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印南敦史の「毎日書評」

ビジネスパーソンがいま「哲学」を知っておくべき4つの理由

author 印南敦史
ビジネスパーソンがいま「哲学」を知っておくべき4つの理由
Photo: 印南敦史

結果を出したい人は哲学を学びなさい ビジネスが180°変わる「問題解決」の授業』(小川仁志 著、毎日新聞出版)の著者によると、いま日本のビジネス界では「ビジネス哲学研修」というムーブメントが起こりつつあるそうです。

とはいっても「ビジネスはこうあるべし」というような“哲学”を叩き込むわけではなく、哲学をツールとして使い、それをビジネスに生かしていこうというもの。

欧米では先んじて行われてきたことであり、哲学者が大手企業のコンサルを担当したり、グーグルやアップルのように専属で著名な哲学者をフルタイムで雇うところも出てきているのだとか。

日本で哲学は“難しいもの”と捉えられがちですが、それは思考法であり、ものを考えるためのツールだということ。

哲学で投げかける変な問い、一風変わったものの考え方、深く本質を探る営みは、そのままビジネスに応用できるというのです。

流行りのデザイン思考はユーザー主体でクリエイティブなソリューションを生み出す点が注目されたものです。

そして、それだけでは足りないということで、近年は提案する側を主体としたクリエイティブなクエスチョンを生み出すアート思考が注目されています。

でも、哲学思考は、そのどちらも備えているのです。(「はじめに 哲学で問題解決するとはどういうことか?」より)

著者は、多くの企業で哲学研修を手がける人物。そうした活動のノウハウが生きた本書においては、世界のビジネスエリートが学んでいる「哲学思考」のフレームワークを明かしているのです。

きょうは第1章「問題解決ツールとしての哲学」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみたいと思います。

そもそも哲学とはなにか?

もともと哲学は西洋から入って来たもので、英語でいうとフィロソフィーのことです。それが哲学と訳されているのです。

では、フィロソフィーとは何かというと、これは哲学発祥の地、古代ギリシャの言葉で「知を愛する」という意味になります。

そこから、物事の本質を探究し続けることだというふうに説明されたりするのが一般的です。(18ページより)

しかし、それでは“物事の本質”ということの意味がわかりにくいのではないでしょうか? そのため著者は、「自分なりに行き着くところまで考え抜いて、それをことばで表現すること」だと説明しているそうです。

考え抜き、自分のことばで物事を表現すると、それは世界を新たなことばで捉えなおしたことになるというのです。

それは、世界を意味づけしなおしたということ。

あるいは、自分にとってそれほど意味のなかったことに新たな意味が生じることから、「世界の有意味化」と呼んでもいい。著者はそう記しています。

つまり、哲学とは考えることではあるけれども、普通に考えることとは本質的に違うもの。いわば、既存のフレームを超えることだというわけです。

普通の思考の場合は、考える対象について、自分が持っているフレーム(枠組み)のなかだけで考えようとするはず。自分にとっての常識が基準となるわけです。だとすればそれは、単なる情報の処理にすぎないともいえます。

一方、哲学するとは、考える対象について、自分が持っているフレームを超えて考えること。

具体的には、別の視点で捉えたり、俯瞰したりすることによって、“自分の頭のなかの箱から出る”イメージだといいます。

「これが世界だ」と思っている世界の外へ、ひょっこりと頭を出してみるというような。

既存のフレームを超えるためには、まず意味を疑う必要があります。そのうえで、多様な視点でとらえ直すのです。ここでは想像力がものをいいます。

そうしていろいろな視点でとらえたあと、再構成していきます。ここでは論理力がものをいいます。

その結果創出されるものが新しい意味なのです。(19〜20ページより)

これによって物事のより深い理解が得られ、テーマによっては人生の意味さえ変わる。そして私たちは、より善く生きることができるということ。

著者によれば、これは哲学の父として知られるソクラテスのことばだそう。

物事の本質がわかれば、失敗したり騙されたりすることなく、正しい判断ができるはず。あるいは、得することだってあるでしょう。すなわち、善く生きることができるということです。

なお、注意しなければならないこともあるようです。こうした各々の過程において、人間の場合は「非思考的要素」とでもいうべきものが関わってくるというのです。

「どんな視点で見るか」「どう再構成するか」というときに、本能や直感、身体、感情、経験、意志、欲望などが影響してくることを避けられないということ。

しかもそれらは人によって異なるものですから、哲学した結果として導き出される物事の本質も、人によって変わってくるわけです。(18ページより)

なぜ、いま哲学を知っておくべきなのか?

では、なぜいまそうした思考が求められるのでしょうか? そこには、おもに4つの理由があると著者はいいます。

① グローバル時代

哲学が発展してきた欧米では、エリートはみな哲学を学んでいるもの。そうした人たちと競争していかなければならない以上、日本人も同じ武器を身につけておいた方がいいということです。

② お手本のない時代

日本は長きにわたって行き詰まっており、かつての成功モデルも崩れ、なにが正解なのかわからなくなっている状態にあります。そんな時代においては、ゼロから考える必要があるということ。哲学はゼロから思考する営みなので、ニーズが高まっているわけです。

③ AI時代

AIが急速に発展し、社会に実装されてくると、人間は創造的思考をしない限り生き残れない状況になってしまうはず。だからこそ、創造的な営みである哲学が大きな意味を持つという考え方。

④ パンデミック時代

新型コロナウイルスによるパンデミックによって、私たちは常識の再定義を迫られています。したがって、物事を新たな視点でとらえなおす営みである哲学が役に立つというのです。(22ページより)

著者は本書について、ビジネスエリートを目指す人はもちろん、「なぜ、がんばっているのにイマイチなのだろう」と悩んでいるすべての方に読んでほしいと記しています。

なぜなら、結果を出せる人になるためには哲学が有効だから。自分の考え方を見なおす意味でも、読んでみる価値はありそうです。

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Source: 毎日新聞出版

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