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印南敦史の「毎日書評」

会計を学び「お金の流れ」を理解すると見えてくるものは?

author 印南敦史
会計を学び「お金の流れ」を理解すると見えてくるものは?
Photo: 印南敦史

会計と聞いて、「なんだか難しそう」だと感じる方は少なくないはず。

しかし『「お金の流れ」がたった1つの図法でぜんぶわかる 会計の地図』(近藤哲朗、沖山誠 著、岩谷誠治 監修、ダイヤモンド社)の著者は、「それは社会のインフラであり、共通言語」なのだと主張しています。

お金の流れを追って、どう管理するかのルールが決まっているからこそ、みんな安心して仕事ができるのだということ。

つまり、会計が「わたし」と「社会」をつないでいる。

会計というのは、お金の流れを記述するものだから、お金が世の中をどう流れているか知ることは、社会を知ることにつながる。

(中略)会計を知っていれば、どんな世代の、どんな立場の人とも対話できるようになる。(「はじめに」より)

そこで本書では、これまで会計の本を読んだことがない人でも読めるように、基本的な概念を解説しているわけです。

会計の本なんて読んだことないし、不安しかない、というそこのあなた。安心してほしい。

一つひとつ読んでいけば、全体像がわかるような構成にした。

もう誰も会計で挫折させないつもりで書いた。「これなら理解できそう」という体験が、きっとあるはずだ。(「はじめに」より)

そんな本書のなかから、きょうはパート3「自分は、社会に、何ができるのか?」に焦点を当ててみたいと思います。

「これから先の時代、会社にはどんなことが求められるのか」、あるいは「自分はなにをするといいのか」ということなどについて触れた章です。

会計は社会を見るためのレンズ

会計は、社会を見るためのレンズになると著者は表現しています。会計を通して社会を見れば、目の前の仕事がどのように社会とつながっているのかが見えやすくなるということ。

もちろんその一方には、「会計を学ぶのは、仕事ができるようになるため」「スキルを得て給料をアップさせたりするため」というような考え方もあることでしょう。しかし、それは会計を学ぶことの本質的な意義ではないというのです。

会社のお金の流れが社会につながっていくイメージを思い描けるようになると、お金がまるで生きもののように、脈々と流れる社会全体の血流のような大きな動きに思えてくる。(186ページより)

もしかしたら、「目の前の数字を追いかければ済むのではないか」と思われるかもしれません。しかし、それは“これまでの”考え方でしかないのだとか。

それよりも重視すべきポイントは、これから社会が急激に変化していくということ。目の前の数字をただ追うだけではなく、その裏側にある意味を理解することが重要だということです。そのうえで、「社会がどう変化しているのか」を知る必要があるわけです。(186ページより)

ESG投資という潮流

そして注目すべき社会の潮流のひとつとして、著者は「ESG投資」を挙げています。

ESGとは、環境(environment)・社会(society)・ガバナンス(governance)のイニシャルをとったことば。

それは、「地球環境や人類が生きる社会を大事にしよう。それらを大事にできる体制をつくることができている会社に投資しよう」という趣旨の考え方でもあるそうです。

もともとは国連が2006年にPRI(責任投資原則)を提唱し、ESG投資を呼びかけたことで世界的に注目を浴びた。

日本では、150兆円以上もの規模で年金の積立金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2015年にPRIに署名し、ESG投資を始めたことで、いっそう機運が高まった。(186ページより)

GPIFのような機関投資家がESG投資をすることには、大きな理由があるようです。彼らは「年金」という世代をまたぐような超長期の投資を行うため、短期的な利益ではなく、長期的な利益を得る必要があるということ。

つまりGPIFが長期にわたってリターンを得るためには、1社1社の株価の上がり下がりよりも、経済全体のリスクを減らす必要があるわけです。そういう意味において、ESGのように大きなリスクを考慮した投資をすることは合理的だというのです。

しかも、これは投資家だけに関わる話ではないのだそうです。GPIFのように大きなお金を運用する機関投資家がESG投資をすることで、そういった投資家から流れてくるお金を扱う会社もまた、ESGに配慮した経営を行わなければならなくなってきているから。

極端なことを言えば、もはやESGを意識しない会社は徐々に淘汰されていく力学が働いている。

つまり、これから、どの会社もESGを無視して経営することはできなくなったと言える。(187ページより)

ESGを意識すると、売上一辺倒では立ち行かなくなります。売上を過度に上げるべく環境や社会を犠牲にした商品を安くつくれば、それはいずれ批判され、結果的に企業価値が下がるわけです。

すると投資も集まらなくなるので、新たな商品がつくれなくなり、結果的に売上は上がらなくなってしまうということ。

しかし、だからといってESGを気にしすぎ、“長期的に環境や社会に望ましい投資”を優先し、目の前の売上や利益を軽視するわけにもいかないでしょう。

そうなってしまうと、社員への給料も払えなくなってしまい、新たな投資もできなくなり、会社が続かなくなることも考えられるからです。

つまり、バランスが大切だということ。

しかも、それは経営者だけが考える問題ではなく、働くひとりひとりが、会社のお金の流れの全体像を理解し、行動につなげていくことが重要なのだと著者は強調しています。(186ページより)

今回は考え方に関する項目を取り上げましたが、図版を多用した本編においては会計の基本がわかりやすく解説されています。

したがって、会計に苦手意識を持っている方こそ読んでみるべき一冊であるといえそうです。

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