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1440分の投資戦略

脳の仕組みを生かした「理想的な24時間」組み立て方ガイド

author 取材・文:田邉愛理/図・イラスト:岡山進矢
脳の仕組みを生かした「理想的な24時間」組み立て方ガイド

「時間」――それは人生において最も重要な資産ではないでしょうか。自分が望む働き方や人生を実現するためには、限られた時間(1日24時間=1440分)を何に分配、投資していくのか、戦略的な視点が欠かせません。この「1440分の投資戦略 やめるに勝る時短なし」特集では、単なる時短術にとどまらない「時間投資ストラテジー」を紹介していきます。

第3回は、著書『脳にいい24時間の使い方』でも知られる作業療法士の菅原洋平さんに、“仕事の質とスピードを劇的に変える、脳と体の仕組みを生かした時間術”について、詳しくレクチャーしてもらいました。今回は後編です。

▼前編はこちら

朝一メールチェックはNG! 「時間医学」で考える24時間の最適化

徹底解説! 理想的な24時間の組み立て方

人間の脳と体は、ホルモンの分泌がもたらす“生体リズム”によって1時間単位で発揮される能力が変わります。

そのリズムに作業スケジュールを合わせることで、パフォーマンスを最大化させるのが菅原さんのメソッド。

ここでは1日を

の4つに分けて、それぞれに適した作業・適していない作業を見ていきます。

※起床時間を6時として解説していきます。

1日の理想的なスケジューリング

1. 午前:HIGH

知的・創造的作業に最適。自分にとって一番大事な仕事のために確保する。

OK(生体リズムに適した作業)

  • 起床2時間後…重要な決断、企画
  • 起床3時間後…新しい仕事、研修
  • 起床4時間後…最優先の仕事
  • 起床5時間後…突っ込んだ議論や提案、アポ取り

NG(生体リズムに適していない作業)

  • メールチェック、朝礼、出社直後の上司への提案

**

起床2時間後は男性ホルモンのテストステロンが増えるため、決断力がアップ。企画作成や経営判断など、攻めの姿勢が必要な仕事に適しています。

起床3時間後は記憶力がピークなので、新しい仕事にチャレンジを。吸収率が高いのでインプット・研修にもぴったりです。

起床4時間後は最も“創造的”で“知的”なゴールデンタイム。その日で一番大切な仕事を当てはめましょう。

起床5時間後はメンタルがもっともタフで、断られてもダメージを受けにくい。突っ込んだ議論や提案、チャレンジングな仕事、アポ取りに向いています。(菅原さん、以下同)

菅原さんによると、「仕事ができる人」は朝早く出社して自分だけの時間をつくり、その時間に大事なことを決めていることが多いそう。無意識にテストステロンの分泌を生かしていることがわかります。

一方、脳の無駄使いとなるのが前編でも述べた朝一のメールチェックです。

テストステロンの濃度が高まると、共感能力が低く、批判能力が高くなるため、実は朝礼もミスマッチ。上司への提案もはねつけられる可能性が高いと言います。

2. 午後:LOW

脳が疲れてくる時間帯。手を動かす作業に当てる。

OK

  • 起床6時間後…昼食前に計画仮眠(★)をとる
  • 起床7時間後…書類・資料作成、デスク整理、データ入力、現場チェック
  • 起床8時間後…ルーティン作業
  • 起床9時間後…行動の振り返り、反省会、新人への指導

NG

  • 会議、企画、決断などの重要な仕事

**

起床8時間後(6時に起きた場合は14時頃)に脳の活動は急激に低下します。その前に防止策として、起床6時間後の昼休みあたりのタイミングで“計画仮眠”をとりましょう。

起床7時間後は目と手の協調能力が高まり、手先が器用になるため、書類や資料作成など事務作業に最適。また、午後一はアドレナリンの分泌によりテンションが一時的に高くなるので、「午後も頑張ろう」といった声かけをすると気分よくスタートできます。

そして起床8時間後からは、テンションは急激に下がり、脳の覚醒レベルも低下する時間帯。ルーティンワークやデスク整理に当てましょう。

起床9時間後はセロトニンの分泌が増加し、気分が楽観的になるため失敗を素直に振り返ることができます。人との親和性も高まるため、反省会や教育的指導に適しています。

よくあるミスマッチは14時頃からの会議。脳の働きが最も鈍いこの時間帯に、有意義な話し合いができる可能性は低いと菅原さん。

なるべく頭を使わず、手を動かす作業に集中しましょう。

★計画仮眠

午後の眠気にも生体リズムが関係しており、1日2回眠気を誘発するリズムが人間には備わっています。

うち1回目の眠気(起床8時間後:14時頃に該当)を回避し、午後もしっかりと仕事に集中するために有効なのが「計画仮眠」。

次の4つのルールに従って行ないましょう。

「計画仮眠」4つのルール

  1. 眠くなる前にとる
  2. 30分以内に抑える
  3. 座ったまま、頭部を固定した状態でとる
  4. 起きる時間を3回唱える=終わる時間を設定する

視覚を遮断できれば良いので、座って目を閉じるだけでもOK。

1~5分でもスッキリしますが、10~20分とると脳にたまった睡眠物質(睡眠の誘発や維持に関与)が分解されその後の作業効率がアップすると言われています。

なお、「咀嚼」は脳を覚醒させる行為なので、昼食前に行なうと最も効果を期待できます。

3. 夕方:HIGH

深部体温の上昇により体のパフォーマンスが最高に。記憶力や判断力の上昇を生かして終業に向けてラストスパート。

OK

  • 起床10時間後…「今日やらないこと」を決めて残りの仕事を振り分ける
  • 起床11時間後…やると決めた仕事をサクサクこなし、定時に終業する準備を。運動すると脳のリズムが整う

NG

  • 夕方の時間(起床11時間前後)にウトウトしてしまうこと、仮眠

**

体温が最も高くなる夕方はハイパフォーマンスになる時間帯。

午前との違いは、午前は発想力や創造性が高まるのに対して、夕方はスピードアップできるということ。

高い判断力を「今日やらないこと」を決めることに活用すると、終業までに効率良く仕事を片付けることができるでしょう。

サクサク仕事を片付けると達成感も得られるため、仕事に対する充実感も高まります。また、夕方に運動すると睡眠中の成長ホルモン分泌が高まり、翌朝の目覚めも良くなるのでおすすめだそう。

一方、避けたいのが仮眠です。

人間は生体リズムの波が大きいほど昼間の活力が高まり、夜は深く眠れると菅原さん。体温が最高になるはずの夕方にウトウトすると体温が下がり、リズムの波が平坦になってしまうので、夜の睡眠の質が低下してしまうのでご注意を。

4. 夜:LOW

脳と体が休息に向けてリズムを整えていく時間帯。翌日に備えてエネルギーを貯蓄する。

OK

  • 起床12時間後以降…食事、入浴、睡眠を適切に行なう。就寝前に学習すると定着率がアップ

NG

  • この時間帯まで仕事を持ち込むこと

**

生体リズムで考えると、仕事に適しているのは起床11時間後、大体17~18時まで。以降は知的作業は適していないと言えます。

起床12時間後には味覚の感度が高まるため、夕食は1日の中でも特においしく感じます。ただし脂肪の吸収も高まるので、早めに食べ始めるのがおすすめです。

入浴は、就寝の1時間前にすると体の放熱が促進されて、最初の深い睡眠をつくることができるそう。

入浴から就寝までの1時間は、資格試験、スキルアップなどの「大人の勉強」に充てるのがおすすめ。最初の深い睡眠には記憶を定着させる作用があるので、効率良く学習できるでしょう。

時間は「割り当てる」。“行動の一単位”を把握しよう

作業ブロックを1日に当てはめる様子

人間の生体リズムを理解し、それに合わせた作業を行なえば、ローコスト・ハイパフォーマンスが叶うと菅原さん。

あらゆる作業の効率が上がるため、自ずと時間に余裕が生まれます。

生まれた時間を有効活用するために、ぜひやってほしいのが“自分の行動の一単位を理解する”こと。

何か作業を始める前にスマホのストップウォッチをセットして、どれくらい時間がかかるのかを計測してください。

すると、自分がいつもやっていることが、一単位何分程なのかを把握できます。

多くの場合、人が予測する時間と実行にかかる時間は違います。

すると、15分時間ができても「あの書類を整理するには40分くらいかかるから、今はできない」と先延ばしにしてしまいがち。

自分の行動の一単位を正しく知ることで、そうした隙間時間も5分単位で有効に活用できるようになります。

空いた時間に何を割り当てればいいかが分かってくるので、そもそも割り当てられないことに「“できるかも”幻想」を抱くことがなくなります。

時間はつくるのではなく、「割り当てる」という意識を持つことが重要。

5分、15分という自分の作業時間の単位を把握して、それを思い通りに割り当てていきましょう。

自分が予測した通り──つまり“思い通り”に過ごせた1日は、刺激が少ないように思えるかもしれませんが、セロトニンが分泌され満足感や充実感は高まるとのこと。

自分の行動の一単位を知り、生体リズムに合わせて仕事をすれば、1日の終わりに「こんなはずじゃなかった…」と感じるような生活と決別できるはず。

生まれた時間を自分への投資にまわして、さらなるレベルアップを狙っていきましょう。

▼前編はこちら

朝一メールチェックはNG! 「時間医学」で考える24時間の最適化

菅原洋平(すがわら・ようへい)

菅原洋平さん

作業療法士。ユークロニア株式会社代表。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で睡眠外来を担当する傍ら、企業研修を全国で行なう。

Source: フォレスト出版

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