連載
特集
カテゴリー
タグ
メディア

印南敦史の「毎日書評」

カーネギーの名著「人を動かす」が人間関係に劇的な変化をもたらすわけ

author 印南敦史
カーネギーの名著「人を動かす」が人間関係に劇的な変化をもたらすわけ
Photo: 印南敦史

この本は大勢の人の経験則に基づく画期的な著作である。私が提唱している人間関係の原則は単なる理論や推論ではない。

これは実際に魔法のような効果を発揮する。信じられないかもしれないが、この原理を日常生活に応用すれば、多くの人の人生に劇的な変化が起こる。(「序文」より)

超訳 カーネギー 人を動かす エッセンシャル版』(デール・カーネギー 著、弓場隆 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2018年に刊行された『超訳 カーネギー 人を動かす』を加筆訂正し、再編集した“文庫エッセンシャル版”。

多大な影響力を持つアメリカの著述家、教育者、実業家である著者が生み出した原著の『人を動かす』は、世界中で1000万人以上に読み継がれている自己啓発の金字塔として有名です。

本書はそのエッセンスを、“超訳”としてコンパクトにまとめているわけです。ちなみに超訳とは、意訳をさらに洗練させ、読みやすさを際立たせた翻訳のスタイル。

そのためときには原文とは異なる表現が用いられることもあるわけですが、原著のエッセンスを効率よく吸収するには最適なフォーマットであるともいえます。

人との接し方の基本に始まり、人に好かれる方法、敵を味方に変える方法、果ては円満な家庭生活を送る方法など、テーマも多彩。

きょうは3「自分の考えを相手に受け入れてもらう方法」のなかから、「議論」についてのいくつかの考え方を抜き出してみたいと思います。

議論に勝つことはできない

著者が子どものころから議論好きだったことは有名な話。大学ではディベートに熱中し、ニューヨークに出てからはディベートの仕方を教えるようにもなりました。

以来、数えきれないほどの議論を重ねてきたわけですが、その結果、「議論は避けることがもっとも利口な方法だ」という結論に達したのだとか。

九割の確率で、議論は双方が自説に固執するかたちで終わる。議論をすると、ほとんどの人は自分が正しいと思いたがるからだ。(88ページより)

ゆえに、議論に勝つことはできないという考え方。もし自分が負けたとしたら自分の負けだし、たとえ勝ったとしても、それはそれで自分の負けになるのだといいます。

なぜなのでしょうか? 答えを見つけ出すために、「議論をして相手を完膚なきまでに叩きのめしたらどうなるか」を考えてみましょう。

その場合、勝った自分は当然のことながら気分がよくなるに違いありません。しかし、相手はどうでしょう?

相手を議論で叩きのめしたということは、相手をおとしめ、相手の大切なプライドを傷つけてしまったということでもあります。そのため相手はこちらの勝利を祝う気にはなれず、恨みだけを残すことになります。

したがって、本当の意味で「議論に勝つ」ことはできないというわけです。(88ページ)

議論を避ける

人間関係の達人と言われるベンジャミン・フランクリンは、こう言った。

「もし議論をし、反論をしたら、場合によっては勝利を収めることもあるだろう。だが、それは無意味な勝利である。なぜなら、相手の好意を得ることは到底できないからだ」(89ページより)

重要なのは、相手を理論的に打ち負かしたいのか、それとも相手の好意を得たいのか、どちらが大切かを考えてみること。

両方の願望が同時に実現することは、めったにないのです。(89ページより)

自分の正義を貫いても意味がない

ある新聞に、次のような詩が掲載されていたそうです。

議論の名人ウィリアム・ジェイ、ここに眠る。 故人は自分なりの正義を貫いて死んでいった。 しかし、どんなに正しくても、むなしさだけが残る。 (90ページより)

たしかに、自分の言い分が絶対的に正しいというケースは往々にしてあるでしょう。とはいえ、「相手の意見を変える」ことに関しては、おそらく努力は報われないということです。(90ページより)

議論ではなにも解決しない

財務長官を務めたこともある大物政治家のウィリアム・マッカドゥーは、政界で数十年にわたって活動してきたのち、「無知な人間を議論によって打ち負かすことは不可能だと分かった」といったそうです。

しかし著者は経験上、知能指数は関係ないと考えているのだといいます。理由は、すべての人間を議論によって心変わりさせることは、まず不可能だから。(91ページより)

議論するよりも思いやりを持つ

著者はここで、「憎しみを終わらせるには憎しみではなく愛が必要だ」というブッダのことばを引き合いに出しています。

また、「誤解を終わらせるには議論ではなく思いやりが必要だ」とも主張しています。

そのうえで、「議論をして相手を打ち負かそうとするのではなく、相手に共感し、理解を示すだけの思いやりを保とうではないか」と読者に訴えてもいます。

たしかに、これは重要な考え方なのではないでしょうか?(94ページより)

1項目1ページでコンパクトにまとめられているため、気軽に読めるところが本書の魅力。

文庫サイズなので、バッグに入れておいて空き時間に目を通すこともできます。世界的に支持される名著への入り口として、気軽に活用してみてはいかがでしょうか?

あわせて読みたい

優劣コンプレックスは不要。人生を豊かにする2つの考え方

HSPとは違う? 明るく社交的なのに繊細な「かくれ繊細さん」とは?

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

swiper-button-prev
swiper-button-next