連載
特集
カテゴリー
タグ
メディア

印南敦史の「毎日書評」

月曜の朝はPCを開かない〜「深い集中」に入るための技術とは

author 印南敦史
月曜の朝はPCを開かない〜「深い集中」に入るための技術とは
Photo: 印南敦史

PCやスマホが普及したことによって、人間の「ひとつのことに集中する力」が落ちてきた。しかもリモートワークの浸透や環境の変化もあり、集中できないことへの対応は避けて通れないものとなっているーー。

深い集中を取り戻せ ―― 集中の超プロがたどり着いた、ハックより瞑想より大事なこと』(井上一鷹 著、ダイヤモンド社)の著者は、そう指摘しています。JINS(ジンズ)で、JINS MEMEという集中力を測るメガネの技術開発・事業開発などを推進してきたという人物。

だとすれば、どうやったら集中力を取り戻せるのでしょうか?

今後の世界では、人工知能などが急速に進むことは確実で、すでに発掘された課題の「解決」は、多くの場面で効率化・機械化されていくことでしょう。

そのような世界で、知的生産活動をおこなう人々にとって重要なのは、「課題発掘能力」とそれを発揮する「内発的動機」、つまり「夢中」な状態を取り戻すことではないでしょうか。

何も言われなくても自ら取り組んでいたあの頃の「深い集中」を取り戻すことなのです。(「はじめに」より)

つまり本書ではこうした考え方に基づき、「深い集中」を取り戻すためのメソッドを明かしているわけです。

きょうは第2章「『1人で集中できる場所』をとり戻すーー『いつ、どこで働けばいいのか』を決める」のなかから、「『集中できる時間』を死守する戦略」に焦点を当ててみたいと思います。

「自分の集中できる時間帯」を知る

「直感の脳の時間」が人生でもっとも大事であると考える著者には、決めていることがあるそうです。

「直感の時間」を1週間の最初である「月曜の朝9〜11時」に設定。そして月曜の朝はできるだけPCを開かず、「今週はなにをしようか」などということをぐるぐると考えるようにしているというのです。

なぜ「朝9〜11時」なのかといえば、著者の場合、集中を示す数値がもっとも高くなるのがこの時間帯だから。ちなみに、2番目に集中できる時間帯は「夕方4〜6時」だったといいます。

私は以前はコンサル業界にいたため、超夜型の生活でした。

しかし、DeNAのMYCODEという遺伝子検査のサービスを受けてみた結果、夜ふかし傾向が弱いタイプであることがわかりました。 SNPという遺伝子型で分かれるのですが、そもそも、MYCODEで引用されている秋田大学の研究では、ほとんどの日本人が「夜ふかし傾向が弱い」という遺伝的傾向を持っているそうです。(187〜188ページより)

さらにこの研究では、遺伝子型に関係なく、年齢が高い人のほうが朝方傾向であるというデータもあるのだとか。

加齢にともなって体内時計が前倒しになり、夜型だった人が朝方になるというのは、すでに知られたところ。そういう意味でも、「朝方にしたほうが仕事がはかどる」という考え方はおおむね正しいわけです。

なお、ここで重要なのは、「自分はこの時間帯には集中できる」と自覚し、それを守ること。

その裏づけとなるのが、ビズリーチ社のエンジニアを対象に行った実証実験。最初の1週間で個々人が集中できる時間帯を判定し、翌週にその時間帯を最大限活用するようにスケジュールを最適化したところ、全体で6%ほど集中時間が伸びたというのです。

したがって著者も、「朝9〜11時」と「夕方4〜6時」には、できるだけ会議などを入れないようにして、自分の時間を守っているということ。もちろん個人差もあるでしょうが、ともあれ自分の集中できる時間を知り、その時間を死守することは大切であるようです。(187ページより)

時間を決めて「デジタルデトックス」をする

著者がもうひとつ気をつけているのは、月曜の朝は「できるだけPCを開かない」こと。とくにアイデア系の思考をしたいときには、いきなりPCを開かないようにしているというのです。

なぜなら、PCを開いて人がまずすることは、決まって「受動的な行為」だから。「メールをチェックする」「調べものをする」などの行為はほとんどが受動的であるため、気づいたらネットサーフィンやSNSのチェックが止まらなくなっていたりするわけです。

しかし、それを意志の力で我慢するのはとても非効率。そのため、「初めからPCを開かない」という考え方なのです。

その後、本格的に1週間が始まれば、周囲の人の動きに流されざるを得なくなります。だからこそ、自分でコントロールできる「1週間の最初の時間」くらいはネットから切り離された時間を過ごすようにしているということ。

人の脳は、「深い集中」に入るまでに約23分かかるのだそうです。その23分は、メール、コミュニケーションチャット、雑談などによって、あっという間に遮られてしまうものでもあるでしょう。

仕事が多ければ多いほど、相手からのコミュニケーションを求められることになります。そのため結局は、1日のうちに一度も「深い集中」入れないままその日を終えてしまうこともあるかもしれません。

深い集中に入るためには、デジタル機器から強制的に離れる行為、「デジタルデトックス」の時間を設けることが必要不可欠です。(191ページより)

作業をする前にはPCのWi-Fiを切るようにし、その時間内で仕事の骨子を固めたりするという方法。調べたいことや聞きたいことが出てきても、その場ではリストにまとめておくだけにし、あとで「単純作業」の時間帯に一気に調べるようにするわけです。

また、1日のなかで「メールやチャットを何回確認したか」を数えておくことも有効。可視化してみれば、必要以上に確認していたことがわかるからです。

いつでも反応できるように構えていると、自分の時間は少なくなっていくもの。だからこそ、この点も押さえておきたいところです。(189ページより)

本書は集中力を身につけるための「ハック本」ではなく、各人がかつて夢中になってなにかに没頭できた体験、すなわち「深い集中」を取り戻すことを目的としたもの。自分が夢中になれる課題を定義し、真剣になることの重要性が説かれています。激変する時代を生き抜いていくために、ぜひとも参考にしておきたい一冊です。

あわせて読みたい

集中力を見える化して「世界一集中できる場所」をつくる。ジンズで働く井上一鷹さんの仕事術

3つの仕事をバランスよく遊ぶように働く。映像プロデューサー鎮目博道の仕事術

Source: ダイヤモンド社

swiper-button-prev
swiper-button-next