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印南敦史の「毎日書評」

88歳の経営コンサルタントが気づいた「本質を見抜く力」を養う方法

author 印南敦史
88歳の経営コンサルタントが気づいた「本質を見抜く力」を養う方法
Photo: 印南敦史

タイトルからもわかるとおり、『仕事1年生「これ」だけできれば100点です!』(山形琢也、すばる舎)は、“基本的には”新社会人をターゲットとした書籍。しかし実際には、より広範な層に訴えかける内容だといえます。

メッセージの普遍性もさることながら、最大のポイントは、経営コンサルタントとしての長い実績を持つ著者が88歳と高齢であること。つまり、その目から見れば、30〜40代もまた新入社員のようなものであるわけです。新世代に向けられた数々のメッセージに温かみを感じるのは、そのせいなのかもしれません。

さて、インターネット、SNS、AIなどによって社会は大きく変わりましたが、それでも変わらないものがあると著者はいいます。それは、人間そのもの。人間の本質は、どんな時代にも変わらないということです。

そして、そんな著者が強調しているのが「自分の人生は自分が主役だ」という考え方。

時代がどんなに変わろうと“自分”を意識して“自分”を大切にして生きてほしい。

同時に今はそれができる時代であり、自由な時代です。

人それぞれの自分の人生、自分の個性を思いきり生かすことです。

今日ほど価値観が多様化している時代を私は知りません。つくづく、すばらしい時代が来たものだと思います。(「はじめに」より)

こう語る著者によれば、ビジネスパーソンに求められるべきことは至ってシンプルで、そして簡単

「いいところを見せたい」と思う気持ちもわかるけれど、もっと簡単で、すぐに実践でき、評価に直結する“仕事のコツ”がたくさんあるというのです。つまり本書では、それらを明らかにしているわけです。

きょうは、そのなかから第6章「人生の主導権は自分が握る」に焦点を当ててみたいと思います。

プロは複雑な仕事を単純にこなす

ビジネスパーソンは、大きく3つに分けられると著者はいいます。

それは、「複雑な仕事を複雑にこなす人」「複雑な仕事を単純にこなす人」、そして「単純な仕事を複雑にこなす人」。

仕事のプロと呼ばれる人は、例外なく「複雑な仕事を単純にこなす人」。複雑な仕事を複雑にこなすのは普通の人であり、能力のない人ほど単純な仕事をあえて複雑にしてしまうというのです。

もちろん新人のころであれば、単純な仕事を複雑にこなしていても仕方がないのかもしれません。なにしろ、仕事のポイントも要領もつかめていないのですから、ところが困ったことに、入社から5年も10年も経っているのに、いつまでたっても単純な仕事を複雑にしかこなせない人がいるもの。

では、複雑で面倒な仕事を単純=シンプルにこなすために必要なことはなんなのでしょう?

経験? 技術? 要領? たしかにそれらも必要です。しかしもっと根本的なものがある。それは「本質を見極める力」です。(185ページより)

たとえば企業のコンサルタントをしていて、クライアントから次々と会社の問題点を指摘されたとします。

「顧客の目標に立った商品開発ができていない」「社員の評価基準がバラバラだ」「責任体制が曖昧だ」「失敗や成功事例を次に活かせていない」「30代の離職率が高く中堅社員が育たない」など。

そんなとき、普通以下のビジネスパーソンは各問題について個別に取り組もうとすることでしょう。ところが、それでは膨大な時間がかかってしまいます。一方、バラバラに見える問題点の背後に潜む本質を見抜くのが、「複雑な仕事を単純にこなす」プロの仕事人。

たとえば上のような問題であれば、そこから「社内の情報共有ができていないのではないか」という仮説を導き出すわけです。するとそれが、「部署内、部署間のコミュニケーションが足りないのではないか」という問題点につながることになります。

そこで聞き取り調査を行なって仮説を確認し、それが正しいということであれば、部署間の情報共有、コミュニケーションを図る方法はなにかと考える。

そして組織横断的な新規プロジェクトを新たに立ち上げ、各部署から選抜されたメンバーで構成したチームで共通の課題に取り組む。すると、停滞していた部署間のコミュニケーションが活性化するーー。

これは一例ですが、本質を見極めれば、一見バラバラだった問題点を一気に解決することができるということです。(184ページより)

「自問自答」する力こそ、すべての基本

では、見極める力を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか? そのために重要なのは、自分の頭のなかで現象を捉え、仮説を導くことができるかどうか。

つまり深いところでの「自問自答」ができるかどうかにかかっているということです。

「これはこういうことではないだろうか?」「だとしたらこうするのが一番いい方法ではないだろうか?」……。 自問自答が癖、習慣になっているかどうか。すると、やはりここでも「自分自身」という言葉が浮かび上がります。 すべての問いの答えは自分自身の中にある……。(189ページより)

問題解決のための答えを外に求め、やたらと聞いている人がいるものです。もちろん新人であれば、最初は上司や先輩にどんどん聞くべきでしょう。しかし、入社後3年、5年たっても大事な判断を人に聞くことが癖、習慣になっている人がいると著者は指摘しています。

ところが聞いてみたところで、そもそも人の意見は多種多様。そのため結果的に右往左往してしまうことになり、本質から外れた余計な仕事に労力をつぎ込み、一向に成果が出せなくなってしまう。そしてコミュニケーションの齟齬が生まれ、トラブルが起きるーー。

そんな事態を避けるべきために、「自問自答」すべきだということ。人の意見を参考にしたとしても、最後は自分なのです。

「自問自答」を癖にすれば、本質を見抜く力が養われ、結果として「複雑な仕事を単純にこなす」人間になれるのだと著者は主張しています。(188ページより)

長い人生経験に基づいた著者のメッセージは、簡潔にしてシンプル。難解ではないからこそ、強く心に訴えかけるのです。新入社員も中堅も、初心を忘れないために本書を参考にしたいところです。

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Source: すばる舎

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