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知力低下を防ぐ「脳のメンテナンス」2つの方法

知力低下を防ぐ「脳のメンテナンス」2つの方法
Image: Alena Kravchenko / EyeEm/Getty Images

身体が年齢とともに衰えていくように、脳機能も低下していきます。

避けては通れない老化をできるだけ食い止めるために、運動などで身体を健康に保てることは誰もが知るところです。

では、知力についても同じことが言えるのでしょうか?

脳の神経の繋がりは固定的で、一定の年齢に達した後はこうした繋がりを再編成させるのは不可能だと思っている人もいるかもしれません。

けれども、神経経路を新たに形成させる方法は存在します。その際に大切なのが「神経可塑性(neuroplasticity)」という概念です。

神経可塑性は、脳内の神経ネットワークが新しい情報や刺激に反応するかたちで、新たな連結を作り出す能力を意味します。

ジムに行ったり、自宅で好きなときにエクササイズしたりすることで、身体を健康に保ち、老化による衰えに歯止めをかけることができますが、脳のメンテナンスもそれに似ています。

脳内で新しい神経経路を形成させると、高齢になった後でも脳の機能を維持することができるのです。

神経可塑性とは?

神経可塑性とは、大まかに言うと、脳が情報を吸収し、新しく学習するプロセスです。

これは絶え間なく続いているプロセスですが、幼児期における「発達の可塑性」として知られる段階から始まっています。

この段階では、ニューロンが枝分かれしてシナプスが形成されるのに伴って、脳内で新しい経路がつくられています。

百科事典ブリタニカによると、この段階では、形成されたシナプスがすべて同等というわけではないようです。

ほかと比べてあまり有益ではないと判断されたシナプスの多くは、脳によって少しずつ除去されていきます。その一方で、適切であれば強化されていきます。

しかし成人の脳について言えば、神経経路の一部は固定されて変化しにくくなり、そうでないものは可塑性を維持します。

新しい結びつきを構築できる適応力を持ったこれらの経路こそが、神経可塑性の柱として残ります

ブリタニカでは次にように説明されています

一部の神経機能は、脳の特定の局部的な領域において固定されているように見えるが、一部の神経ネットワークはモジュール性を示している。

つまり、特定の機能を実現しながらも、通常の機能とは離れた、自らを再編成する能力も保持している

従って神経可塑性とは、一般的に複雑で多くの側面を持つ、基本的な脳の特性と考えられる。

神経可塑性はとりわけ複雑な現象であり、研究者たちはその解明に熱心に取り組んでいます。

そして、科学者たちが神経可塑性の概念を研究する1つの手段として目を向けているのが、病気や脳損傷です。

スタンフォード大学の研究によると、脳は、ケガや病気によって損傷を受けても自然と再編成されることがわかっているようです。

不活発である、またはほかの目的に使われている既存の神経経路が、変性して失われた機能を引き継ぎ、それを実行できることが示されています。

また、成人の脳が再編成されるときには、新たな神経経路も形成されることが証明されています。

ユタ大学の研究によると、人間が何か新しいことを学ぶとき、脳は化学的・構造的・機能的な形で反応しているのだそうです。

新しいスキルを身につけ、それに磨きをかける努力を重ねると、より大きな構造的・機能的な変化が生じます。

けれども、新しいことを始めたばかりの段階であっても、脳内では小さな化学的変化が起こるのです。

神経可塑性を促すもの①:運動

神経可塑性を促すうえでまずおすすめしたいのは、皮肉かもしれませんが身体を動かして健康を維持することです。運動と優れた認知機能には関連性があることが多くの研究で示されています。

心理学ジャーナル「Frontiers of Psychology」で発表された2018年の研究では、次のように指摘されています。

(運動は)脳内の構造的・機能的な変化を誘発する優れた遺伝子モジュレーターであり、認知機能とウェルビーイング(心身の健康と幸福)の両方に大きなメリットを及ぼすします

それ以外にも、加齢によって生じるさまざまな神経学的兆候に対して、運動が優れた防御的効果を発揮することがほかの研究から明らかになっています。

神経科学者のArthur Kramer氏は2008年、運動と神経可塑性の関係を調べ、脳の神経経路がより多く形成されていると、次のような可能性があると結論づけています。

年齢とともに発生率が高まる脳卒中やアルツハイマー病、落下による頭部損傷などに対応できるようになる。

神経可塑性を促すもの②:問題解決

問題の解決に取り組むと、脳は刺激を受けます。ですから、未知の世界に思い切って挑戦し、脳に対して頻繁に刺激を与えているのであればメリットが得られるでしょう。

毎日か、1週間に数回の頻度でパズルに取り組むと、神経経路を活性化し続けられることが研究で明らかになっています。クロスワードパズル数独も効果があるようです。

オハイオ州立大学の神経科学者Douglas Scharre氏は2020年7月、ニュースメディア「US News and World Report」で次のように説明しています

パズルやゲームをすると、特に目新しい要素を伴うものであればなおさら、推理力や言語、論理、視覚、注意力、柔軟性を司る脳の重要な部位が活性化され、刺激を受けます

これは新しい言語を学ぶ場合にも当てはまります。言語は幼いときの方が容易に身につきますが、それは脳が極めて重要な神経経路をまだ構築している最中だからです。

それでもやはり、新しい言語の理解に取り組むことには、長い目で見ると脳の健康に大きな利点があり、年齢は関係ありません

だからといって、フランス語のレッスンに通う必要はありません。Scharre氏によると、読んだり書いたりすることも認知症を予防するうえで効果的であることがわかっているそうです。

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けれども、何にも増して大切なのは大人になってからも新たな趣味に挑戦することかもしれません。

新しいことを学んで自分の知らない分野に身を置くことが、神経可塑性、ひいては脳の健康にいちばん重要なのです。

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Source: Britannica, HOPES(1, 2, 3), Accelerate, NCBI, Greater Good, Wiley Online Library, US News, Live Science

Sam Blum - Lifehacker US[原文

訳:遠藤康子/ガリレオ

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