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印南敦史の「毎日書評」

中国人夫婦が、日本でコンビニ経営を大成功させた4つの秘訣

author 印南敦史
中国人夫婦が、日本でコンビニ経営を大成功させた4つの秘訣
Photo: 印南敦史

2015年に、『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(趙海成著、小林さゆり訳、CCCメディアハウス)という書籍をご紹介したことがあります。北京出身の著者が、「在日15年以上で日本をよく知る中国人」の本音を引き出したインタビュー集。

在日中国人が語る「それでも日本を好きな理由」

きょうご紹介する『私たちはこうしてゼロから挑戦した―在日中国人14人の成功物語』(趙 海成 著、小林さゆり 訳、アルファベータブックス)は、同じ著者がさらに一歩踏み込んで「日本で成功した実業家」や「第一線で活躍するプロフェッショナル」たちにスポットを当てたもの。

異国である日本でゼロからスタートし、困難を乗り越えながらいかに成功を収めたのか、その秘訣や方法を深く聞き出しているのです。

登場するのは、日本トップレベルの整体療法家から、劇団四季のメインキャストとして活躍するパミール高原出身の人気俳優まで多種多様。

ここでは、セブン-イレブンのオーナーとして店舗を拡大してみせたという、陶山正(タオ・シャンチョン/とうやま・ただし)さんのケースをご紹介したいと思います。

1962年、中国上海市生まれ。1990年に来日して家具製造会社、印刷会社に勤務したのち、「夫婦でできるビジネスを」との思いからセブン-イレブンのオーナー募集に応募。

厳しい面接試験を経て、埼玉県内初の中国人夫婦オーナーとして採用され、2006年に夫婦として最初のセブン-イレブンをオープンしたという人物です。

ゾーンマネジャー面接で合格

当初、陶山さんの面接は順調に進んでいたそう。

にもかかわらず、ひとりのエリアマネジャーから「これまでパートナーがいずれも中国人だという例はなく、慎重に対応すべきだ」と意義を唱えられるなど、合格までの道のりは平坦ではなかったようです。

それでも諦めず説得を続けた陶山さんのことを、面接を担当したゾーンマネジャーは「セブン-イレブンについて、かなり勉強されてきたようですね」と評価します。

そしてそのうえで、「いま、中国と日本の関係はギクシャクしていますが、あなたが中国人だから日本人は来店しないという心配はありませんか?」と言う質問を投げかけます。

印象的なのは、対する陶山さんの返答。

「あなたが言われるギクシャクとは、島[尖閣諸島、中国名・釣魚島]の領有権をめぐる対立のことでしょう。率直に言うと、それは私たち庶民とは関係がありません。

あくまでも国家間のことであり、お互いの日常生活には影響を及ぼしません。

しかも、島をめぐる対立のことを知っている日本人は一部の人だと思います。

日本に住んで十六年[当時]になる私の知る限り、日本人は中国人に対していつもフレンドリーでした。(76〜77ページより)

返答を聞いたゾーンマネジャーは、「第一に、あなたはよく勉強している。第二に、この仕事に対して自信がある。

この2つの点で、あなた方のような中国人に、セブン-イレブンのフランチャイズにぜひ加盟していただきたい」と太鼓判を押します。

陶山さんの熱意は、こうして身を結んだのでした。(75ページより)

好業績に日本人も目を見張る

かくして2006年7月25日に、陶山夫婦の最初のセブン-イレブンが正式にオープン。採用した10人のスタッフはすべて日本人だったそうですが、陶山さんは当時のことをこう振り返っています。

「面接したとき、単刀直入に私は中国人だと言いました。でもオーナーが中国人だからやらない、という人はいなかった。

私たちは本部の業務ガイドにしたがって、第一期のスタッフを厳しく育成しましたが、それは店舗の発展に大きな役割を果たしました。

もともと本部は、寂れたところに設置したこの店に、さほど期待していなかったようです。まあ、やってみなさいと言う感じでした。(78ページより)

店がオープンしてから、陶山夫婦はスタッフに対し、熱心に接客することを求めたといいます。当然ながら、それが周辺住民を引きつける鍵になると考えたからです。

その結果、オープンから半年でめざましく業績が伸び、以後も右肩上がりに成長。

埼玉・大宮エリアのセブン-イレブン中でも上位に入り、5年後にはセブン-イレブン本部から「模範店」として表彰されたのだとか。

さらに2011年8月25日にオープンした2号店も抜きんでた業績を上げることに。短期間で安定した経営を実現したことが本部から評価され、3号店、次いで4号店もオープンさせます。

いずれの店舗も順調に成長し、2020年2月時点で、陶山夫婦による4店舗の年間総売上高は9億円、雇用するスタッフは86人に上っているといいます。(78ページより)

陶山オーナーの人間味あるスタッフ管理術

陶山夫婦はなぜ、店を開けるたびに連戦連勝するのか? 著者は成功の秘訣として4つの要因を挙げています。

第一は、スタッフの就業の安定性を重視すること。

コンビニは仕事が煩雑であるためスタッフがよく入れ替わる店舗も少なくありませんが、それでは店の評判も落ちてしまいます。しかし、見慣れたスタッフがいると利用客も安心できるわけです。

陶山夫婦の一号店はオープンから十年余り。以来継続して勤めているスタッフも数多く、その姿はダイレクトな宣伝となる。

彼ら夫婦の穏やかでつつましい仕事ぶりも、スタッフが安定して働いている大きな理由だ。(81〜82ページより)

第二に、日本人の店長の役割を、フルに発揮させること。

オープンした当初は多くのことを夫婦二人でやっていたが、運営が軌道に乗ると、店長のポストをキッパリと部下に任せた。(82ページより)

スタッフを信頼して任せているわけで、彼らは自己管理をしっかり行い、目標達成にために懸命に努力しているといいます。

第三は、スタッフのシフトをできるだけ合理化すること。

具体的にいえば、スタッフを採用する際、外国人が多すぎるのは避けるべきだと考えているのだそうです。

例えば、中国人スタッフを多く採用して同じシフトにした場合、どうしても中国語を話してしまい、日本人客に不快感を与える可能性がある。

やはり日本で店を開いている限り、言葉も含めて「郷に入っては郷に従え」で、その土地の風俗や習慣に従うべきなのだ。(82〜83ページより)

そこでシフト編成をする際、中国人スタッフが何人かいる場合は中国人と日本人をひとりずつ組み合わせるのだといいます。「店内で聞こえることばを、日本語のみにする」ことがその目的です。

そして第四は、スタッフの生活を気遣い、ともに仲よく働くこと。

陶山は言う。

「スタッフは、私たち[陶山夫婦]が金儲けばかりの商売人ではないと知っています。

(中略)私は雇用主ですが、仕事を除けば私たち働く仲間は友だちのように互いを思いやり、仲良くつきあっているのです」(83ページより)

つまりはこうした人柄が、日本での成功につながったということなのでしょう(81ページより)

日中関係は相変わらず良好とはいえませんが、本当にそのままでいいのか? 初めに「よくない」印象ありきで、中国に対して無関心を決め込んではいないか?

翻訳者は「まえがき」で、そんな問題提起をしています。

たしかにそのとおりで、日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国にとっても日本はアメリカに次ぐ第二の貿易相手国(外務省、2019年)。

コロナ前には中国から日本に年間1選万人近くの訪問客がありましたし、日本と中国の経済関係や人の往来は切っても切れないものになっています。

ならば、まずは中国や中国の人々を知ることから始めてみてはどうか? 本書の根底には、そのような考え方があるわけです。さまざまな考え方が網羅されているだけに、きっとビジネスのヒントにもなるはず。

自信を持ってお勧めできる、とても充実した一冊です。

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Source: アルファベータブックス

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