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部下のやる気を引き出す「自己決定理論」とは?

author Sam Blum - Lifehacker US[原文](訳:ガリレオ)
部下のやる気を引き出す「自己決定理論」とは?
Image: Delpixel (Shutterstock)

「ひどい上司を持つ」ことについては、きっとみなさんにも経験があるでしょう。「ひどい上司である」のがどのようなことか、理解している人もいるかもしれません。

職場で(そしてプライベートでも)、細かいことにまでいちいち口出しする「マイクロマネージャー」は好かれません

それはたしかにそうなのですが、先頭に立ってチームを力強くリードしたり、部下とこまめにコミュニケーションを取ったりするのを面倒くさがる上司がいるとすれば、それも同じくくらい問題です。

管理職に就いている人であれ、単に人間関係を円滑にしようと努めている人であれ、これら2つの罠のどちらかに陥らないようにすることが大切です。

そこで参考になるのが、心理学の分野です。「自己決定理論(SDT)」の力を少し借りれば、あなたにアドバイスやサポートを求めてくる部下が、おおいに力を発揮できる環境を作り出せます

「自己決定理論」とは?

自己決定理論は、1970年代から80年代にかけて、モチベーション科学の研究に取り組んだ心理学者、Edward L. Deci氏とRichard M. Ryan氏によって提唱され、広く知られるようになった理論です。

両氏はその研究から、人間には生まれつき、個人の成長(目標の達成や賞の獲得、スキルの習得など)に引き寄せられる傾向があることを突き止めました。

そして、励まし、行動を促し、刺激を与えて、人を成長へと導いてくれる、3つのモチベーション原理があることを明らかにしました。

人材スカウト企業のGQRも述べているように、自己決定理論には次のような3つの柱があります。

有能感:自分の能力が効果的に発揮されていることを実感したいという欲求(いい仕事ができていると感じたい)。

自律性: 自分の行動は自発的で、「……自ら考え、承認を与えたもの」だと実感したいという欲求(自分の意志に基づいて行動していると感じたい)。

関係性:「他者と交流し、結びつき、他者を気遣いたい」という欲求(ほかの人々と有意義な人間関係を持ち、交流したい)。

別の言い方をすれば、自己決定理論が示唆しているのは、”私たち人間には成長願望が備わっているが、その願望は、外的要因によって駆り立てられ得る”ということです。

アメリカ心理学会は、このプロセスを次のように説明しています。

自己決定理論によれば、内発的な動機付け(心からおもしろい、楽しいという理由で行動すること)、ひいては学習の質の向上は、有能感と自律性、関係性に対する人間の欲求が満たされた状況で実を結ぶというわけです。

教育や労働の現場で、有能感、自律性、関係性を強化すると、プラスの効果が得られることが、多くの研究で証明されています。

一定の理解と努力は必要ですが、こうした理論をうまく活用すれば、上司は部下の力を最大限に引き出せるようになります。

あるいは、誰であっても友人や家族、同僚が力を発揮できるよう助けてあげられるのです。

自己決定理論を活用して部下をサポートする方法

自己決定理論を支える柱を「道しるべ」のようなものと考えてみましょう。誰もが、時間と経験を経るうちに、まわりの人に対処したり動機付けたりする独自のスタイルを確立していきます。

ですが、自己決定理論を活用すれば、相手に手を差し伸べるというよりも、相手を育てるようなかたちの関係を構築できます

経営コンサルタント企業Growth Partners Consultingの代表を務めるAmy Drader氏は、リーダーが自己決定理論をうまく活用する方法を次のように説明しています。

正当な評価を与える

たとえば、ある部下がいい仕事をしているとしましょう。

そのとき、それに見合った高い評価を与えれば、「これからもこの調子でがんばろう」と思えるインセンティブを部下に与えることができます。

目標を設定することも、モチベーションを高めるのに役立ちます。部下が目的を達成したあとに褒めたたえれば、いっそう効果的です。

もちろん、目標の達成にこだわりすぎると、モチベーションが低下し、クリエイティブなアイデアがひらめかなくなることもあります。

ですが、達成可能な目標を設定し、目に見えるかたちで努力を労ってあげれば、部下のモチベーションをさらに高めることができます

距離を縮める

正式な立場であるか否かを問わず、リーダーの立場にある人にとって大切なのは、「親近感」を育むことです。

Drader氏によれば、そのひとつの方法は、部下がいつでも愚痴をこぼせる場をつくることです。

もちろん、自己憐憫を助長してはいけませんが、「ガス抜き」は精神の浄化に効果的であることを認識しましょう。

愚痴をこぼす時間をつくってあげましょう。ただし、ほどほどを心がけてください。少しの愚痴なら、ガス抜きに効果的です

とDrader氏は言っています。

たとえば、ハッピーアワーなどを設けて、お酒を飲みながら職場の問題あれこれに共感を示してもいいでしょう。

あるいは、たまに世間話をしたり、冗談を言ったりするだけでも好印象が生まれ、親近感が増します。

ほかにも、自律性を高める方法がいくつかあります。そのひとつは、部下の話に耳を傾けたうえで、問題を自力で解決するチャンスを与えてあげることです。

Deci氏とRyan氏は1987年に発表した論文で、次のように述べています。

自律性の中心にあるのは、自らの意志で率先して行動を起こしたいという欲求です。ほかの誰かに管理や指示をされたくはないのです

誰かのモチベーションを高めたいときは、その人に対して信頼感を示すと、そうした強い欲求をさらにかき立てることができます

積極的に任せてみる

職場の場合なら、部下が「自分にはまだ無理かも」と思っている規模のプロジェクトをあえて任せ、チャンスを与えてみましょう。

そして、無事に完了できたら、2人きりのときも、人前でも、その成果をほめたたえてください。

家庭の場合は、子どもに何か家事を任せてみるというのもひとつの方法です。

子どもがそれに取り組んでいるときには、アドバイスやサポートを与え、完了したら、工夫を凝らしたやり方でごほうびをあげましょう。たとえ完璧でなくてもかまいません。

信頼感、仲間意識、そして相手を尊重する感覚。それらを育むことができる、秘密の方程式は存在しません。結局のところ、職場であれそれ以外の場所であれ、大事なのは「人間性」なのです

Source: GQR, AMERICAN PSYCHOLOGICAL ASSOCIATION, Taylor&Francis Online, Growth Partners Consulting, emerald insight

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