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印南敦史の「毎日書評」

JAL国際線チーフパーサーが語る、現代を生きる偉人たちのことばから学べること

author 印南敦史
JAL国際線チーフパーサーが語る、現代を生きる偉人たちのことばから学べること
Photo: 印南敦史

雲の上で出会った超一流の仕事の言葉』(黒木安馬 著、あさ出版)の著者は、JAL国際線チーフパーサーとして、30年間もの乗務実績を持つ人物。高度1万mを2万時間飛行し、地球を860周も回る経験をしてきたのだそうです。

そして空の上は、稀有な体験ができる環境でもあったのだとか。

500人も乗る大型旅客機の国際線、それも私が総責任者として乗務した密室空間のファーストクラスは、普段では一般人が会うこともできないスーパースターの「見本市」会場であった。

月間20日間はCA(Cabin-Attendant)と一緒に海外をフライトし、アポイント不要で世界的VIPと一対一で話す。それが、ホテルでもなくレストランでもない、1万m上空の密室での、機内責任者としての私の仕事だった。(「はじめに」より)

接してきたのは、天皇陛下を筆頭に、さまざまな国の国王や大統領、はてはオードリー・ヘップバーンに代表される俳優や女優、本田宗一郎、松下幸之助などの大物経営者など、文字どおり「雲の上」の人々ばかり。

このような体験を乗務日誌に書き綴ったものを出版したのが、『出過ぎる杭は打ちにくい!』(サンマーク出版)である。国際線機内図書としても搭載され、版を重ねるたびに段ボール数箱分になる感想の手紙をいただいた。

その後、知己を得た方々とはコンタクトを取り続けて、この方は!と思う各人との貴重な対話を深く掘り下げ、2019年に『国際線乗務30年で観た成幸者たちの法則』(日本工業新聞社)という本を出版した。

各方面から好評いただいたこの本を加筆修正して、さらに新たな「超一流の人生の達人たち」に多くご登場願ったのが本書である。(「はじめに」より)

第4章「人生が楽しくなる言葉」のなかから、きょうは建築家の安藤忠雄さんに関するエピソードをご紹介したいと思います。

天井にポッカリと大空

「信じる道を精一杯歩いていると、それなりに生きていけるものです」

大阪の下町にある長屋で育ち、ボクサーを目指してリングに。相応のファイトマネーを稼ぎながら、プロへの夢を抱き続ける。

ところが、所属ジムで一緒だったファイティング原田さん(日本プロボクシング協会元会長)の練習風景を目の当たりにしてその才能に圧倒され、「これは努力だけではついていけない世界かもしれない」とプロを目指すことを断念。

転機が訪れたのは、14歳のとき。家を増築する機会が訪れ、隣の大工さんと一緒に工事をやらせてもらうことに。長屋の屋根を解体した際、天井にポッカリと大空が見えたことに感動し、それがきっかけとなって建築家を目指す。

工業高校を卒業後、19歳の1年間はいっさい外出もせず、通信教育で建築学を独学で習得することを決意。朝9時から翌朝4時まで机に向かう。

その後、4年間かけてヨーロッパやエジプトなど世界中の建築物を見て回り、やがて頭角を現して世界的な建築家へ。のちにイェール、コロンビア、ハーバードなど世界的な名門大学の教壇に立つほど高い評価を受け、高卒にして東大教授就任。

この項で著者が紹介している建築家の安藤忠雄さんは、こうした経歴の持ち主です。(171ページより)

安藤忠雄さんのことば

そんな安藤さんは、前述した著者の『出過ぎる杭は打ちにくい!』の感想で次のように述べているそうです。少し長いのですが、重要な箇所なので印象してみましょう。

「日本という国で、自分だけの力で生き抜いていこうと思ったら、出る杭として打たれる前に、出過ぎる杭!くらいじゃないといけない。自分と他人を比べるのじゃなく、信じる道を精一杯歩いていると、それなりに生きていけるものです。

私は建築界では評判が悪いですよ。ものすごく評判悪い。だけど少なくとも海外の人なんかは、わりと、『出る杭とぶつかって面白いことをしましょう!』と思ってくれるんです。

(中略)

彼らには私がどういう学歴であろうが、そういう氏素性であろうが無関係です。日本では、どこの大学を何年に卒業したというようなことばかりを云う人がいますよ。

どういう感覚なのか、私にはまるで理解できませんが。これもそろそろ大人が変えなくてはいけないことです……」(174〜175ページより)

チャンスは練って待て!

また、この発言を受けて、著者は次のように主張してもいます。

努力した分は、必ず神さまが応援してくれる。チャンスは寝て待て、と運を天に任せるようでは、羅針盤も舵もない、ただのいい加減な人生の漂流船でしかない。 「チャンスは練って待て!」なのである。(175ページより)

これは安藤さんや著者だけではなく、さまざまな仕事と向き合う、どのように人にも当てはまる考え方だといえるのではないでしょうか?

人との出会いは視野を広げてくれ、交流は価値観に深みを与えてくれるもの。そういう意味で、各界の要人の生き様や考え方を切り取った本書は大きな意味を持っていると感じます。

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Source: あさ出版

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