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即戦力を育てる「スティッキー・ラーニング」を実践するための5つの方法

即戦力を育てる「スティッキー・ラーニング」を実践するための5つの方法
Photo: 印南敦史

たとえば、何度説明しても同じ失敗を繰り返してしまうとか、覚えようという姿勢が感じられないとか、あるいはすぐに辞めてしまうとかーー。

ケースはさまざまでしょうが、上司を悩ませる「残念な部下」はいるものです。

しかし「残念な部下」も、教え方次第では大きな戦力になると主張しているのは、『残念な部下を戦力にする方法』(坂井伸一郎著、フォレスト出版)の著者。

アスリートが競技者として成長し、競技成果を向上させるための座学トレーニング(アスリート座学)のプログラムを開発したり、そのプログラムをアスリートに届ける講師を発掘したり、ときには自身がアスリートの講師となるなど、幅広い活動を展開している人物です。

人材育成プログラムとして整理したノウハウを「Sticky Learning®」(2015年9月に商標登録)として提供開始。以後も実践と試行錯誤を繰り返しながら得た新たな知恵と手法を加味・更新し続け、現在に至っているのだそうです。

注目に値するのは、アスリート座学のための「スティッキー・ラーニング」が、ビジネスにも活用できるということ。

「新規の人材を採用する予算がないなか、“いまいる人材”をできる限り戦力にしたい」という企業からの要望を受け、アスリート座学のノウハウを企業若手人材向けに再構成した研修プログラムを開発。多くの企業や団体に提供し、高評を得ているというのです。

そんな「スティッキー・ラーニング」のポイントは、「絞って伝えて、反復させること」

当たり前なことのようにも思えますが、実際の現場では、「残念な部下」に対するコミュニケーションで、ここを踏まえていないケースが多いのだとか。つまり、そこを補うツールとして機能しているのです。

だとすれば、「スティッキー・ラーニング」についてもっと知りたいところではあります。

そこで第3章「学びを定着・持続させるメソッド『スティッキー・ラーニング』」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみたいと思います。

「スティッキー・ラーニング」とはなにか?

「スティッキー・ラーニング」の“sticky”とは、「ベタベタする」「ネバネバする」という意味の形容詞。「くっつく」を意味する動詞“stick”がもとになっています。

一方の“learning”は「学ぶこと、学習すること」「知識、学問」「学んだこと、学習項目」を意味するわけですが、心理学では「学習」の意味、すなわち「経験は条件づけによって起きる行動変容」という意味があるそうです。

つまり「スティッキー・ラーニング」を直訳すれば「ペタペタ頭に貼りつけていく学習法」ということになるわけです。(76ページより)

「スティッキー・ラーニング」のコンセプトと5つのエッセンス

そんな「スティッキー・ラーニング」の重要なコンセプトは、「新しい知識は、過去の経験と結びつけながら繰り返して体得できるよう、絞って伝えて反復させる」というもの。

そして、この重要なコンセプトから導き出した5つのエッセンスは次のようになるといいます。(77ページより)

① 私たちは、五感を通して情報を受け取る。

② 新しい情報は、既存の知識と結びつくことで記憶される。

③ 感情を伴う記憶は、長く持続する。

④ 伝えるエッセンスは、絞り込む。

⑤ 繰り返し脳に刺激を与えることで、記憶が定着していく。

(78ページより)

「スティッキー・ラーニング」を実践するための5つの方法

1. 五感を刺激する

五感は人間の脳に大きく影響を与えるものですが、まずは視覚を刺激するのがいちばん効果的

視覚を通じて得た情報は、聴覚を通じて得た情報より伝わりやすく、イメージから伝わる情報は、文字情報より6000倍速く処理されるといわれているのだそうです。(97ページより)

2. 既存の記憶と結びつける

新しい知識をまっさらな状態で覚えさせようとするのではなく、既存の知識との関連づけをできるだけ心がけたいと著者はいいます。

なぜなら新しい情報は、古い知識と関連づけることによって、記憶としてより長く定着するから。

脳は新しい情報が入ってくると、以前に符号化され、長期記憶に保存された情報や経験のなかから似たような記憶回路を見つけようとするもの。新しく記憶回路をつくるよりも、既存の回路を利用したがるからなのだそうです。

古い知識がないときは、新しい情報に関連する経験などと結びつけることが大切。

仮に「残念な部下」が新情報と既存情報をうまく結びつけられなかったのであれば、たとえ話や具体的な例示をするなどして、橋渡し役になればいいのです。(102ページより)

3. 感情記憶を重視する

感情記憶は、他のどの種類の記憶よりも勝るといいます。記憶に伴う感情が強ければ強いほど、記憶は長い時間にわたって定着するため、思い出すのも容易だというのです。

感情記憶を呼び起こすために有効なのは、「個人的な体験」「ストーリー」「音楽」「感情移入できる一般的な経験や出来事」など。

たとえば「1970年生まれ」だということを伝える場合、「1970年生まれです」とだけ伝えるよりも、「大阪万博が開催された1970年生まれです」と、その年にあったエピソードに関連づけたりすれば、相手の記憶に残りやすくなるわけです。(107ページより)

4. コア・メッセージを繰り返す

部下を指導・教育する際には、いろいろなことを一度に詰め込まず、コア・メッセージ(軸となる事柄)を繰り返し伝えていくことが大切。

コア・メッセージは、句点「。」でつなげることを意識し、一文で7語までの長さ(短期記憶の容量以内)にして、深みがあり、業務内容にふさわしく、価値あるものにするよう努めます。(109ページより)

ホワイトボードやノートの使用などを通じて視覚にも同時に訴えれば、より印象に残すことが可能に。(108ページより)

5. 15分ルールを使いこなす

「15分ルール」を使って、関連性を示し興味を持たせることも重要。「スティッキー・ラーニング」では、15分という単位をひとつのユニットとして構成しているというのです。

15分ルールとは、長期記憶をより確実なものにするために、新しい情報を徐々に伝達し、15分以内にもう一度繰り返すこと。

「残念な部下」の注意を引きつける時間が長ければ長いほど、情報は長期記憶として保存される確率が高まるわけです。(110ページより)

現実問題として、「即戦力」「優秀な人材」を確保・採用するのは難しいものです。

だからこそ重要なのは、いまいる人材のレベルアップと、「そこそこの人材」を採用し、戦力として育て上げること。スティッキー・ラーニングを活用すれば、それが可能になるというのです。

しかもそれは部下の育成のみならず、さまざまな領域に応用できそうでもあります。興味のある方は、手に取ってみてはいかがでしょうか?

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Source: フォレスト出版

Photo: 印南敦史

印南敦史

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