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コーチングを育児に応用。子どもの「やりたい」を引き出すには?

コーチングを育児に応用。子どもの「やりたい」を引き出すには?
Photo: 印南敦史

きょうご紹介したいのは、『子どもの「やりたい」を引き出すコーチング』(あべまさい 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

2005年に刊行された『おかあさまのためのコーチング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を、タイトルを変更して復刊したものです。

著者は20年にわたり、企業の経営者などさまざまな職種のクライアントのコーチングを担当してきた実績を持つ人物。また、35歳を過ぎ、結婚後10年を経て第一子を出産したという経験の持ち主でもあります。

そんな著者によればコーチングとは、「相手の自発的な行動を促すコミュニケーションのスキル」であり、その原則は3つ。

①「双方向である」

②「個別的に、相手に合わせた関わりをする」

③「継続して関わる」

すなわち本書では、コーチングという観点から子育てについての持論を展開しているのです。

基本的な考え方をつづったPART 1「子どもを受け止めるスキル」に焦点を当ててみることにしましょう。

聞く

「コミュニケーション」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、「話すこと」かもしれません。

しかしコーチングにおいてコミュニケーションとは、まず「聞くこと」を意味するのだそうです。それはもちろん、子どもとの関係性においても大きな意味を持つわけです。

コーチは一つの原則を持って生きている生き物です。それは、「相手から返ってきたコミュニケーションは、自分が相手に伝えたコミュニケーションの結果である」という原則です。

つまり、相手からの反応はすべて自分が引き起こしたものだ、という立場を忘れずに関わりを持ち続けるのです。(35ページより)

もちろん、これはコーチの持つ関わりの原則であって、親の持つ原則ではないかもしれません。しかし、それを認めたうえで、著者はこうも主張するのです。

「子どもが話す前にあれこれ予測を働かせてしまうこと、それも最悪の結果を考えて準備してしまうこと、子どもの立場に立って考えることを忘れていること、自分の価値基準だけを大切にしがちな大人であることなどを自覚していれば、より子どもの心に寄り添った聞き方ができるのではないか」と。(32ページより)

見る

「エンジェル・アイ(天使の目)」とは、コーチや組織のリーダーがクライアントや部下の話を聞くときの、ひとつのモデルとなるような眼差しを表すことば。

「相手を無条件で受け入れる」と決めている人の、「目」の表情をいうそうです。(41ページより)

私もたまに意識して娘のことをエンジェル・アイで見ることがあります。

ふだんはほとんど忘れていて、思い出すと唐突にやります。

娘のぼやきとか他愛のない話を聞いているときに、これ以上優しくできないくらい優しい目でうなずいたりします。

娘は照れるのでしょうか、ちょっとどぎまぎして下を向いたり、妙な運動のように足をばたばた動かしたりしてしゃべり続けるのですが、概ねご機嫌になるようです。(42ページより)

なお、「見ること」に関して忘れてはならないことがもうひとつあり、それは自分に「エンジェル・アイ」を向けることなのだとか。

一例を挙げましょう。

子どもが熱を出したとき、親は「空気の悪いスーパーに私が連れて行ったからだ」というように自分を責めてしまうかもしれません。もちろんそれは悪いことではありませんし、自分の過ちを発見することは成長にもつながるでしょう。

しかし、ときには自分のことをエンジェル・アイで見てあげてもいいのではないかというのです。

著者はそれを「自分を大目に見る」と表現していますが、そんなスタンスは、たしかに大切なのではないでしょうか?

それは、子どもに向けたエンジェル・アイとも連動し、結果的には子どもに安心感を与えることにつながっていく可能性があるのですから。(40ページより)

ペーシング

「ペーシング」とは、“pacing”というスペルからも連想できるように「相手とペースを合わせる」こと。

相手の言うことや気持ちを受けとめる、もしそれが自分にとっては都合の悪いことであったとしても、できるだけの忍耐と思いやりを動員してしっかり受けとめる、そういうスキルです。(48ページより)

たとえば、あくまでも一例ではありますが、特定の誰かのことを殴りたいという感情が自分の内部にあったとします。

それを誰かに話したとき、真正面から否定されたり、正論を返されたりしたりしたら、どこにも逃げ道はなくなってしまうでしょう。

でも、もし誰かが「そうか、そういう気持ちなんだね」と理解してくれたとしたら、気持ちが楽になり、救われたような気持ちになれるはず。

殴りたいという気持ちと、実際に殴るという行為の間には大きな開きがあります。

実際に殴ったりはしないけれど、人はいろいろなことを頭の中で思うものです。

思ったことを持ち続けるのが重いとき、誰かに話し受け止めてもらうことで初めて、正しい判断、中立的な判断に自分から戻っていけるのだと思います。(81ページより)

繰り返しになりますが、ペーシングは「殴りたい」という気持ちを持っている人に対して、「そうだね、殴ろう」とけしかけるものではありません。

どんな行為にも賛成するということではなく、あくまでも焦点はその人の気持ち。

その人がまさにそう持っている、思いや気持ちを受け止めるスキルだということです。こちらがそれらをしっかり受け止めれば、相手のなかにも余裕が生まれることになります。

したがってその人は、こちらが意見の意見をも受け入れることができるようになるわけです。

もちろん同じことは、子どもとの関係性においても言えるのでしょう。(47ページより)

このPART 1と、続くPART 2「子どもに働きかけるスキル」を最初に読むと、コーチングというコミュニケーションスキル(技術)の全体像がつかめるだろうと著者は記しています。

とはいえ順番に読まなければならないわけではなく、どこからでも、興味のあるところから読んでみてもOK。

また、このスキルは人が2人いればどこでも使えるものであり、そのスキルを使う背景には、コーチング特有のコミュニケーションに関する考え方、態度、スタンスのようなものがあるのだそうです。

つまりは人と関わるにあたっての智慧が詰まっているということで、応用できる範囲は広そうです。

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

Photo: 印南敦史

印南敦史

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