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印南敦史の「毎日書評」

「快適な睡眠」に導く、デジタルとの付き合い方3つのポイント

author 印南敦史
「快適な睡眠」に導く、デジタルとの付き合い方3つのポイント
Photo: 印南敦史

睡眠は、私たちに健やかで活力に満ちた生活をプレゼントしてくれる最良の友。

Sleep,Sleep,Sleep』(クリスティアン・ベネディクト、ミンナ・トゥーンベリエル 著、鈴木ファストアーベント理恵 訳、サンマーク出版)の冒頭には、このように記されています。

睡眠学研究者であるクリスティアン・ベネディクト氏と、ジャーナリスト・作家のミンナ・トゥーンベリエル氏による共著。

睡眠について知りうるすべての興味深い新事実を、読者と共有することを狙いとしているのだそうです。

よい睡眠には、すばらしいメリットがある。

健康や朗らかな気持ちにつながるのみならず、2型糖尿病や肥満、認知症、うつ病などの病気の予防効果をもつ。

睡眠は賢さにも影響する。十分な睡眠をとっている人は、記憶力や集中力、創造的思考力が向上するため、学校や仕事で高い成果を出すことができる。

日中にどれだけ時間を費やしても解決できなかった問題の答えを、寝ている間に思いつくこともある。

「大事なことは一晩寝かせた方がいい」とは、よく言ったものである。

さらに付け加えるなら、質のよい睡眠をとったあとは、自分自身や他者の感情をよりよく理解し、整理分類できるようになる。

感情移入スキルや共感力が高まるのだ。(「はじめに 睡眠研究者が『今、知っていること』すべてをまとめた」より)

きょうは第1部「科学者がそろって『絶対寝るべき』という理由 自覚できないが『すごいこと』が起きている」のなかから、「人工の光」の弊害に焦点を当てた4章「『デジタル革命』で人間は熟睡を失った 『人工の光』が睡眠を破壊する」に注目してみたいと思います。

電子書籍と紙の本で「読後の眠り」が違う

よく指摘されるように、コンピュータやタブレット、スマートフォンの画面から発せられるブルーライトは健康上のリスクにつながるもの。

ブルーライトは太陽に光に似ているため、体内のメラトニン分泌がおくれ、それに伴って睡眠の時間が後ろにずれてしまうということのようです。

2015年にアメリカで行われた研究では、被験者に就寝前の4時間、読書をしてもらった。最初の5日間は紙の本を、後半の5日間は電子書籍リーダーで本を読むという実験である。

その結果、電子書籍リーダーでの読書のあとには、実際にメラトニンの分泌に遅れが確認された。

紙の書籍を読んだあとに比べ、実験参加者の入眠時間は遅くなり、夜に眠気を感じにくくなり、レム睡眠の時間が短くなり、起床時の疲労感も増加した。(100ページより)

また2016年にはノルウェーでも、就寝時刻の30分前に紙またはスマートフォンで読書をするという実験が行われたそう。

この際は、被験者の入眠潜時と睡眠時間に違いは生じなかったものの、スクリーン上で読んだあとは夜に睡眠圧を感じにくくなり、睡眠の前半で重要な役割を果たす深い睡眠が、それほど深まらなかったとのこと。

つまり夕方から夜にかけてブルーライトを浴びると、睡眠の質に支障をきたしかねないことが明らかになったわけです。(100ページより)

寝る2時間前に「スクリーン」をオフにする

中高生のお子さんをお持ちの方ならおわかりのとおり、特にティーンエイジャーはデジタル革命の影響に敏感。彼らの睡眠・覚醒リズムはもともと後ろにずれており、平均よりも深い時間に眠気を感じるものでもあります。

しかし日中に外で光を浴びないと、体は夜間にブルーライトを貪るように吸収することになります。そのため、睡眠・覚醒リズムはさらに崩れ、眠りにつく時間もますます遅くなるわけです。

それどころか、明け方まで起きていることも、彼らの間では珍しいことではないかもしれません。したがってティーンエイジャーにとっては、午前中に外に出て朝日を浴び、体内時計を調整することがとても重要だということになります。

もちろんスマートフォンは、就寝時刻のずっと前に電源を切っておくべき。睡眠研究者の多くが、少なくともベッドに入る2時間前には、画面のある機器のスイッチを切ることを推奨しているそうです。

とはいえ思春期の子どもたちは、親のそうした意見に耳を貸さないものでもあります。そこで、睡眠に問題が生じているティーンエイジャーには、ブルーライトをカットしてくれる特別なメガネを夜だけでもかけるよう説得したいと著者は提案しています。

なお、朝どうしても太陽の光を浴びられないという人には、午前中に昼光色ランプを使うという手も。

また、ブルーライトをカットするには、iPhoneのナイトシフト、Android端末のナイトモード、PC用のフリーソフトf.luxなど、画面の色温度を時間に合わせて自動的に調整してくれるアプリやソフトウェアも有効だといいます。(102ページより)

「SNS」が強力なストレス源になる

デジタル世界の成熟に伴って出現した、睡眠に影響を与えるもうひとつの要因があるそうです。

言うまでもなく、インスタグラム、スナップチャット、YouTube、TikTokなど、絶えず彼らの注意を奪う「ソーシャルメディア」。

人はソーシャルメディアに投稿したテキスト、ビデオ、画像に、できるだけ多くの「いいね!」をつけてもらうことによって承認欲求を満たそうとするもの。

逆にいえば、「いいね!」をもらえないと、自分には価値がないと感じてしまう可能性もあるわけです。

そのため、ソーシャルネットワーク上でなにか重要な、もしくは最新の出来事を見逃してしまうのではないかという不安から、常にスマートフォンをチェックしていないと落ち着かなくなってしまうのです。

取り残されることへの恐怖(Fear of missing out:FOMO)」に怯えているということ。

このような心理状態では、ストレスを強く感じ、それにともなってストレスホルモンの量も増える。

当然、睡眠にもマイナスの影響を及ぼす。

ストレスによって寝つきが悪くなり、夜中に頻繁に目を覚まし、体の再生に必要な深い眠りが不足するという問題を抱えることになる。(104ページより)

他人の投稿と十分に距離を保つことができず、「ソーシャルメディア上の情報はどれも投稿者の生活の一部を切り取っただけのもので、ひとつの人格が持つ多様な側面を映し出すものではない」ということを理解しきれなくなってしまうわけです。

これもまた、睡眠に関して意識しておくべき重要なポイントであるといえそうです。(103ページより)

「朝のうちに日光を浴び、明るい間にスポーツをし、夕食は少量にとどめ、スマートフォンはできるだけ手に取らない」というように、起きている間の睡眠衛生(睡眠に影響を与える生活習慣や行動)に気をつけることで、夜ぐっすりと眠れるようになるはずだと著者は記しています。

いわば睡眠は、覚醒時の行動を映し出す鏡のようなものだということ。だからこそ本書を参考にし、できることを実行して、生活習慣を改善したいところです。

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Source: サンマーク出版

Photo: 印南敦史

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