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印南敦史の「毎日書評」

「認知バイアス」に要注意。歪んだ情報を整理して正しい選択する方法

author 印南敦史
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「認知バイアス」に要注意。歪んだ情報を整理して正しい選択する方法
Photo: 印南敦史

一般に「バイアス(bias)」とは、織り目に対して斜めに切った布の切れ端のことで、そこから「かさ上げ・偏り・歪み」を指すようになった言葉である。

よく耳にする「バイアスが掛かっている」という言い方は、「偏った見方をしている」ときに使う。

「認知バイアス(cognitive bias)」とは、偏見や先入観、固執断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉として使用されるようになったわけである。

(「監修者まえがきーー『認知バイアス』とは何か?」より)

情報を正しく選択するための認知バイアス事典』(情報文化研究所(山﨑紗紀子/宮代こずゑ/菊池由希子)著、高橋昌一郎 監修、フォレスト出版)の監修者は、「認知バイアス」についてこのように解説しています。

本書はそんな認知バイアスについて、論理学・認知科学・社会心理学の3つの研究分野から、各々の専門家がアプローチしたもの。

特徴は、わかりやすい項目から徐々に理解を深められるように工夫されている点。第I部(論理学的アプローチ)、第II部(認知科学的アプローチ)、第III部(社会心理学的アプローチ)の順に読み進んでいけば、認知バイアスの全体像を無理なくつかめるような仕組みになっているというのです。

そこで、きょうは第I部「認知バイアスの論理学的アプローチ」の冒頭、「二分法の誤謬(ごびゅう)」に焦点を当ててみたいと思います。

「白黒つけろ」といわれたときは、あえてグレーゾーンを選択肢に入れようという考え方です。

選択肢は本当に2つしかないのか?

「最近いいことがないのは、運気が滞っているからです。この壺を買って部屋に飾れば、必ずいいことがありますよ」

平時にこんなことをいわれても、買う気になる人はほとんどいないはず。ところが藁にもすがりたくなるような状況にいたとしたら、言葉巧みに操られてしまうこともありえなくはありません。

しかし、そのように精神的に追い詰められた状況に陥ったとしても、壺を「買う」「買わない」の2つの選択肢以外に目を向けるべきだということを思い出してほしいと著者はいいます。

なぜなら、選択肢は2つしかないわけではなく、隠された選択肢がまだ存在しているからだ。

それにもかかわらず、白か黒か、どちらかをはっきり決めるように選択を迫るような議論の手法には二分法の誤謬が隠されている。(14〜15ページより)

それはとくに、選択肢を狭め、相手を極限状態に追い込むことで、自分に都合のいい選択を引き出そうとする際に用いられる論法だといいます。(14ページより)

極限の状況でも選択を誤らないために

では、上記の壺の例でいえば、どのように考えてしまったのでしょうか?

ここで提示されている選択肢は、「壺を買えば不幸にならない(つまり、幸せになれる)」と、「壺を買わなければ不幸になる」の2つ。

このように極端な2つの選択肢を突きつけられることによって、人は「自分には限られた選択肢しかないのだ」と勘違いしてしまうのです。

この二分法の誤謬は、相手が極限の状況に追い詰められている際に用いられることが多いのだとか。そのような状況に追い込んだうえで、相手の弱みにつけ込み、正常な判断を行いにくくさせるわけです(相手の恐怖心につけ込む方法は「恐怖に訴える論法」と呼ばれるそう)。(15ページより)

隠されていた2つの選択肢

ここで、先に提示された2つの選択肢を改めて見てみましょう。

① 壺を買えば不幸にならない(つまり、幸せになれる)。

② 壺を買わなければ不幸になる。

(16ページより)

あたかもこの2つの組み合わせしかないようにも思えますが、実はここには、提示されていないさらに2つの選択肢「壺を買っても不幸になる」と「壺を買わなくても不幸にならない」が存在しています。

このような状況下において、「白黒はっきりしろ!」「挑戦した人はみんなステップアップしているぞ!」などと選択を迫る人はいるものです。

しかし、それが意識的か無意識的かはさておいても、他の選択肢があるにもかかわらず、自分に都合のいい選択肢だけを提示し、答えを引き出そうとしている可能性があることを理解しておくべきなのです。(16ページより)

選択肢の数がわかる計算式

選択肢の数が本当はいくつあるのかを知りたいときには、計算式「2n(二乗) 」に当てはめて考察してみるといいそうです。そうすれば、自分が選べる選択肢を網羅して検討することが可能になるというのです。

ここでの「n」は組み合わされる項目の数、「2」は組み合わされる項目のそれぞれに対し「採用する(○)」「採用しない(×)」の2つの選択肢の可能性があることを表す。

この計算式を用いることで、より一般的に、自分が置かれている状況について、選択することのできる選択肢の数を計算することが可能となる。(16〜17ページより)

もちろん、最終的にどの選択肢を選ぶかは本人の自由。しかし、すべての選択肢の存在を知ったうえで選択するのと、限られた選択肢のなかから、ひっ迫した状況で選択するのとでは大きな差があるはず。

仮に結果が同じだったとしても、その意味はまったく異なるということです。

だからこそ大切なのは、自分の選択に後悔をしないために、自分の置かれている状況をきちんと整理すること。そうすれば、誤った判断を防ぐことができるわけです。(16ページより)

最初から順番に読んでいくのがベストであるとはいえ、パラパラとめくって気になる項目から読むことももちろん可能。

つまりは、難しそうに感じる認知バイアスを多角的に、わかりやすく解説しているわけです。情報を正しく選択する能力を高めるために、ぜひ参考にしたいところです。

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Source: フォレスト出版

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