』

人が集まれない? コロナ時代のオフィスのありかたとは?

当シリーズでは、多様な働き方を考えるカンファレンス 「Tokyo Work Design Week」 を主催し、現代におけるさまざまな「働き方」を探求、「ヒューマンファースト研究所(※)」の外部アドバイザーでもある横石崇さんが、時代をリードする企業のオフィスを訪問取材。

オフィスのありかたから垣間見える企業の理念やコミュニケーションに関する考え方、その企業らしい新しい働き方を探究し、「グッドカンパニーとは何か」を探ります。

いま世界中でオフィスのありかたが見直されています。次の一手のために必要なことは何なのか? 企業にとってのGOODを追求することでそのヒントが見えてきます。(横石崇)

連載第1回は、ライフハッカー[日本版] (今読んでいただいているこのメディアです!) 、GIZMODO JAPANBusiness Insider Japanなどのメディアブランドや、インクルーシブな社会づくりを考えるプロジェクト「MASHING UP」を運営するオンラインパブリッシャー、株式会社メディアジーンへ。

今回話を聞いたメディアジーンは、メディアそれぞれのテーマに興味・関心を持つターゲットに最先端の情報を届けることを同社のミッションとしています。

グッドカンパニー研究Vol.1

【調査するオフィス】

株式会社メディアジーン(インフォバーングループ)/渋谷区

【話を聞いた人】

株式会社メディアジーン 代表取締役CEO 最高経営責任者 今田素子

株式会社インフォバーングループ本社 経営戦略室 室長 大川省太

オフィスのワンフロアが「本屋」の謎

横石崇さん

──(横石)今のオフィスはどんなコンセプトから生まれたのですか?

今田:この1年、コロナ禍もあり「Work From Anywhere」というコンセプトで、柔軟な働き方に合った環境づくりを進めてきました。実は、それ以前からライフステージや働き方など、一人ひとりの状況の変化に応じて働けるような環境をつくっていこうと動いてはいたんです。

大川:そうした動きの一因が、社員が増え、事業も多様になってきたことです。もともと固定席だったのですがコミュニケーションが硬直化してきて、常に同じ人しか近くにいない状況で働くことになる。オフィスで歩き回る人って限られるじゃないですか(笑)。

──(横石)そもそもオフィスって歩き回るための仕様になっていないですからね(笑)。

大川:もっと社員一人ひとりがコミュニケーションを取りながらも、自律的に働けるように、オフィスを改装してフリーアドレスにしたのが2017年。ところがコロナ禍でリモートワークになったら、また特定の人としか接点がなくなってしまった…。

今後、この状況が終わったとしても、「出社が当たり前」だった時代にはもう戻れないと思うんです。だから、この先、会社は「出社」という行為に意味を持たせなければいけない。

そのためにはオフィスで偶然が起きる、刺激が生まれるような環境作りが必要だ──そう考えたときに、書籍というのはひとつの媒介として有効だなと。その役割を担っているのがこの空間「BOOK LAB TOKYO」(ブックラボトーキョー)です。

──(横石)オフィス内に本屋さんがあるのはなぜだろうと、不思議に思っていました。ちゃんと本を選んだり売ったりする書店員さんもいて。

大川:そうなんです。以前は渋谷の道玄坂にあった「BOOK LAB TOKYO」を昨年オフィス内に移転しました。

今田:ここは書店ですが、もの作りの場でもあります。日常的な社員同士のブレインストーミングやディスカッションのほか、いろんなメディアが記事制作のために撮影を行ったり、セミナーをしたり。ガジェットを中心に扱うメディア「GIZMODO JAPAN」では、YouTubeチャンネル用の動画の撮影もしています。

ライフハッカー[日本版]は、この書店とコラボレーションをして本の著者を招いた読者向けイベント「BOOK LAB TALK」を定期的に開催もしていますね。

また書店を通じて社員同士がコミュニケーションを広げたり、社内Slack上にチャンネルを作って、公開注文したり、お互いの読書傾向を伝えることができたり。じゃあ私も読んでみようとかコミュニケーションが広がっています。

インプットとアウトプットが同時にできる場所、情報発信書店のような感じですね。

▶︎メディアジーン内 書店「BOOK LAB TOKYO」

メディアジーン BOOKLABO TOKYO

メディアジーン BOOK LAB TOKYO

メディアジーン

メディアジーン

「無駄」から生まれるクリエイティビティ

──(横石)これだけの一等地でオフィスの一角を本屋にするというと、「無駄じゃない?」って考える人もいるはず。そこは経営者としてどう捉えているのでしょうか?

今田:確かに無駄かもしれないけれど、無駄から生まれるクリエイティビティってあるんですよね。

コロナでリモートワークが始まったとき、最初は「仕事がはかどるな!」と思いました。でもしばらくしたら、人に直接会わないことのデメリットがすごく出てきた。これまでいかに無駄話やノンバーバルのコミュニケーションから情報を得ていたかを知りました。リモートワークだと本当に必要なことしか話さなくなってしまうから。

──(横石)雑談しづらくなりますよね。

今田:今まではユルい会話の中で「それ面白そう!」っていう企画が生まれることがいっぱいあったんですよ。

──(横石)それこそが企画する仕事の醍醐味ですよね!

今田:作業をするときには一人の空間がいいけれど、やはりクリエイティブな仕事にとっては、直接人と会ったり、同じ空間を共有したりといった質のいいコミュニケーションがすごく大切。

リモートワークになって、深いコミュニケーションが欠如してしまったことは、クリエイティブワークに大きな影響を与えたんじゃないか、と感じています。だからこそ、次のコミュニケーションについて考える必要があったし、「場づくり」を考える必要があった。

──(横石)今日、オフィスを拝見して驚いたんですが、意外と人がいて活気がありますよね(7月上旬取材)。それがすごくいいなと思って。

今田:特に出社すべき日を決めているわけではなく、チームごと、プロジェクトごとの都合で「出社は週2回を目安」というルールにしています。今日は割と人が多いですね。

──(横石)今は出社することに意味があると思わなければ、オフィスに来ないじゃないですか。メディアジーンの人は「会うこと」を信じている。きっと今田さんと同じ感覚を、現場のみんなも少なからず持っているんじゃないかと思いました。

「聞くこと」から始まるダイバーシティ

グッドカンパニー研究×メディアジーン

──(横石)メディアジーンはインターネット上で複数のメディアを運営していますが、オフィスでも「インターネット的な場の作り方」を意識されているんでしょうか?

今田:それはあるかもしれない。関係性がフラットでないと嫌なんです。

インフォバーン (メディアジーンの兄弟会社。オフィスは同一) は、今年で創業23年になりますが、ちょうど新卒で採用する人も23歳前後なんですよね。でも経験のある人が偉いのかというと、今はそうじゃない。

インターネットの世界はスピードがはやくて1年で状況ががらりと変わることも。デジタルネイティブ世代の彼らから学ぶことはすごく多いんです。むしろ学ばなくては企業が変わっていけないと思っています。

──(横石)企業文化としてヒエラルキーを作らないことを意識している?

今田:そうですね。社長室もないし、役職がある人だからといって決まった机もない。いつでもみんながアクセス可能な方がいい

でも、向こうからアクセスされるというよりは、自分が聞きにいけるというイメージです。「仕事の邪魔しないでください」って思われているかもしれないけど(笑)。

──(横石)自分が聞きにいける、というのはユニークなポイントですね。どうして「聞く」ことが大事だと思うんですか?

今田:それは…聞くことがダイバーシティの基本だと思っているから。

人の意見を聞くこと、考えが多様にあるということを理解したうえで、それを自分のなかにインプットする。そこから自分の答えを作っていきたいんです。

「聞かない」でいると情報が少ない人になってしまう。やはり仕事をしていくうえで、どれだけ情報を持っているかは重要だと思います。

──(横石)今田さんはオフィスで話すのではなくて、聞いている。それは組織のリーダーとして重要な要素ですよね。リーダーというのは「話さなきゃいけない」と思っているから、つい「聞く」のを忘れてしまいがちです。

▶オフィス内でのミーティング風景

メディアジーン

メディアジーン

メディアジーン

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会社は「箱」。その多様性のために「聞く」

メディアジーン

──(横石)お2人にとっての「グッドカンパニー」──いい会社とはどういう会社なのかを教えてください。

大川:今田さんの話ともつながってきますが、僕にとっては「自分の話を聞いてくれる人がいる会社」です。

私は当グループに6年在籍していますが、いつも誰かしら自分の話を聞いてくれる人がいる。やっぱり自分の話を聞いてもらうのって結構難しいんですよね。

──(横石)話を聞いてもらえるって、とても尊い行為なのかもしれないですね。

大川:そのためには上司との関係も、部下との関係も大事。自分もそう思ってもらいたいので、みんなが僕に聞きに来やすいように、じつはフリーアドレスなのに大体同じ場所にいます(笑)。

──(横石)オフィスにはそういうハブになるような存在が必要ですよね。今田さんはグッドカンパニーの定義ってどう考えていますか?

今田:いい会社でありたい、いい会社とは何だろうって、いつも考えているんですけど…。今は、会社は箱であり、会社を作っているのは中にいる人たちなんだと思っています。

だから、その人たちが働きやすい環境を作ることが大事。多様性を受け入れられるルールがあり、いろいろな立場の人が安心して働けるのが「いい会社」なんだと思います。

──(横石)会社は公器であり、箱であり、そのダイバーシティを担保するために「聞く」という行為が今田さんの中にあるんですね。なるほどなぁ。だからこそ情報を生み出しコミュニケーションを広げる場としてオフィスに本屋があるんですね。これぞグッドカンパニーですねぇ。

<グッドカンパニーとは|取材を終えて>

日本で最も勢いのあるデジタルメディアカンパニーを取材してわかったこと。それは意外にも「発信」ではなく、「受信」を大切にしていたことだ。

聞くことを重要視するからこそ、「Work From Anywhere」というコンセプトであり、フリーアドレス制度や書店導入がうまく機能する。

話をするためには聞くことの価値を理解する必要があるということを、今回オフィスを通じて知ることができた。みなさんのオフィスは「聞く」ことに対してどれくらい意識しているだろうか。グッドカンパニーとは聞くことが上手な会社なのかもしれない。(横石崇)

※ ヒューマンファースト研究所(HUMAN FIRST LAB):野村不動産株式会社が2020年6月に設立。企業や有識者とのパートナーシップのもと、人が本来保有する普遍的な能力の研究を通じて、これからの働く場に必要な視点や新しいオフィスのありかたを発見、それらを実装していくことで、価値創造社会の実現に貢献する活動を行なっている。

制作協力:ヒューマンファースト研究所(野村不動産)

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