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まずは聞く力が重要。上司が部下の話を聞くときに注意する3つのポイント

まずは聞く力が重要。上司が部下の話を聞くときに注意する3つのポイント
Photo: 印南敦史

仕事も人間関係も雑談もうまくいく 一流の聞く力』(本田 健 著、総合法令出版)の著者は「話し方研究所」の代表を務める人物ですが、最近は疑問に感じていることがあるのだそうです。

多くの人が興味を示すのは話し方であり、聞き方について「どうすればうまく聞けるのか」という疑問を抱く人が少ないこと。

しかし「聞き方」は、コミュニケーションにおける重要なポイントなのだとか。

一流の聞き手はコミュニケーションの場を創造します。話し手を刺激し、要求し、限られた時間でより多くの情報と意見を引き出します。

そして自分だけでなく、話し手にも充実感を提供するのです。(「はじめに」より)

コミュニケーションは、話し手と聞き手が目まぐるしく入れ替わるもの。どちらが話し手なのか聞き手なのか、線引きが難しいわけです。

言い換えればそれは、「聞き方は、話し方を学ぶことと同じくらい大切」だということ。著者のこの考え方には、大きく頷けるものがあるのではないでしょうか。

きょうは第5章「ビジネスシーンに役立つ! 聞き方の流儀」のなかから、「上司が部下の話を聞くときの3つのポイント」に焦点を当ててみたいと思います。

上司が部下の話を聞くときの3つのポイント

自分が上司だとしたら、部下の仕事の進捗の遅さが気になっているときには、どのように声をかけるでしょうか?

職場において望ましいのは、言うまでもなく、不安や恐怖を感じることなく発言できる状態。

逆にいえば、苛立った表情で「なんでできないかな?」「なにが問題なの?」などと聞いてしまったら、部下は心を開いてくれないわけです。

チームのパフォーマンスを上げるためには心理的安全性が重要で、これが阻害されると不安感が蔓延し、チームの生産性は落ちることに。

その結果、社員は、発言しづらい雰囲気の職場にはいたくないと思うようになるかもしれません。

では、上司が部下に話を聞くときには、どんな点に注目すればいいのでしょう? このことについて、著者は3つのポイントを挙げています。(138ページより)

1. 自分の考えを押しつけない

たとえば「こういうことだろ? だから遅れているんじゃないの?」ということばは、質問しているようにも感じられます。

ところが、部下にしてみればそれは押しつけ。原因まで上司が考え、それを口に出してしまったら、部下は素直に話すことができなくなってしまうわけです。

「なにかやりづらいことがあったら言ってみて」

「現状を教えてもらえるかな?」

まずはこのように、抵抗なく話せるような質問をして部下の発言を待つべき。

自分が発する質問に、相手はどんな印象を持つだろうかと疑問を持つことが大切だということです。(139ページより)

2. 不安と不満を聞き分ける

部下の相談内容には、不安と不満が入り混じっていることも少なくないもの。たとえば、部下が次のように相談してきたとしましょう。

「こちらの提出した試験データについて、今週中にクライアントの開発チームから連絡があるはずなんですが、届いていません。

セールス担当がクライアントを甘やかしているんでしょうか。期日に遅れてもいいと軽く見られているみたいです。マネージャーからも注意してください」

不満というより愚痴のようにも聞こえますが、多くの上司はこんなとき、「そうか、きょうが期日なのにまだなにも連絡がないんだね。困ったね。私からもメールしてみるよ」というように対応するのではないでしょうか?

しかし、この相談を分析してみると、2つの不安要素と2つの不満要素で構成されていることに気づくと著者はいうのです。

まず不満は、期日を守らないクライアントと、自分の会社の営業担当者に対して。そして不安は、返事がないと次のステップに進めないことと、直接顧客に催促するのには抵抗があるということ。

このように複数の要素が絡み合っている場合は、個別に解決していくとうまくいくもの。この場合であれば、最初に不安要素について確認するといいそうです。

「先方の開発チームから返事があったら、その次のステップの期日はいつになる? 担当の君から連絡したくないのには、なにか理由があるの?」

そして不安要素については、いくつかの対策を含めて返すべき。

「期日を守らないのが習慣化しちゃうと困るな。その点については、次回、ミーティングの際に先方のマネージャーに伝えておこう。うちのセールス担当にも一度聞いたほうがいいかな?」

このように、それぞれの要素を分けてヒアリングすれば、部下は自分の話を聞いてもらえたと実感できるわけです。(140ページより)

3. 毎回、白紙の気持ちで部下の意見を聞く

部下の報告を受けながら、次のようなセリフを返したことがある人は要注意だと著者は指摘しています。

「前にも同じようなことがあったよね」

「いつもそんなこと言っているよね」

こうしたセリフは、上司が思っている以上に部下を身構えさせてしまうことに。そればかりか、がっかりした感情も与えてしまう可能性もあるはず。

その例として著者はここで、自身が部下から報告を受けたときの例を挙げています。

少し長いですが、ご紹介しましょう。

「今回の案件では、お客様が本当に知りたいのは、社員の本音であると考えています。しかしながら、先方が考えているアンケートでは本音が探れない可能性があるので、当社が窓口になってWEBでアンケートを取るプランにしています。そして……」

私は部下が喋っている途中で、 「ちょっと待ってくれる?」 と遮りました。

なぜなら以前、その部下はお客様の要望を勘違いしたことがあったからです。

お客様との打ち合わせに同行した際に、 「そのような話はしたことがないですが、なんのことですか?」 と言われたことがあるのです。

そのことを思い出して、 「彼の言っていることは本当だろうか。また勘違いして先走りしていないだろうか。お客様が望んでもいないことを提案しようとしているのでは?」 と疑ってしまったのです。

しかしそれを口に出しても、どうしようもありません。

「お客様のところのシステムではなく、WEBのアンケートフォームを使ってもらうとなれば、セキュリティ上の問題はないのかな? その辺りは確認済みかな?」 と別なことを聞きました。

「はい。iPadを全員に支給しているので、それを使えば大丈夫です」 結局、その案件は彼の提案通りに進めたことで受注することができました。

つまり、私が部下の話を遮ったときに頭のなかに浮かんだ懸念は、間違いだったということです。(143〜144ページより)

もし部下の意見を聞いているときに「以前君は先方の要望を勘違いしたことがあったよね。今回は本当に大丈夫かな?」と言っていたら、彼は提案に自信が持てなくなったかもしれないと著者。

もちろん部下の仕事ぶりを観察し、過去の事例を踏まえてあらゆる事態を想定することは上司として必要。しかし、思い込みをなくして白紙で聞いてみることも重要なのです。

過去に起きたときとの違いをよく聞き取り、懸念や不安、疑いを飲み込む度量が上司には必要で、それがあれば部下はついてくるということです。(142ページより)

本書は「よい聞き手」を上回る、「一流の聞き手」を目指すことを目的に描かれているそう。

聞き方の基本はもちろんのこと、聞き手が陥りやすい問題や、優れた聞き手が使う技術、創造的な返し方まで、バリエーション豊かな内容となっています。

そのため、「よい聞き手」になりたいという方には格好の一冊だといえます。

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Source: 総合法令出版

Photo: 印南敦史

印南敦史

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