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「消臭力」の名物宣伝部長・鹿毛康司さんが語る、「心」と「売れる」の相関関係

author 田邉愛理
「消臭力」の名物宣伝部長・鹿毛康司さんが語る、「心」と「売れる」の相関関係
Photo: ライフハッカー編集部

「消臭力」などの大ヒットCMを手がけたエステーの名物宣伝部長であり、実力マーケターにして有名クリエイターでもある鹿毛康司さん

5月26日(日)に行われたトークイベント「BOOK LAB TALK」では、ライフハッカー[日本版]編集長の遠藤祐子が鹿毛さんをお招きし、「心」と「売れる」の関係性を新たな視点から掘り下げました。

マーケティングでは顧客心理の5%しか分からない

著作『「心」が分かるとモノが売れる』(日経BP)のなかで、ビジネスの突破口を開く自らの手法を「自分の心を使う」という言葉で表現している鹿毛さん。

お客様は論理的に行動しているわけではなく、お客様自身さえ気付いていない「心」が行動に影響を与えていると話します。

鹿毛:マーケティングの世界ではこれを「インサイト」と呼びますが、マーケティング調査でインサイトがわかるというのは思い込みです。

今マーケティングで解明できるところというのは、僕が思うに全体の5%くらい

データ分析はさまざまなことができますが、それは過去の延長線上でしかありません

データ分析とマーケティングリサーチには限界がある、それはお客様が「論理」ではなく「心」で動いているからだ。それなのに、人は「人間は論理的に動く」と考えたがる──と鹿毛さん。

鹿毛:特に男性にその傾向が強い気がします。遠藤さんはどうですか?

遠藤:そうですね、私は論理よりも気持ちの方を重視してしまいますね。

鹿毛:今「気持ち」って言ったでしょう。実はその下に「心理」があるんですよ。

気持ちは自分で分かるけれど、自分で分からないのが心理。それを自問自答することで、心理がわかるようになっていくんです。

入塾率を158%にV字回復したメッセージ

このコロナ禍で学習塾「ベスト個別学院」のプロモーションを手がけたときも、マーケティング調査には頼らなかったと鹿毛さん。

鹿毛:調査の結果を生かすなら、「私たちは感染症対策に力を入れています」とか、「こんなプログラムで教えているので、学校の勉強の遅れを取り戻せます」といったアプローチでコピーを考えるでしょう。

でも僕は、高校時代の450人中447番だった僕に会いに行きました

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Screenshot: ライフハッカー編集部 via Zoom

鹿毛さんが行ったのは、当時の自分を思い出し、心のイメージを「色」で捉えること。

成績が良かった中学時代が「赤」だとすれば、高校時代のイメージには色がない。無色のなかに、薄暗い灰色の何かがあるだけでした。

鹿毛:そんなふうにぼんやり思い描いていたら、勉強ができないコンプレックスを隠しながらも、勉強しないことを正当化しようとしているダメな自分が見えてきました。それが反抗心につながって、ますます勉強から遠ざかっていたんだと。

その自分に何を言ってあげたらいいのかと考えたら、最初に浮かんだのは「大丈夫だよ」という言葉。次に、「一緒に勉強をしよう」ではなく「一緒に計画を立てよう」だったら、受け入れられると思ったんです。

鹿毛さんのメッセージは、学校に行けない焦りを抱える子どもたちに届き、コロナ禍で前年比42%まで下がった入塾率は158%まで急速に回復。その後も伸びが止まらず、200%を超えたのです。

「いちばん謎」なのは自分自身

親を失ったときの心に穴が空いたような哀しみや、“できる同僚”への嫉妬心。こうした気持ちは普遍的なもので、何千年も昔から変わらないと鹿毛さん。

鹿毛:そういう、時代を経ても変わらない“僕らの気持ち”は誰が作ったのか

自分自身が作ったわけではない、もっと普遍的な深層にある心理に、僕らの95%は動かされているわけです。

遠藤:マーケティングの視点から「心」を取り上げるという難しい試みが、この本では見事に言語化されています。だから今私たちも、こうして言葉にして話し合うことができる。これはすごいことですね。

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Screenshot: ライフハッカー編集部 via Zoom

鹿毛:コピーライターの糸井重里さんは、この本を読んで「いちばん謎なのはじぶんである。いちばん親しいのはじぶんである。だったら、じぶんと語りあおう」と、僕が一番言いたかったことをたった3行で表現してくれました。

マーケティングのスキルを学ぶことは誰でもできます。しかし成功するためには、そこに志と勘、アカデミックな知識が必要です。そして「」と言われているものを、僕は「」だと捉えています。…僕、良いこと言いますね(笑)。これはまだ本には書いていませんから。第2弾は「勘は心だ!」になるかもしれません(笑)。

「時代よりも5mm下がる」のがモットー

著書では「心のパンツを脱ぐ」という言葉で、自分の「心」を掘り下げることの大切さを語っている鹿毛さん。

それは人の「心」を考えるときも同じです。皆がアンケート調査に書くような「気持ち」と、実際の行動の間にある食い違いを発見すると、「しめしめ、ここに何かあるぞ」と嬉しくなるのだとか。

遠藤:私たちもメディアの編集会議では、「この記事を読んで読者はどう思うんだろう」「どういう気持ちになってほしいんだろう」ということばかりを議論しがちです。でもそうではなくて、「なぜ自分は、この記事に目が止まったんだろう」とか…。

鹿毛:そうそう。そこには自分でも知らないことがある。僕はテレビ番組も、視聴者分析をやりすぎるとダメになると思っています。

何よりやってはいけないのは、よく広告業界のクリエイターが言う「時代の先端」というやつ。時代の先端というのはアバンギャルドですよね。それは芸術の中でやるべき。

もっとみんなの中にあるもの、誰もが持つ「心」を使ったほうが、効率がいいと思いませんか? だから僕は、「時代よりも5mm下がる」ようにしています。

「時代の先端」と言うと聞こえはいいけれど、みんなが求めているものはそこにはないと鹿毛さん。気負ってはいけない、でも誰もやっていないことをやらなければいけない。そして、見る人の心に届かなくてはいけないと、広告の難しさを考察します。

熱いトークは質疑応答タイムになっても冷めやらず、予定時間を過ぎても参加者からの問いに答え続けてくれた鹿毛さん。ユーモアと愛にあふれる語り口に魅了された1時間半でした。

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Photo: ライフハッカー編集部

次回のBOOK LAB TALKは?

次回のBOOK LAB TALKは、6/18(金)19時より、JINS Think Lab JINS執行役員、株式会社Think Lab 取締役の井上一鷹さんをお招きして、夢中で働く自分を取り戻すには、今「深い集中」が必要な理由について伺います。みなさまのご参加、お待ちしております!

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