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印南敦史の「毎日書評」

人間関係でひどい目にあったとき、思い出したい2つの考え方

author 印南敦史
人間関係でひどい目にあったとき、思い出したい2つの考え方
Photo: 印南敦史

今まであなたのこと友達だと思ってたのに』(ソン・ユミ 著、吉川 南 訳、かんき出版)の著者は精神科医。初の著作である本書は、ある人から「人間関係」についての質問を投げかけられたことを発端として生まれたのだそうです。

長く付き合った相手から裏切られると、その傷あとは簡単に消えることはない。ただの傷あとならまだいいほうで、それが人生の見方を変え、人に対する心の温度もどんどん低くなってしまう。

ところで、その裏切りの瞬間よりもつらいのは、裏切られたその後の日々だ。夜も眠れないほど苦しく、数年たっても頭にこびりついているほど、心が深く傷つくからだ。

そんな痛みを持つ人たちが、この本を読んでくれたらと思う。新たな人間関係をつくろうとする人たちにも役立つだろう。(「はじめに」より)

さらにいえば、著者がもっと注目したのは、長いつきあいのなかで「ひどい目に遭わされた」人たちが受けた傷だといいます。

そこで著者は、そういった人たちに目を向けているのです。ひどい目に遭って傷ついた人を励まし、過去に執着し続けることなく新たな関係づくりに挑戦することを“慎重に”提案したいと感じているから。

そのような考え方に基づく本書の第2部「相手の怒りから自分を守る方法」内の第2章「再び出会うつもりで手を離そう」のなかから、きょうは「人間関係におけるいくつかのQ&A」に注目してみたいと思います。

よく人に振り回されるタイプなら

これまでの経験から、人に振り回されるタイプだと思っています。

それなのに、なぜ自分の欲求が強くて他人を利用しようとする人にばかり引きつけられるのでしょうか。私に人をみる目がないのでしょうか?(241ページより)

著者はこの問いに対し、「問題は人を見る目がないのではなく、その性格」だと指摘しています。

「悪い男」を好きになる女性がいますが、相手が異性であれ同性であれ、人は「悪い人」に魅力を感じてしまいがち。なぜなら彼らは、「関係の最初、途中、最後」のうち、最初にもっとも強い光を放つものだから。

自分の主張を強く押し出すタイプの人は確固たる見解を持っており、すべてに好き嫌いがはっきりしているもの。つまりは、そんなところが魅力的に映るというわけです。ましてや自分が優柔不断で小心者だったとしたら、彼らが偉大に見えても不思議ではありません。

だからこそ、主体性が弱く、誰かに頼りたいタイプの人は、そんな相手に強い魅力を感じるわけです。自分の代わりに先頭に立って怒ったり闘ったりしてくれるので、そこに引かれるということ。

端的にいえば、彼らは自分の権利と要求が侵害されたことに怒っているにすぎません。ところが振り回されるタイプの人は、「自分のためにそうしてくれた」と錯覚してしまいがち

また、そのような対象にいつまでも引きつけられていたら、物静かな人には魅力を感じないということになってしまうかもしれません。しかし、物静かな人のこともそばでよく見るべきだと著者は主張しています。

なぜなら物静かな人のなかにも、これまで発見できなかった魅力があるはずだから。さらには、魅力的な人に負けないくらいに、自分の物理的・精神的能力を高めることも大切だといいます。(241ページより)

人とよい関係をつくれないなら

何度も努力しましたが、よい関係をつくることができません。これは能力がないせいでしょうか。どれだけ失敗したら、安定した人間関係をつくれるでしょうか。(246ページより)

「あと何回」と答えられるようなものではないものの、試行錯誤を続けることが大切ではないかと著者はいいます。

ただし試行錯誤は、心の挫折や失望を伴うものでもあるでしょう。そのため「どうしても試行錯誤をしなければならないのか」という疑問を払拭できないかもしれませんが、失敗せずになにかを得る方法などないのです。

でも誤りは修正することができるし、自分が耐えられる程度に傷を抑える方法もあるはず。著者によればそれは、「子どものように行動する」ことだそう。

子どもは遊びも勉強も人間関係も、何かを学ぶときに飽きることなく繰り返します。ところが、よく見ればそれは無限ではありません。自分がこれで十分だと思うところでやめます。何かの結論が出ると繰り返すのをやめて、新しいことを始めます。(247ページより)

人間関係においても、「子どものような」柔軟さが必要だということ。繰り返しチャレンジすることはもちろん重要ですが、適当なところで関係を整理して終わらせることのほうがもっと重要な場合もあるということなのでしょう。

とりわけ大切なのは、その過程で得たことと誤りについて、じっくりまとめてみる時間を持つこと。「また人間関係で失敗した」と、挫折するだけで放っておいたとしたら、なんの成長もないわけです。

そして、さらに大切なことがあると著者はつけ加えています。「いろいろなコミュニティに出て、多様な人とつき合うように」と進めると、「行ってみたのに得るものがなかった」という人が多いというのです。

しかし、それは人との出会いを利益中心で見る短絡的な発想。多くの経験を積む「機会」だと考えるほうがずっと健全だということです。(246ページより)

裏切りを乗り越え、果敢に前へと進むことは、それほど簡単なことではないかもしれません。しかし、「喜びは分かち合うことによって倍になり、悲しみは分かち合うことによって半分になる」という古いことばが、日常に蘇る可能性をも大切にしたいと著者は考えているそうです。

人間関係で思い悩んでいるなら、本書が役に立ってくれるかもしれません。

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Source: かんき出版

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