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ヒット作を生み出し続ける出版社社長が明かす、仕事で大きな成果を出す秘訣

ヒット作を生み出し続ける出版社社長が明かす、仕事で大きな成果を出す秘訣
Image: ruangrit junkong/Shutterstock.com

「斜陽産業」といわれて久しい出版業界ですが、逆風に負けずヒット作を生み出し続けている出版社はあるものです。

その1社がサンマーク出版。業界がダウントレンドとなったここ25年の間に、ミリオンセラーを8冊、数十万部単位のベストセラーも多数刊行してきました。出版業界に身を置いている方なら、この実績は奇跡と思えるはずです。

社員50名弱の同社の舵取りを担ってきたのは、代表取締役社長の植木宣隆さんです。

辣腕編集者を経て、2002年に社長に就任。当初は、資金繰りに四苦八苦することもあったそうですが、電子出版や海外への翻訳出版など攻めの経営で、逆境を乗り越えました。

その植木さんが、自身の初めての著書として上梓したのが『思うことから、すべては始まる』です。

「サンマーク出版は、なぜヒットが生み出せるのか。どうやって人を育てているのか。その秘密を明らかにしてほしい」という、多方面からの声に応じて著したもので、出版のみならず、ものづくりに携わるすべての人に役立つ情報が盛り込まれています。

今回は、そのいくつかをご紹介しましょう。

「大ぼら吹き」で大きな目標を達成

サンマーク出版では、年の始めに年度方針発表会が行われ、その場で各社員による本年の目標宣言がなされます。

全員の前で発表する目標の内容は、絵空事や空想でもよく、「大ぼら吹き大会」と呼ばれています。

たとえば、「今年はミリオンセラーを出します」とか「20万部以上の本を2冊出します」というふうに。ただし、半年後と1年後に結果報告があるため、本気で達成しようという意気込みが試されます。

「売上1割増」のような現実味のある目標設定と、この「大ぼら」とでは、どのような違いがあるのでしょうか?

植木さんが説く「大ぼら」の大きな効用とは、過去の経験から、これくらいなら達成できるだろうという「限界意識」が取り除かれることにあるそうです。

人間は誰しも限界意識を持っています。勝手に持ってしまっている。

例えば、ノーベル賞の受賞者は、ノーベル賞を取った研究室から、次々に生まれるのだそうです。

どうしてそんなことが起こるのかというと、大して風采も上がらない、いつもいっしょに冗談を言い合っている同僚がノーベル賞を取ったりすると、「彼にできたのなら、オレにも取れるぞ」と思うからだそうです。限界意識が外れるのです。

(本書29~30ページより)

大半の出版社が「7000部、8000部出るのがやっと」と言うなか、サンマーク出版の15名いる編集者のほぼ全員が、20万部以上のベストセラーを出した実績があるそうです。

また、ある編集者は、出版企画書の冒頭に「100万部突破候補企画」と記し、さすがに植木さんも戸惑ったそうですが、見事に実現させました。

植木さん自身も、編集者時代に担当した『脳内革命』で、410万部という途轍もない記録を弾き出しています。「だから、ミリオンセラーくらい、自分たちでも作れるよ、とみんな絶対に考えていると思います」と植木さん。

植木さん自身が、社員の限界意識を取り払うための一役を担っているのかもしれません。

二番煎じをしないことの本当の意味

パズルのピースをあわせる人
Image: oatawa/Shutterstock.com

サンマーク出版の金科玉条の1つに「柳の下に金魚を放て」というのがあります。

「柳の下」と聞けば、「柳の下の2匹目のドジョウを狙う」ということわざを思い起こしますが、出版界には「ドジョウが6匹も7匹も潜んでいる」そうです。

つまり、どこかの出版社がヒット作を出すと、他社から似たような企画の本が次々と出てくるのです。

しかし、サンマーク出版は、2匹目以降のドジョウを狙うことはしないそうです。その理由として、「儲かったとしても、コンテンツの作り手として単純に、そんなことをやっていて本当に面白いのか」と植木さんは述べています。

そして、ドジョウの代わりに放つのは金魚。しかも、「色鮮やかで、見たこともない模様で人々を誘う金魚」でなければいけないとも。

植木さんは、二番煎じをしないもう1つの理由として、「そんなものでいくら結果を出しても、本当の意味での力にはなっていない」と挙げます。

本当に大事なのは「自分の強みをどこまで伸ばせるか」。自分の弱点を解消して並みのレベルになろうと頑張るより、1つの突出した強みを活かした方が、実社会で活躍できる可能性が広がると力説します。

平均的な発想で、そこそこ売れる本を作って稼げたところで、それは本質的なことかどうか。

もちろん稼げることは大事です。でも、それぞれの強みが最大化できるところで勝負したら、その100倍、500倍の結果が出せるかもしれない。

(本書56ページより)

弱みはあったらあったで、それは「上手に組織としてカバーする」方針とし、「生物多様性にあふれた会社」であることを目指す。続々とヒット作を生む源泉は、このあたりにありそうです。

「圧倒的な量」をこなすことの重要性

大きな実績を出すために、もう1つ重要なこととして、植木さんは「圧倒的な“量”は“質”へと転化する」という言葉を出しています。

「桁違いに多くの体験をすれば、目に見えないものが見えてくる」という表現もされていますが、これは出合った著者たちとの交流から実感したそうです。

たとえば、『これから10年 生き方の発見』の船井幸雄先生は、会社の前に立つだけで業績の良し悪しがわかり、『病気にならない生き方』の新谷弘実教授は、内視鏡を入れなくても目の前の人の腸の状態がわかると語ったそうです。

それは、何万社もの会社を指導し、何万人もの人の腸を診てきたという、その圧倒的な量の経験が、質的な次元へと昇華されていることを意味します。

本書では、稲盛和夫さんの著書『生き方』の担当編集者として、圧倒的な量から質への転化を象徴するような仕事をした、斎藤竜哉さんのエピソードが引き合いに出されています。

それは、稲盛さんの書いてこられた本を全部読むというのは当然のこととして、それ以外にも圧倒的な「量」を追いかけることでした。

稲盛さんは全国の経営者が集まる私塾「盛和塾」を主宰されていて、当時4000名以上の経営者が加入されていました。その盛和塾の会報が70冊近く、他の著作も入れると、段ボール1箱分くらいあったのです。

本の企画を練るにあたり、斎藤はホテルにカンヅメになって、この段ボール箱一杯の資料を何日もかけて全部読み込みました。

その後で、どういう本にするのかというイメージを固め、どういう文体で稲盛さんに書いてもらうのかということを練り、項目も出していったのです。

(本書162ページより)

まだ、稲盛さんに出版企画を打診していない段階で、この熱量です。

植木さんには、稲盛さんであれば、この取り組みのことを話さないでも「わかるに違いない」という確信がありました。稲盛さんも、「目に見えないものも、見える人」の1人だからです。

結果的に、稲盛さんは企画を快諾し、出版後「自分の代表作になった」とまで賛辞を送りました。

編集者の斎藤さんは、これより前にも詩人の坂村真民さんの詩集を刊行するために、圧倒的な量で勝負をかけ、成功に導いています。

なかなかヒット作が出せず苦しんだ時期もあったそうですが、量から質への転化をなしとげて、ベストセラーを連発する逸材へと生まれ変わったのです。


本書は、出版界ならではのエピソードはもちろん、業界を問わずビジネスパーソンに有用な知恵の宝庫です。

本が好きな人には、特におすすめしたい1冊だと思います。

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Image: ruangrit junkong, oatawa/Shutterstock.com

Source: サンマーク出版

鈴木拓也

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