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しゃべるのが苦手な人が人前でスラスラ話せるようになるコツ

しゃべるのが苦手な人が人前でスラスラ話せるようになるコツ
Photo: 印南敦史

博報堂で多くのコピーやCMをつくってきた『人が動きたくなる言葉を使っていますか』(ひきたよしあき 著、大和書房)の著者は、スピーチライターとしても、多くの政治家や企業トップのスピーチを書いてきたのだそうです。

以下の一文が説得力を感じさせるのも、そうした裏づけがあるからなのかもしれません。

言葉には、人を動かす力があります。(「はじめに」より)

ところが現実的に、「みんなにこうしてほしい」「あの人にこう動いてほしい」「自分はこう動きたい」という、ことば本来の力を発揮できていない人が多いのも事実。

「分断」「忖度」「炎上」などの影響で、思いのままに語りにくい風潮が強くなっていることもあり、ことばの力を発揮しづらくなっているわけです。本書は、そうした悩みに対して著者なりの解決策を示した一冊。

思いもよらない一言が炎上を引き起こす。それを怖がり、婉曲表現ばかりしていたのでは何も伝わらない。

人類史上でこれほど言葉の役割と責任が重くなった時代はありません。 だからこそ、身体と同じように言葉の力を鍛え、あなた自身に強くなってほしい。(「はじめに」より)

根底には、こうした思いがあるようです。きょうはLESSON 10「言葉がスラスラ出てくるようになる最短コース」に目を向けてみることにしましょう。

声で、場を支配しよう【「無口」から抜け出す秘訣】

ことばがスラスラ出てこない人が無口から抜け出すためには、人前で話すこと以前に、「声を出す」ことが大事。

著者はそう主張しています。人とのコミュニケーションを考える前に、まずは思ったことを声に出す習慣をつけるべきだというのです。

伝えたいのは、「大きな声で、ひとりごとを言う」こと。アホらしいと思わないで、ぜひ試してほしい。つねに「沈黙」を破る訓練です。

たとえば、風呂に入ったとき、「あぁ、気持ちいい!」と声に出す。ご飯を食べて「うまい」と言ったり、「ちょっと塩が多いな」と言ってみる。

本を読んで「意味わかんねーよ」と文句をたれ、「なるほど、参考になる!」と言ってみる。(171ページより)

著者によれば「ひとりごと」は、Zoomのチャット機能のようなもの。つまり普段の生活のなかで「ひとりチャット」をする機会を増やそうという考え方です。

そして「ひとりチャット」で沈黙を破れるようになったら、次は対人コミュニケーション。とはいえ大げさなものではなく、勧められているのは「挨拶をする」というシンプルな方法。

「挨拶」という字は、「挨」も「拶」も「押す」という意味があります。

「おはようございます!」と言うことは、その場の空気を押していることになる。声で、その場を支配しようとするんだ。(172ページより)

逆にいえば、大きな声で挨拶をしないと、はじめから相手の支配する空気のなかに収まることになるわけです。そんな状況下で打ち合わせや交渉をしても、いい結果にならないであろうことは想像に難くありません。

著者が「声で、場を支配しよう」と進めることには、そのような理由があるのです。(170ページより)

「見られる自分」から「見る自分」になろう【人前で話すのがラクになる方法】

「人前でうまくしゃべれない」という人が特に苦手なのは、特に上司や同僚、得意先など、自分をよく知る人の前で話すことではないか? 著者はそう指摘しています。

「また部長に、『いいたいことをはっきりいえ!』とどやされる」「部下に『全然、意味わかんないんですけど』と馬鹿にされる」などと考えてしまい、しゃべれなくなってしまうのではないかと。

しかし部長の「はっきりいえ」も、部下の「わからない」も、自分が想像しただけのもの。

「〜といわれたらどうしよう」と思っているだけにすぎないということ。いいかえれば、他人から見た評価を想像して怯えているだけ。知っている人が相手だと、繊細な人は「あの人なら、こういう悪い評価をするに違いない」と想像してしまうわけです。

それを克服するための手段として著者が勧めているのは、知らない人が集まるところに出かけること。勉強会でもセミナーでも、自分のことを知る人のいない場所に出かけ、いつもとは違う自分を演じてみるべきだというのです。

相手は知らない人なのだから、どう見られようが、なにをいわれようが知ったことじゃないという気持ちになることが可能。すると、「なんだ、みんなたいしたことないな」「けっこういい人そうじゃないか」など、自分の評価で周囲を見ることができるようになるとか。

「こう思われたらどうしよう」ではなく、自分から「こんなふうに見える」「こういうふうにふるまってやろう」という気持ちになる。

そこで発言できたり、人と話せれば余計にいいけれど、急ぐ必要はありません。

まずは、「人からどう見られるだろう」ではなく「自分から見てやろう」と気持ちを変えることに力点を置いてください。(176〜177ページより)

そんな体験を何度かして社内に戻ってみると、会議の席でビクビク目を伏せていた自分から解放されることになるそう。こちらが「見てやろう」と思えば、相手のほうが「見られたらどうしよう」と思うようになるかもしれません。

そんなふうに立場を逆転させることができれば、なにひとつ怖がることなく「私の話を聞かせてやろう」と思えるはずだといいます。(174ページより)

本文は、悩みを抱えた人に向けた「手紙形式」になっています。

スピーチライターをやりながら大学で教鞭をとる人物(つまり、モデルは著者)が、さまざまな人物に向けて手紙を綴っているような体裁になっているわけです。そのため、共感もしやすいはず。ことばについて改めて考えてみるためにも、手に取ってみる価値はありそうです。

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Source: 大和書房

印南敦史

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