
子育てと仕事を両立させている人ほど、自分のことは後回しになりがち。
やっと自分の時間を作っても、利己的だと批判されたり、罪悪感を感じて自分自身のケアを結局あきらめてしまうかもしれません。
最近の研究(英文)によると、子育て中の親の75%近くが、セルフケアにもっと時間を使いたいと思っており、そしてその1/3がセルフケアを優先すると罪悪感を感じることを認めています。
また、アメリカ人の半数以上が家庭での日々の役割を果たすことで燃え尽き症候群になっているように感じています。
ですから、働く親が、家庭と仕事を両立させるために「必要な大変な要件を満たせない」と感じるのも、どちらか一方を優先しても常に「罪悪感からは逃れられない」と感じるのも不思議はありません。
筆者は、シニアリーダー(多くが子育て中の親御さんです)のエグゼクティブコーチであり、自分自身も新生児を育てながら働く親でもあります。
そんな私から、罪悪感を感じずにセルフケアをすることが、公私にわたり成功するために必要である理由を4つほど説明したいと思います。
1. リーダーの立場にある人こそセルフケアが必要
多くの親は、十分な睡眠を取る、運動する、友人と会う、1人の時間を作り充電するといった必要なセルフケアのニーズ(英文)を後回しにして自分以外の人間の面倒を見ることを優先しています。
しかし、それが職場のリーダーとしての能力に関して危険なメッセージを発してしまう可能性があります。
すべて自分でしなければ気がすまず、山ほどすることがあるのに戦略的に行動できない人間だという印象を与えてしまうからです。
私のクライアントに、まさにそのケースに該当する人がいました。そのクライアントは、Fortune社のマーケティングディレクターを務めていましたが、副社長に昇進することに必死だったので、家族のために時間を割いてきませんでした。
誰よりも早くオフィスに来て誰よりも遅くまで残っており、いつでも連絡がついて対応できることから、初めのうちはシニアリーダーたちに好かれました。
しかし、無数の要求に「NO」と言えなかったせいで、結果的にいらだちに苛まれる直属の部下たちの仕事が増えました。
彼は会社のニーズ(英文)を家族や自分自身より優先すると決めたことで昇進が保証されると考えていましたが、残念ながらその戦略は裏目に。
会社の幹部は彼に対して個人的には好感を抱きましたが、より高い管理職のポジションに昇進させないことに決めました。
なぜなら彼は、「戦略的なリーダー」でなく「仕事を自分でする人」という評判になり、雑務から脱して、一貫性のあるアジェンダをチームと常に共有しながらチームに任せることができないと思われたから。
他のことを犠牲にしてでも自分の時間を作ろうと意図的に決心すると、家族や同僚はショックを受けるかもしれません。
しかし、そうすることで、リーダーシップを示し、本当に大切で影響力の大きい活動を優先する能力があることを示すことができます。
2. イライラが減り、前向きな思考になれる
最近の調査によると、働く親の78%が実際にキャリアと私生活を天秤にかける(英文/PDF)経験をしているそう。
ほとんどの人が仕事や家庭の時間を割いて自分の時間を作ることは不可能だという思い込みに囚われていて当然かもしれません。
しかし、自分の時間を持つと、クリエイティブになれたり斬新な考え方ができるようになり、妨げとなるものを見る目が変わるかもしれません。
Stewart Friedman氏とAlyssa Westring氏は共著『Parents Who Lead』で、「仕事を持つ親が人生のある領域で成功するには常に別の領域で犠牲を払う必要がある」というゼロサムの思い込みを克服する手助けをしています。
セルフケアへの意識を仕事、家族、コミュニティ(同書では「4方向の視点」と呼ばれています)と統合することにより、生活をうまく管理できるだけでなく、最終的には成功にもつながります。
たとえば、自然の中でランニングすることが大好きな人が、より健康的になりストレスを軽減したいという理由で、ついに平日にランニングすることにコミットしたとします。
以前は、1時間程度のチームミーティングをスケジュールから消す勇気はなかった(英文)し、もしそうして浮いた時間ができても、その時間は家庭のために使わないと罪悪感を覚えていました。
しかし今度は、より広い視野で物事の相関関係を意識しながら考えることで、生活の別のあらゆる側面を通じてセルフケアの潜在的な利点を発見することにしました。
考え方を新たにすれば、ランニングの時間を取ると、頭がクリアになって、仕事のことを戦略的に考えられるようになることに気づきます。
また、チームに必要な余白をたっぷりと与えて、自分がいないときはチームがしっかりやってくれるはずだという信頼を示すことになります。
さらに、毎日ランニングすると、家でイライラすることが減り、子どももあなたともっと楽しく過ごせるようになります。言うまでもなく、健康を保ち、生活に境界線を引くお手本を子どもに示すことになります。
また、研究によれば、職場でチームをマイクロマネジメントするより、権限と裁量(英文)を使いこなせる母親の方が、子どもの精神衛生が健全であることがわかっています。
最後に、その浮いた時間を運動に使うと、気持ちが元気になり、ボランティア活動やネットワークを広げるなど、コミュニティに参加する意欲が高まることに気づくでしょう。
この「4方向の見方」を試してみた働く親たちは、セルフケアをすることで、生活のすべての側面がお互いを犠牲にすることなく調和するクリエイティブな方法が育まれることに気づきます。
結果的に、キャリア(17%)、家庭生活(31%)、個人の幸福(54%)の満足度が大幅に向上しました。
3. 頑張り過ぎは、人の心を傷つけることもある
自分を犠牲にして他人の役に立つことは、無私無欲の究極の行為のように見えるかもしれません。しかし、そうした行動を過信して周囲の人々の世話を焼き過ぎると、思わぬ害が生じることがあります。
私がコーチングしたJaneさんは、企業のリーダーとして成功していましたが、複雑な仕事を管理しながら、子どもの日々の活動の準備をするためのToDoリストにいっぱいいっぱいになっていました。
夫が、もっとシッターに仕事を頼んだり、家族のイベントを減らすことを考えるようすすめても、彼女は、「人に頼むなんてダメ! 子どもたちは私でなくちゃダメなの。他人に育ててもらうために、この子たちを産んだわけじゃないんだから」と頑なに応じませんでした。
Janeさんの「今この瞬間を大切にする親」でいようとする献身は称賛に値するものでしたが、家庭の雰囲気がピリピリする原因にもなりました。その悪影響は夫だけでなく、ストレス過剰になった彼女に怒鳴られる子どもたちにも及びました。
彼女は結局、仕事をいくつか断ることも、他人に助けてもらうこともしなかったので、愛する人たちとの関係が密になるどころか、逆に、対立が生じて遠ざけることになり、事態を悪化させてしまいました。
4.仕事のプロらしい身なりや外見を保てる
セルフケアは仕事と子育てを両立する人が真っ先に犠牲にすることのように思えるかもしれませんが、セルフケアをないがしろにするとキャリアの可能性を損なう可能性があります。
多くの働く親、特に乳幼児を抱える親は、家庭で日々のニーズをこなすだけでも大変なので、オフィスで周囲にどのような印象を与えているか気づかないかもしれません。
私のコーチングを受けたクライアントの1人は、長男が誕生してから数年は、いつも夜ふかしして睡眠不足になる夜が多かったせいで、身なりに気を遣うのをやめたことに気づきました。
彼は服装がだらしなく疲れているように見え、かつての管理職としての存在感を無くしていました。
安全な距離を取りながらのコーチングを通じて、彼の身なりや外見が職場で周囲が彼を見る目に及ぼす影響について話し合うことができました。
そして、クローゼットを少しアップグレードして、ボディーランゲージ関連の習慣を多少変えることで、彼は家庭での子育てのプレッシャーの舵をとりながら、キャリアで成功する軌道に戻ることができました。
今ほど働く親がストレスを感じているときはありません。周知の事実です。
最近のある研究で、忙しいスケジュールのために年に平均227回も食事をせずにすませても、1日あたり32分しか自由な時間が持てないことがわかっています。
これほどのストレスにさらされていても、家族も同僚も全員幸せにしようとしていて、やっと自分のための時間ができると罪悪感に苦しむのかもしれません。
しかし、まず自分を大切にすることが、他人のためになるだけでなく、自分の生活やキャリアや家族と過ごす時間を最適化するためにも必要であることを忘れないでください。
あわせて読みたい
Image: Gettyimages
Source: Kelton,Motherly(PDF),HBR
Originally published by Fast Company [原文]
Copyright © 2020 Mansueto Ventures LLC.
訳:春野ユリ
ランキング
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5