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印南敦史の「毎日書評」

過去の成功体験を疑え。いまのマネージャーにもっとも重要な役割とは?

author 印南敦史
過去の成功体験を疑え。いまのマネージャーにもっとも重要な役割とは?
Photo: 印南敦史

「英語が話せれば、もっとやりたい仕事ができたのに」

「定時に帰ったら、上司から悪く思われるに違いない」

「もっと接待しなければ、きっと取引を止められてしまう」

たとえばこのように、私たちの生活のなかにはさまざまな思い込みが存在しているもの。『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(澤 円 著、アスコム)の著者は、そう指摘しています。

「思うようにいかない理由」や「自己実現できない理由」を見つけるのは簡単ですが、恐ろしいのは、「〜だから無理」と思ったと同時にそこがゴールになってしまうこと。

だからこそ重要な意味を持つのは、「あたりまえ」を「疑う」からはじめること。

思い込みを捨て、「では、どうすればできるのだろう?」と考えてみることが大切だというわけです。

「あたりまえ」に対して疑問を持つ。

一歩前へ進んだと考える。

「あたりまえ」という思い込みに疑問を感じること。それは、自分が変わっていく過程において、重要なシグナルなのです。だから勇気を出して、あなたのなかに生まれた疑問を大切にしなければなりません。(「プロローグ」より)

こうしたメッセージを前提とした本書のなかから、「マネジメント」に焦点を当てたCHAPTER 4「マネジメントを疑う」内の「マネジメントが『管理』だと思っているうちは、結果は出ない」を見てみましょう。

マネジメントとは「判断すること」

マネジメントについて考えるにあたり、著者がまず明らかにしているのは「日本はマネジメント後進国」だということ。

マネジメントの概念が、とても悪いかたちで根づいてしまっているというのです。

たとえば、僕が嫌いな「管理」という言葉がそう。

管理はマネジメントのことではないし、管理職もマネージャーのことではありません。

マネジメントにはもっと広く奥深い意味が含まれていて、じつは「最適な日本語訳がないのでは?」と思うほどです。(176ページより)

では、マネジメントの本当の意味とは? その答えは、マネージャーのもっとも基本的なタスクを考えてみれば明らかになるそうで、それは「判断すること」。

マーケットを俯瞰して、自社のリソースを最適に配置する判断などがこれにあたるといいます。

すなわちリソースの最適配置において、他分野の知識を持ち、より広い観点から判断することがマネージャーの仕事になるということ。もちろん管理もマネージャーの役割でもありますが、あくまでもそれはタスクのひとつに過ぎないわけです。(175ページより)

なぜ部下のモチベーションが上がらないのか

リソースを最適に配置するためには、各チームメンバーの能力や適性を見極めることが必要。そのためマネージャーには、高度なヒアリング能力が求められることになります。

ところでマネージャーのなかには「もっとやる気を出せ!」「モチベーションを上げていこう!」と部下を焚きつける人もいますが、それではマネージャー失格だと著者はいいます。

なぜならモチベーションは、上司が命令することで上がるようなものではないから。

むしろマネージャーがやるべきは、モチベーションが上がる環境を整えること。チームの力を阻害するブロッカーを外していき、みんながのびのびと働ける環境を整えることこそが重要な仕事だということです。

ところが日本の企業では、マネージャー自身がブロッカーになっているケースがとても多いのだとか。いうまでもなく典型的なのは、部下に対して「数字を上げろ」「書類をつくれ」というように命令ばかりしているタイプ。

しかし、そもそもマネージャーには、人に対して命令する権限などないわけです。

デキるマネージャーは、結果的に指示や命令をしているように見えても、それはあくまでもリソースを最適に配置したうえで、いわば「開始ボタンを押しているだけ」ということ。

人を自由に動かす権利までは与えられていません。(178ページより)

リソースのなかに、人が含まれているというだけのこと。人の心も含めて自由に動かす権利など、誰にもあるはずがないのです。

にもかかわらず、なぜ多くのマネージャーは勘違いしてしまうのでしょうか?

著者によればそれは、日本企業のマネージャー(管理職)が「名誉職」だから。

たとえば「セールスの成績がよかったから」営業部長になったり、「マーケティングで能力を発揮したから」マーケティング部長になったりするようなケースがあるもの。

いいかえれば、現場で結果を出した人への名誉として、マネージャーの肩書が与えられているわけです。

そればかりか多くの企業では、給与の階層が役職の昇降格と一致しているもの。そのため、一定以上の給料を払うためには役職をつけることがマストになっているわけですが、それはリソース配置としては最悪のパターンだと著者。

その理由は明白です。プレイヤーとして優れていたとしても、マネージャーとしての適性がない人が「○○部長」や「○○マネージャー」というような立場についてしまうと、チームがめちゃくちゃになってしまう可能性があるからです。

しかも本人のなかには名プレイヤーだった成功体験があるため、高圧的な態度で部下と向き合ってしまったりするわけです。しかし、それでは逆効果。

過去の成功体験だけで判断すると、マネジメントは100%失敗する。(182ページより)

著者はこう断言しています。マネジメントでいちばんやらなければならないのは、リソースの最適配置だから。

したがって、もし過去に成功体験があるのなら、まずすべきはその成功体験を疑うことだという考え方です。(177ページより)

本書のベースになっているのは、2018年11月に発刊された『あたりまえを疑え。』。

その後、新型コロナウイルスの出現により、社会も個人も急激な変化を強いられるようになり、「あたりまえ」の呪縛から解き放たれるタイミングが訪れたと感じたことが再刊のきっかけだったのだそう。

たしかに「あたりまえ」を疑う習慣が身につけられれば、いろいろな意味で視野を広げることができそうです。

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Source: アスコム

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