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社員が自主的に給与カット コロナ禍を乗り越えたリーダーシップとは

社員が自主的に給与カット コロナ禍を乗り越えたリーダーシップとは
Image: GettyImages

2020年の4月にこちらの記事(全社員の年収を760万円に大幅アップしたCEOが語る、4年後の驚きの変化)で紹介した、シアトルのクレジットカード決済代行会社「Gravity」。

2015年に全社員の給与を最低7万ドルに引き上げ、CEOのダン・プライスさんも自身の年収を7万ドルに引き下げたことで話題になりました。

コロナ禍で経営不振に。すると社員から給与カットの申し出が

確実に事業を拡大し収益を上げていた同社ですが、コロナ禍でどうなったのか、興味ありませんか?

2020年3月半ばに、アメリカでは自宅隔離・在宅勤務が指示されました。それと同時にGravityの収益は急下降。同社の顧客の大部分はレストランなどの中小企業だったからです。

3月19日、ダンさんはZoomで約200人の全社員に向けて会社の厳しい状況を説明しました。その後、社員ひとりひとりと面談すると、「給与を減らしていい」と自主的に申し出る人が続出。半減でもいいという人も何十人もおり、「無給でもいい」と言った社員までいたそうです。

その言葉に勇気づけられたダンさんは、「年収10万ドル以下の社員のカット率は30パーセントまで」「どの社員もカット率は50パーセントを超えない」と決めました。

顧客の事業回復も支援

また、同時に顧客の支援にも着手しました。顧客の事業回復は同社の回復に直結していたからです。

そのアイデアも社員から生まれたそうです。たとえば、レストランの顧客にはオンライン注文システムの設置、獣医の顧客にはモバイルペイの設定などを提案、実現の手助けをしました。

コロナ禍で収益が半減となったGravityでしたが、会社が一丸となって対処することにより、1人も解雇することなく収益は戻り、夏には給与は元に戻され、カット分も支払われたそうです。

競合他社とは真逆の動きだった

Gravityの動きは、人員削減や、顧客への手数料アップなどの対策を取って生き残ろうとした競合他社とは正反対のものでした。

他社と同じような方向に進まなかったのは、ダンさんが、自分が5年前に決断した流れを逆行させてしまうと考えたからです。そして、社員全員の貢献と協力、理解がありました。

社員のウェルビーイングを大切にしたリーダー。そして、困難な状況でリーダーに応え、顧客を支援した社員たち。そこに、同社のマネジメントと社員と顧客関係の健全さと信頼が表れています。

今求められるのは「奉仕型」のリーダー

こちらの記事「優れたリーダーとそうでないリーダーを分ける3つの違い」では、優れたリーダーは「チームの奉仕に力を尽くす」「従業員を人として大切にする」「愛と思いやりで成功に導く」の3点があると述べられています。

CEOだからといってトップダウン型のマネジメントをするのではなく、全社員がベストの状態で働けるようにニーズを満たし、社員に寄り添い、彼らの成功のために尽力する奉仕型のリーダー、これこそが今必要とされる優れたリーダーシップではないでしょうか。

ダンさんは、まさしくこの3つの違いを実践し続け、会社・社員・顧客の成功につなげているリーダーだといえるでしょう。

最低年収を7万ドルに上げたのもその一環ですが、金銭的なニーズを満たしただけではなく、日々奉仕型のリーダーであり続けたからこそ、全社員の自主的な協力を得て、コロナ禍を乗り越えられたのでしょう。

ニューノーマルの働き方への希望

昨春以降、コロナ禍による倒産や失職などのニュースはアメリカでも報道され続けています。

Gravityが最低年収7万ドルを導入して話題になったのは、2015年のこと。当時は、社会主義的だとか、失敗必至の実験などと批判の声も上がっていました。

それから5年。社員と顧客のウェルビーイングを重視したダンさんのリーダーシップが、当社に関わる人たちにとってポジティブに機能し続けていることが、コロナ禍という未曾有の状況であらためて浮き彫りになりました。

リーダーのありかた次第で、会社はこれほど変わるのです。もはや既成概念が通用しないニューノーマルにはそんな働き方があってもいいのだと、Gravityのニュースは一筋の希望を投げかけてくれます。

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Source: Seattle Mag, Idaho Statesman, the Star

ぬえよしこ

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