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仕事を抱え込みがちな人に必須のスキル「巻込力」の身につけ方

仕事を抱え込みがちな人に必須のスキル「巻込力」の身につけ方
Photo: 印南敦史

本書のタイトルである『巻込力』(越川慎司 著、経済法令研究会)とは、「仕事の不安を取り除いて作業効率を高めるため、自分のコントロールできる範囲を広げる能力」

巻込力があれば、仕事をスムーズに回せるのだそうです。

著者は日本マイクロソフトに勤めていた経験の持ち主ですが、業務を進めるなかで日本の生産性の低さに直面したのだとか。

大切なのは、自分が「コントロールできる領域」内でスキルアップを図ること。

この領域を広げられる人が、社会に求められる人材だというのです。

では、どうすれば、自分が「コントロールできる領域」を広げることができるのか。

それは、周囲を巻き込むことです。

ひとりでできることには限界があります。ひとりで仕事はできません。

周囲に影響を与えながら、周囲と協同することで結果を出すことができます。(「はじめに」より)

そこで本書では、「周囲を巻き込むスキルの身につけ方」を紹介しているのです。

巻込力は、大別すると、時間管理や資料作成術などの業務スキルと、人を動かすコミュニケーションスキルに分けられるそう。そしてそれは、自分のスキルを活かすための基礎スキルでもあるのだとか。

コミュニケーションスキルによって関係が構築できていれば、無駄な時間が減り、仕事がスムーズに回るというわけです。

では、巻込力を身につけるためにはどうすればいいのでしょうか? 第2章「巻込力に必要な心構え」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

巻込力
巻込力

1,540円

「コントロールできる範囲」をコントロールする

変化の激しい現代においては、状況を踏まえ、「自分で考えて行動する」ことが求められます。

とはいえ世の中には、自分でコントロールできないことが数多くあるのも事実。

とはいえ、それは自分のコントロール外のことなので、そこに不平不満を漏らしたところで、なにかを変えることはできません。

むしろ大切なのは、自分がコントロールできる範囲を見分け、そこで勝負すること。

そして著者によれば、自分のコントロール範囲を見分けるためには、内円と外円の概念を持つことが重要なのだそうです。

自分でコントロールできる範囲は内側の円、コントロールできない範囲を外側の円と位置づけるのです。

エネルギーを費やしても効果が変わらなければ効率が悪いので、結果に影響を与えられる範囲にエネルギーを集中するのです。

これは、「エッセンシャル思考」や「レバレッジ思考」とも呼ばれ、時間やエネルギーの再配置によって結果を変えるという考え方です。(62ページより)

まずすべきは、現在の自分でコントロールできる範囲を抽出すること。

たとえば1週間を振り返って、自分がコントロールできる時間がどれくらいあったかを振り返ってみるわけです。

入社2年目から5年目くらいであれば、平均して週17%ほどの内円の時間(1週間37.5時間×0.17=約6.4時間)があるそう。

次にすべきは、この内円の範囲のことに対して内省(=自分から自分へのフィードバック)をし、改善すべき点を見つけ出すこと。そして、その改善点を次の行動に活かすべく「アクションリスト」としてまとめるわけです。

著者が代表を務める働き方改革のコンサルティング会社、クロスリバーの調査では、クライアント企業25社のなかで、人事評価トップ5%の20代社員は他の社員よりも振り返りの時間をとる頻度が8倍以上多いことがわかったのだといいます。

少なくとも2週間に1回は振り返りの時間を設け、次の行動に活かそうとしているということ。この「内省」と「改善アクションリストの実行」が、突出した成果を残すことにつながっていると考えられるのだとか。

なお、この調査結果を踏まえ、クライアント28社に対して1週間に1回「振り返りタイム」を設けてもらっているそうです。

毎週金曜日の午後3時に15分間だけ、会議や作業を入れない時間を確保してもらい、コーヒーを飲んだりお菓子をつまんだりしながら、1週間の作業を振り返って「成果につながったものとそうでないもの」を棚卸してもらっているというのです。

そこから得られる最大の効果は、「やめることをやめる」こと。がんばってつくった資料が使われなかったなど、「やっても意味がなかったこと」がわかると、今後はそれをやめる勇気が出てくるということです。

とくに若手社員は、こうすることで「ひとりでできる仕事の限界」も見えてくるもの。したがってそこは前向きに捉え、「ひとりでは大きな仕事をこなすことはできない」と割り切ることが大切なのです。そうすれば、「他者を巻き込んで、成果を残す」という方針に振り切ることができるようになるはずだから。

その結果、ひとりで作業を開始する前に上司や先輩からフィードバックをもらったり、自分が調べると3時間かかる作業を、詳しい人に5分で教えてもらうというような発想に切り替えることができるわけです。(60ページより)

「行動」は「量」がものをいう

人を巻き込んでいくためには、自らが率先して動くことによって周囲を触発し、周囲の行動を変えることが必要。このポジティブなサークルによって、チームの成果が生まれてくるからです。

なお、ここで著者は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のダニエル・キム教授が提唱した組織の成長モデルを紹介しています。

関係、思考、行動、結果の4つの質を高めることにより、組織全体が成長するというもの。この成長モデルは、個人の育成にも活用できるというのです。

若手時代で重要なのは質を高める順番です。最終的に「結果の質」を高めるわけですが、それに至る前に最も重視すべきなのは「行動の質」です。

ただし「行動の質」を追求するということは、質の良い行動だけをするという意味ではありません。

多くの行動を、より迅速に行い、経験を進化させることで、「行動の質」が高まるのです。(69ページより)

そしてポイントとなるのは、「行動の質」を高めるために行動の量を増やすこと。

若手時代のキャリア形成においては、偶然の出会いが大きな影響をもたらします。

そうした出会いを引き寄せるためにも、行動量を増やし、より多様な経験を積んでいくことが必要。そのプロセスの一環として、人脈を広げることも大きな意味を持つということです。

30代を越えると過去の成功体験や思い込みが働いてしまう(バイアスがかかる)ため、なかなか行動に移せなくなるもの。だからこそ若手時代は、「思考の質」を高めるよりも先に、まず行動の量と質を高めるチャンス。

「行動の量」を増やし、さらにその「行動の質」を振り返ること(振り返りタイムを週1回、15分間)によって「思考の質」が高まると、必ず結果はついてくるといいます。(68ページより)

社会の激しい変化に対応していくために必要なのは、自らが率先して動き出し、自らのスキルを発揮できる(コントロールできる)範囲を広げ、まわりのメンバーを触発して目標を達成していくこと。

そのため、巻込力が重要な意味を持つということです。コミュニケーションの可能性を高めるために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

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Source: 経済法令研究会

Photo: 印南敦史

印南敦史

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