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クレーム対応のプロが教える「損をしない伝え方」

クレーム対応のプロが教える「損をしない伝え方」
Photo: 印南敦史

損する言い方 得する言い方』(谷 厚志 著、日本実業出版社)の著者は、「クレーム・コンサルタント」として多くの企業研修に登壇してきたという人物。

研修後には「おかげでうまくいきました」と感謝される一方、「いわれた通りにやったのに、全然うまくいかなかった」とこぼす人もいたのだとか。同じ会場で同じカリキュラムを学んだにもかかわらず、なぜこうした違いが生まれるのでしょうか?

著者によればそれは、“人間性”の違いでクレーム対応の結果が変わるからなのだそうです。別の表現を用いるなら、“ことばの使い方=いいかた”が大きな原因になっているということ。

どんなことばを選ぶかは、その人の考え方次第で変わるもの。心のなかにあることがそのままことばになるため、いくら研修で学んだとしても最終的には人間性と生き様が現れる。すなわち、結果(アウトプット)が違ってくるというのです。

「注文した商品が約束の時間に届かないぞ!」というクレームに対して、「えっ! そんなこと“が”!?」と驚きを見せて、自分事としてお客様の気持ちに寄り添った“対応”をする人と、「えっ、そんなこと“で”?」と口にはしなくても、どこか他人事のように面倒そうに“処理”しようとする人とでは、お客様が抱く印象も大きく変わります。

世の中を見渡しても、ものすごい専門知識のある研究者や、社会的に成功されている起業家なのに、言い方が悪いために敵をつくり、結果的に損をしてしまう人がいます。(「プロローグ」より)

そこで本書では、誰とでも良好な人間関係をつくれるようになるための具体的な秘訣を紹介しているわけです。

きょうは第1章「言葉を変えると、人間関係は好転する」に注目してみましょう。

「できないです」という“否定のことば”を使わない

人の意見を否定したり、批判したりしてストレスを発散しようとする人はいるもの。しかし否定や批判をしたところで、その人の人生が好転することなどはありません。

人生の中で他人を否定したり批判したりすることは、コストパフォーマンスとして非効率で、いかに自分が損することになるかを意識するべきです。

そして、時間をムダにせず、毎日楽しく生きていくためには、“否定の言葉”を使って怒るのではなく、笑って過ごせるようなよい言葉を使うことが大切です。(18ページより)

たとえば接客の場面でクレームを最もいわれるのは、お客様に対して“否定のことば”を使ったしまったときなのだそうです。

代表的なものが、「それは厳しいですね」という“拒否することば”や、「無理だと思います」「できないです」という“拒絶することば”。

例を挙げましょう。

買ったスマホが故障したという場面では、「お急ぎかもしれませんが、2時間ほどお時間をいただかないと直らないです」という否定のことばを使ってしまうと、「2時間も待たされる」という印象を与えてしまい、お客様の不満をさらに募らせてしまうことになります。

そんなときに大切なのは、否定ではなく“肯定のことば”を使うこと。

「それはお困りですね。2時間ほどお時間をいただけましたら、お使いいただけるようになります」という表現にすると、印象はずいぶんよくなるはず。

お客様は“2時間待てば、使えるようになる”という前向きな気持ちになれるわけです。

肯定のことばを使う最大のメリットは、目の前の人を嫌な気持ちにさせなくてすむこと。もちろん、発言者の印象や評価も大きく変わることになるでしょう。

つまりコミュニケーションにおいては、自分の使うことばが相手をどんな気持ちにさせるのかを常に意識することが重要

自分ではなく、ことばの受けてである相手の気持ちを軸にして、ことばを慎重に選ぶ必要があるということです。(16ページより)

「嫌なヤツ」と敵対しない

ときには、嫌な人のことを悪くいいたくなることもあるでしょう。

しかし、自分が他人の悪口をいうと、周囲の人に嫌な気持ちを与えるだけでなく、その悪口を聞かされた人もその悪口をいうようになってしまうものだと著者は指摘しています。

他人のことを悪くいうと、「嫌いな人」ができることになります。しかも悪口をいい続けると、その人のことがどんどん嫌いになります。

とくに仕事の場で気をつけたいのは、上司や取引先のお客様など、日常的に顔を合わせることが多い人の悪口をいうこと。

たしかに悪口をいえば、一時的にはストレスを発散できるかもしれません。

とはいえ、その人に対してずっと「あいつは嫌なヤツだ」と感じる“イライラした状態”が続くことにもなるはず。それでは、息苦しい状態が続いてしまうだけです。

そんな息苦しさから解放されるためには、自分にとって嫌なヤツをなくす、あるいは少なくすることが重要。

そんなことはできそうもないと感じるかもしれませんが、そんな方のために著者は“嫌なヤツをなくす唯一の方法”を紹介しています。

それは、“この世に敵はいない”と考えるようにすることです。

例えば、上司からきつく叱られて「パワハラされた」と言うと、その上司のことを敵だと考えてしまいます。

この場合、“自分に非はなかったか?”という客観的な観点が抜け落ちていて、自分のことを悪く言う人や、自分を嫌な気持ちにさせる人だと一方的に“敵対視”しているのです。

でも、一般的な社会では、敵なんて存在しないのです。敵とみなして闘うべき存在があるとすれば、自分自身の負の感情です。

きつく叱られたときに、「自分の至らない点を教えてもらった」「早いうちに指摘してもらえてよかった」と言えるようになると、相手を敵対視することがなくなります。(37〜38ページより)

また、叱られたときに自分が上司をイライラさせていたことや、「上司にとって自分が嫌なヤツになっていたかもしれない」と気づけるかどうかも大きなポイントだといいます。

もちろんそれは、クレームや文句をいってきたお客や、取引先の嫌な部長なども同じ。

大切なのは、「自分は相手に対し、喜んでもらえるような仕事をしていたのだろうか?」と、“こちらの不手際で嫌な気持ちを相手に与えた”と考える視点を持つこと。

つまり、こちらがやるべきことをやっていないかもしれないのに、相手を嫌なヤツだと決めつけてイライラするのは筋違いなのです。

常連のお客ほど、また利用したいから“しっかりやってほしい”と考えてクレームを好意的に口にするものでもあります。

だとすればそれは、期待されている証拠でもあるということでもあるということです。(34ページより)

性格は変えられなくても、使うことばを意識的に変えていけば、人間関係に悩まされることも少しずつ減っていくと著者は主張しています。

そればかりか使うことばを変えれば、前向きな気持ちになれ、メンタルも強くなるというのです。

いいかた、伝え方で損をしているなと感じている方は、手にとってみてはいかがでしょうか?

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Source: 日本実業出版社

Photo: 印南敦史

印南敦史

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