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閉塞感を打破。自分も他人も幸せにするアフリカの「ウブントゥ」の教え

閉塞感を打破。自分も他人も幸せにするアフリカの「ウブントゥ」の教え
Image: Shutterstock

私たちの多くは、「自助」、「競争」、「個人主義」がもてはやされる世界に生きています。

メディアは、長年の自助努力によって成功をつかみとった人々の姿を報じ、SNSでは、競争社会を勝ち抜いたインフルエンサーたちが満面の笑みを浮かべています。

一方で、こうした考え方が、終わりのない精神的な渇望やむなしさを生み出していると、気づきはじめている人も増えています。

欧米流の考え方と異なる「ウブントゥ」の教え

実は、徹底的な個人主義がよしとされているのは、欧米などの先進国が中心。

それ以外の、例えばアフリカ諸国では、「人と比べずに暮らしなさい。人と競わずに生きなさい。人とつながり、助けなさい」という正反対の考え方を教えられます。

それは、普遍的な絆を意味するアフリカの哲学用語「ウブントゥ」という言葉に集約されています。

日本人にはなじみない単語ですが、日々の生活を送って身に染みるそこはかとない閉塞感を打破するカギになるのではと、注目されつつあります。

そこで今回は、ウブントゥの入門書とも呼ぶべきウブントゥ 自分も人も幸せにする「アフリカ流14の知恵」』(パンローリング刊)から、そのエッセンスを紹介しましょう。

「もし、この人だったら?」と考える

本書の著者であるムンギ・エンゴマニさんは、南アフリカの出身。祖父はノーベル平和賞受賞歴のある人権活動家・神学者のデズモンド・ツツ大主教です。

ムンギさんは現在、ウブントゥを理想に掲げる英国ツツ財団の青年部パトロンを務めていますが、大学時代はシドニーに留学していました。

そこではシェアハウス暮らしをしていたのですが、ある日南アフリカの友人が遊びにきて、その家に泊まりました。

すると、友人のジュエリーがなくなってしまう事件が起こります。ムンギさんたちは、すぐにハウスメイトの1人に嫌疑をかけ、「怒りと裏切られた気分で頭がいっぱいに」なりました。

ところが…

すぐさま問いただすこともできたけど、母と話したことで、激しい思いも言葉もちょっぴり落ち着いた。

母は「直接話す必要はあるけれど、落ち着いてからでないとダメよ」とアドバイスしてくれた。

私は、出来事をその子の側から見る必要があったのだ。私たちはなかなかそういう時間を取らないし、このときの私も、慌てて話を進めるところだった。(本書58pより)

疑いのかかった女性を交えて話し合ったところ、彼女は自分が盗ったことを認めました。

しかし、その人は「自分の衝動が抑えられない症状や過食症に苦しんでいる」とも告白。ムンギさんは、怒りが別の感情へと変化するのを感じます。

そして、「慎重に話を進めることで、私たちは、すでに苦しんでいる人をさらに傷つけずにすんだ」と、胸をなでおろします。

ムンギさんに、このようなアドバイスをした母は、アパルトヘイトをじかに味わった世代。黒人差別をする白人を非難するかわりに、「私が白人でも、アパルトヘイトに立ち向かうだろうか?」と自問したそうです。

やがて、「同じ状況に置かれたら、自分ならどうする?」という思考が習慣化され、イヤなこと傷つくことがあるたびに、これが一番重要な問いになりました。

その考え方をムンギさんも受け継ぎ、誰かと対立関係に陥ったら、まずは相手の言い分と向き合うことをすすめています。

目を閉じて、この状況を相手がどう感じているか、思い描いてみるのだ。どんな出来事が積み重って、(たとえどんなに見当違いでも)今の考え方になり、(たとえどんなにひどいものでも)今の態度になったのだろう?

その人は、どうして慌てて結論を出すのだろう?

相手と同じような態度を取る自分を、想像できるだろうか?

―こんなふうに想像してみるだけでも、効果的なエクササイズになる。(本書66pより)

試練の際に強力な武器となるのは「希望」

ネルソン・マンデラは、実に27年もの歳月を刑務所の中で過ごしました。

母親や息子が死去しても葬儀へ出席することは許されず、外で重労働に服すときを除いて、狭い独房に閉じ込められていました。

彼は、妻に送った手紙の中で「覚えておいてほしい。たとえほかのすべてが失われても、希望は強力な武器になる」と記しています。

ムンギさんが、マンデラの手紙のこの部分を引用しているのは、「希望」という言葉が、ウブントゥを語るうえで重要なキーワードだからです。

マンデラほど過酷でないにしても、だれしも人生の途上で困難に直面します。その時に、思い起こすべき言葉は希望だと、ムンギさんは力説します。

「望む」という人間本来の資質をはぐくむのは、人生で大きな望みをかなえる効果的な手段だ。

どんな目標を目指すときも同じだが、試練は必ずある。誰の道も、スムーズにはいかない。決意が試されるのはそういうときだけど、希望を信じていれば、打たれ強くなる。(本書128pより)

とはいえ、訪れた試練が相当厳しいものであれば、希望よりも絶望に陥り、最後は自暴自棄と諦めに逃げたくもなるでしょう。

そんな場合にも解決策はあると、ムンギさんは6つの方法を挙げています。例えば「目標を設定する」。最初は小さな目標を定め、徐々に大きな目標を立てていくというものです。

もし試練が失業であれば、(求人を探す前に)信頼できる人に連絡してアドバイスをもらうという小さな目標を作って実行します。

目標と実行を1つずつ積み重ねることで、希望が「どんどんふくらんでいく」と、ムンギさんは説きます。

ほかに「今この瞬間を生きる」「信念を持つ」などの方法があり、「メンタルの強さと希望をはぐくんでくれる」ことが期待できます。

許せない相手を許すには

本書には、デズモンド・ツツ平和センターに勤務していたイングリッドさんの話が載っています。

彼女は以前、4人の男に暴行を受け、殺されかけました。彼らは逮捕・収監されましたが、イングリッドさんの誰にも言えない憎しみが終息することはありませんでした。

しかし、あることがきっかけとなり、ムンギさんの祖父(ツツ大主教)に、自分の身に降りかかったことを告白します。

彼は、「あなたが怒りを感じるのは当然だよ」と前置きしつつ「事件を乗り越える努力をして、彼らを許してあげてほしい」と言いました。

イングリッドさんには到底受け入れがたい話でしたが、数カ月にわたる話し合いの末、刑務所制度の中で和解を促す活動をしている団体に連絡を取るというアドバイスを聞き入れます。

イングリッドさんは、その団体を通じて加害者と面会したことで、彼らに同情の念を、それから「許し」の気持ちを抱いたことに気づきます。

加害者も、極貧の町で親に虐待を受けるなど、ひどい子ども時代を送っていたのです。

イングリッドさんはムンギさんに「あのとき荷物を手放したことで、残りの人生の旅が、はるかに身軽で、また楽しめるものになったのよ」と打ち明けました。

アフリカには「許すが勝ち」ということわざがあるそうです。

また、ツツ大主教は「許しのないところに未来はない」と言いました。

そして、ムンギさんは、許すための5つのステップを記しています。その1つが「許すことのあらゆるメリットを考えよう」です。

許せば、身体が楽になるだろうか?

他人にされたことをあれこれ考えなくなって、別のことを考える余裕ができるだろうか?

怒りを手放せば、今より幸せになれる?

「許しの道を選ぶべきだ」という自信が持てたら、そろそろ次の段階に進もう。(本書169pより)

家庭や職場の対人関係がこじれて、相手を許せないと思ったら、上のように考えてはいかがでしょうか。

本書にある他のステップも合わせて試してみることで、許せないという気持ちがほぐれていくはずです。


このように本書には、欧米流の人間関係術とは視点の異なる14の貴重な知恵が盛り込まれています。

「人間関係で幸せを感じられない」と思っている方には、特におすすめしたい1冊です。

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Image: Shutterstock

鈴木拓也

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