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印南敦史の「毎日書評」

コーチングのスゴ技で、困った部下の「やる気スイッチ」入れるコツ

author 印南敦史
コーチングのスゴ技で、困った部下の「やる気スイッチ」入れるコツ
Photo: 印南敦史

上司として、「困った部下」にどう対応すべきか?

このような問題について悩んでいる上司の方は、決して少なくないことでしょう。そこで今回は、『できる上司は会話が9割:「困った部下」が戦力に変わる、コーチングのスゴ技』(林 健太郎 著、三笠書房)をご紹介したいと思います。

部下との「会話」の仕方について多角的に考察し、現場ですぐに使える方法が明かされた書籍。著者によれば、「困った部下」に関する悩みを解決するのに絶大な効果を発揮するそうです。

上司として働くあなたには、2つの任務が与えられています。

ひとつは、チーム全体に課せられた目標を、一定の期間内に達成するという実務的なものです。

もうひとつは、チーム全体としての能力を向上させていく、いわゆる「育成」にあたるものです。

こちらは中長期的で、しかも数値で管理しにくい面があります。 本書では、この「育成」任務により焦点を絞って、上司が部下に対してどんな関わり方をすれば、部下をうまく育てることができるのかについてお伝えしていきます。(「はじめに」より)

著者は「リーダー育成家」。聞き慣れない職種ですが、これからリーダーを任される方、任され手間もない方、任されたものの問題に直面している方などに、個別の成長支援や情報・スキルの伝授をしているのだといいます。

また、日本で数少ない「エグゼクティブ・コーチ」でもあり、経営者や上級管理職の方々に向け、個別の「会話」による成長支援を専門分野としているそう。

そんな立場や経験に基づく本書の第2章「『部下に伝わらない……』に効く!――部下の仕事力を上げる会話」のなかから、きょうは「部下に同じことを何回も説明するのだが覚えない。仕事への真剣さが足りないのでは?」という悩みに対する答えに焦点を当ててみたいと思います。

部下のスイッチを入れるのは上司の仕事

「部下が仕事を覚えない」と悩んでいるのであれば、現実的に対処していく必要があると著者は主張しています。

現実問題として、たいていの人間は一度では覚えられないものです。しかしその一方、「何回か教えれば覚える」のも事実。つまり「何度、説明しても覚えない」というのは、裏を返せばその部下の「やる気スイッチ」が入っていないからだとも解釈できるわけです。

ここで注目すべきは、「部下のスイッチを入れるのは上司の仕事」だという著者の考え方。

もちろん、「俺は、自分のやる気スイッチは自分で入れてきた」と自負している方もいらっしゃるでしょう。しかしその一方、世の中の少なからずの人が直面しているのは、自分ではなかなか自分のスイッチを入れられないという現実。

誰かの力を必要としている人は、間違いなく存在するということ。しかも、そんな人に対して力を発揮できるのは職場であれば上司だというのです。

もちろんそれは、昔から変わらないことなのかもしれません。しかし、「出世」や「昇級」という経済的豊かさの指標にリンクさせれば部下のスイッチを入れることができたのは、あくまでも昔の話。

価値観が多様化する現在は、そういった「鼻先のニンジン」が「ご褒美」としての機能を果たさなくなっているわけです。(72ページより)

ていねいに関わることで「信頼」が生まれる

だとすれば、上司はどうやって部下のやる気スイッチを入れていけばいいのでしょうか?

この問いに対して著者は、「部下一人ひとりにとってなにが『鼻先のニンジン』になっているのかを探っていくこと」が大切だと答えています。

そこで欠かせないのが、普段からの部下との対話であり、著者が重要性を強調しているのが「ダークな好奇心」。全面的な興味・関心を相手に向けなくても、批判を疑問文に変える力さえあれば、相手に必要最低限の好奇心を持てるというのです。

たとえば、部下の発言に対して「また同じ話か! 何回説明したら理解するんだ」と心のなかで思ったとしても、それを口にしたのでは単なる批判になってしまうだけ。そこで、その批判的なことばを疑問文に変換してみるべきだという発想。

例えば、頭の中で「なぜこの部下は、同じ話を今日もしてくるのだろうか?」という問いかけの形に変換します。

心の中の断定的な批判を疑問文に交換することで、部下の発言に対して「もしかしたら、今日は何か別に言いたいことがあるのではないか」という可能性に気づくことができます。これが、ひとかけらの好奇心が相手にわいた、という証拠です。(39ページより)

大切なのは、「どう思う?」「どうしたい?」など、できるだけ相手の感情や心情を理解しようと努めること。そして、価値観が多様化するなかで相手がどの価値を重視しているのかについて理解を深めていくこと。

そうやって部下にとって意味のある「ニンジン」を見つけ出して共有することが、部下のやる気スイッチを入れることにつながるということです。

一方、上司が自分の教え方を見なおす必要がある場合も。つまり、自分の説明の仕方に問題があり、そのため部下が仕事を覚えられないという可能性も否定できないわけです。

事実、上司のなかには、部下に教えることやていねいに説明することが下手な人が多いそう。著者もコーチングの現場で、「そんな面倒な説明をするくらいなら、自分でやったほうが早いです」と発言する人に多く出会ってきたといいます。

「できる」上司ほど、説明する時間があるなら自分で動くという傾向が強いのだとか。

しかし、上司に求められるのは一個人として仕事を推進する能力だけでなく、組織としての成果を上げるために、部下が動きやすい仕組みをつくることです。(75ページより)

そして、その仕組みづくりに欠かせないのが部下との信頼関係。

わかりやすい「鼻先のニンジン」が不在の時代において、部下の行動を促す原動力となりうるのが「信頼」。

だからこそ重要なのは、手間はかかっても部下との信頼関係をつくり、「やる気スイッチ」を探り当てていくこと。そうした地道な積み重ねが、なにより大切だということです。(74ページより)

本書は、必ずしも最初から順番に読む必要はないそう。すぐに解決策を見出したいのであれば、目次のなかから自身の悩みに近いものを選んで読めばいいわけです。

「困った部下」を「自分で考えて動く部下」に変え、チーム全体の成果を上げるため、活用してみてはいかがでしょうか?

Source: 三笠書房

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