連載
特集
カテゴリー
タグ
メディア

伊庭正康の「最高効率ワークハック術」

働き方のカギを握る「コネクティング・リーダー」の役割とは

author 伊庭正康
働き方のカギを握る「コネクティング・リーダー」の役割とは
Image: Getty Images

今回は、今注目を集める新しい中間管理職のあり方「コネクティング・リーダー」を紹介します。

私が管理職研修でも紹介する「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」の両方を発揮できる人材、それがコネクティング・リーダーです。

では、なぜ今コネクティング・リーダーが注目されているのでしょう?

理由の1つには、リモートワークや時差出勤が一般化してきた昨今、コミュニケーション不足による弊害が顕著になってきたことが挙げられます。

たとえば、パーソル総合研究所の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」でも、その変化を確認することができます。

テレワーク実施前後の変化

  • 対上司とのコミュニケーションが減った …45.2%
  • 対同僚とのコミュニケーションが減った …50.0%
  • 組織の一体感が減った         …36.4%

(パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より)

テレワーク実施前後の変化
パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より
『テレワーク実施前後の変化』
Image: パーソル総合研究所

この状況を解消するKSF(Key Success Factor:重要成功要因)は、中間管理職が「コネクティング・リーダー」としての役割を遂行することに他なりません。

では実際に、どのようなことを実践すべきなのでしょうか?

今回はコネクティング・リーダーの概念から、求められる役割までを解説します。

存在感が高まる「コネクティング・リーダー」とは?

点と線で作られた円
Image: Getty Images

コネクティング・リーダーが注目されたきっかけは、サセックス大学ビジネススクールのZahira Jaser助教授が『The Connecting Leader: Serving Concurrently As a Leader and a Follower』で紹介したことに始まります。

コネクティング・リーダーとは、組織の「結節点」として、組織を良い方向に導くために働きかけるリーダーのこと。

ある時は部下の意見を上司に進言する役となり、ある時は対立するセクションとの調整役となり、またある時は部下の感情に耳を傾ける緩和剤を務めます。

コネクティング・リーダー「4つの役割」

円球とはしご
Image: Getty Images

Zahira Jaser助教授によれば、コネクティング・リーダーには次の4つの役割があり、そしてこれらすべてを実行することが求められると言います。

【コネクティング・リーダー「4つの役割」】

1. Janus(ヤヌス):上司・部下に共感する役割

2. Broker(ブローカー):関係者の対立を翻訳しながら調整する役割

3. Conduit(コンデュイット):部下が抱える問題を上司に伝える役割

4. Tightrope Walker(タイトロープウォーカー):一致しない利害の合意点をつくる役割

では、それぞれについて詳しく解説しましょう。

1. Janus(ヤヌス)

これは、コミュニケーションが希薄になっているからこそ注目される役割。

たとえば、リモートワークのために相談できる相手もおらず、1人で悩みを抱える人もいることでしょう。相手の様子が見えづらいために、気軽に仕事を依頼することも難しい状況も生まれています。加えて、会社の方針がひとりひとりに伝わりにくくなってきているといったケースも。

やるべきことは1つ。上司・部下との会話量を増やすことを意識するのです。

会話の中で、上司・部下が抱える「不安・不満・不便」に耳を傾けましょう。解決できることであれば解決を図り、問題によっては傾聴してあげるだけでも、役割として十分。それがこの役割です。

2. Broker(ブローカー)

この役割は対立する人々の間の調整を図ります

たとえば、新型コロナのワクチン接種が職場で行なわれるニュースが報じられた際、経営陣が全員の接種を求める方針を打ち出す一方で、従業員の中には慎重な姿勢を示す人もいました。

仮に中間管理職が「会社の方針は全員の接種だけど、基本的には自己責任で判断してね」と伝えるだけでは、部下は会社に不信感を抱くことになるでしょう。ましてや、経営陣も「背景と根拠をきちんと説明してほしい」と不満を感じるはず。

このように、お互いの意見が異なる際に対立構造を深めないためにも、話し合いの場をつくる、または双方の言い分を翻訳しながら伝えるのがコネクティング・リーダーなのです。

3. Conduit(コンデュイット)

いわゆるフォロワーシップを指します。

フォロワーシップとは上司が気づけていない問題があれば進言し、自らが問題解決の主体者となって働きかけることを言います。私の研修でも提供している、「今こそ不可欠となるビジネススキル」です。

従来の中間管理職は、上司の指示をより確実に履行することが美徳とする傾向もありました。

ところが、今のような不確実な時代においては、上司がすべての事柄を把握できているわけもなく、もはや上司に“仕える”といった発想から、上司を“サポート”する発想が中間管理職に求められるようになったのです。

コネクティング・リーダーにも、このフォロワーシップとしての役割はますます不可欠となっています。

4. Tightrope Walker(タイトロープウォーカー)

会社は「残業をするな」と言い、部下は「残業代が減ると生活できない」と反論する。そんなトレードオフの状況は、各職場にあることでしょう。

この場合、会話を重ねるだけでは本質的な解決には結びつきません。お互いの合意点をつくることが必要です。

ある大手人材会社の中間管理職のケースを紹介しましょう。

会社の「残業禁止」の方針に対し、部下から「生活が立ち行かなくなる」といった声が上がったそう。もちろん給与制度を変更すれば抜本的な解決にはなりますが、人件費が高騰してしまいます。

そこで、この中間管理職が見出した合意点は、「勤務時間が短い人のインセンティブ率(歩合率)を高める」という対症療法でした。

営業組織ゆえにできたことではありましたが、このように「合意点」を見出しながら、双方の利害を一致させる役割も不可欠となります。

***

今回は、今ますます求められつつある「コネクティング・リーダー」の役割を紹介しました。中間管理職の立場が重視される今こそ、ぜひ覚えておきたい考え方ではないでしょうか?

今回の内容が、皆さまの成功の一助になれば幸いです。

伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

伊庭正康さん

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、オンラインを活用した研修も好評。近著に12万部を超える『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ(PHP研究所)』『できる営業は、「これ」しかやらない(PHP研究所)』のほか、新刊の『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる(アスコム)』をはじめ、他多数の書籍がある。

無料メーリングニュース(全8回) 

※YouTube「研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル」、音声メディアVoicy「1日5分 スキルアップラジオ」のスタート。

※オンラインで学べるUdemyの講座も好評。

Source: Harvard Business Review, パーソル総合研究所, Amazon.co.jp

swiper-button-prev
swiper-button-next