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アドバイスには“ストーリー”が必要。生産性の専門家チャールズ・デュヒッグさんの仕事術

アドバイスには“ストーリー”が必要。生産性の専門家チャールズ・デュヒッグさんの仕事術
Image: Courtesy of Charles Duhigg

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。今回は著作活動やポッドキャストのホストとして活躍する生産性の専門家、チャールズ・デュヒッグさんの仕事術です。

世の中のアドバイスは、「実際には全然アドバイスになっていない」「少なくとも役に立つアドバイスではない」と思っている人がほとんどではないでしょうか。これは、最近私が生産性の専門家であるチャールズ・デュヒッグさんにしたインタビューの核心に触れるところかもしれません。

チャールズ・デュヒッグさんは、ベストセラー作家でありSlateの『How To!』というポッドキャストのホストでもあります。

このポッドキャストは、人生の問題を1つずつ解決することをミッションにしています。良いアドバイスとは、実行可能であり、人々の共感を呼び、人生を変えるようなアドバイスですが、明示的なガイダンスやインストラクションより、「ストーリー」と重要な関係があります。

デュヒッグさんによると、人生を向上させるアドバイスを有意義な方法で理解して自分のものにするためには、誰でも「ストーリー」が必要なのです。『How To!』の1周年を記念して、『The Power of Habit and Smarter Faster Better』の筆者から話を聞きました。

氏名:チャールズデュヒッグ

居住地:カリフォルニア州サンタクルーズ

現在の職業:著作者、ポッドキャストのホスト

現在のPC:MacBook Air

現在のスマホ:iPhone 11

仕事の仕方を一言で言うと:とにかく始めてみる

ストーリーに組み込まないと、本当のアドバイスにならない

――生産性について、出版されている著書で深く語られていないところを伺いたいのですが、それは難しいでしょうね…。

Smarter Faster Better』という本を書いて以来、ポッドキャストから興味深いことを学びました。

私は生産性に関して多くのことを知っていると思っていたのですが、この本を出版したところ、約8000~9000通の質問メールが来て、どの質問の答えも私の本に書いてあることばかりでした。

たとえば、「先延ばし」や「集中力」に関する質問をする人たちがいますが、答えはこの本に書いてあります。それで、私は「第3章を読んでください」とか「第2章に書いてあります」と答えていました。

すると、「ええ、その章は読みましたが、それでもよくわからないんです」と言われました。どうしてそうなるのか考えてみたところ、生産性のことに限らず、誰かに何らかのアドバイスをするときは、ストーリーに組み込んだアドバイスにしないと、本当のアドバイスにはならないということが最終的にわかりました。

そして、これこそが『How To!』というポッドキャストの存在意義です。

LifehackerやDavid Allenさんのウェブサイトを読んで、「なるほど。そうすればいいんだ」と思うでしょう。そういうのが本物のアドバイスだと思います。

しかし、ストーリーが無くて、「○○をしなさい」と言われても、具体的に何をすべきかわからず、すべきことを見つけるプロセスもわからないなら、そのアドバイスはほとんどの人の心に残りません。

つまり、基本的に、正しいアドバイスの仕方とは、何が正解かを見つけ、人々の生活に実際に応用できるストーリーに組み込む形でその答えを提供することだという結論に至りました。

誰かが変わっていくのを見たり、問題を抱えている人が専門家から学び、解決策を思いつくところを見ると、そのアドバイスははるかに力を持ち実用的になります。

「適切なアドバイス」を得るだけでは不十分

――実例を挙げていただけますか?

How to Lose 155 Pounds Happily』というエピソードをポッドキャストで公開しました。ある女性は、胃のバイパス手術を受けて155ポンド(約70kg)も痩せたのに、相変わらずとても不幸でした。

それで、私たちはその女性の悩みを解決するために『Brittany Runs a Marathon』という映画に出てくるBrittanyさんを登場させました。Brittanyさんもかなり減量していて、減量してから自分の身に起こったことを話してくれました。

Brittanyさんの話は天地がひっくり返るほど目新しいものではありません。でも、完全に地に足がついたストーリーとして語っています。「ああ、なるほどね。自分を愛すべきだという意味がやっとわかった」と思わせてくれました。実にパワフルなエピソードでした。

これと対照的な例は、俳優のRyan Reynoldsさんのトレーナーが出演する『How to Look Like a Superhero』というエピソードです。

良いエピソードでしたが、この男性はあまり多くのストーリーを語らず、基本的に、タンパク質をこれだけ、脂肪をこれだけ摂取しなさい、こういうエクササイズをしなさい、という感じでした。

このエピソードの出来栄えは良かったのですが、エピソードの公開後に「そのアドバイスは減量にとても役立ちました」とか「そのアドバイスのおかげでスタイルがとても良くなりました」というメールは一切来ませんでした。彼のアドバイスは素晴らしかったのですが、ストーリーに組み込んでいなかったせいだと思います。文字通り単なるアドバイスでした。

それで、このエピソードに携わることで私が最も学んだことは、実際に生活を変えたいと思っている人は、適切なアドバイスを得るだけでは不十分であり、そのアドバイスを実行する方法を説明する適切なストーリーと出会う必要があるということです。

チャールズ・デュヒッグさんが出会った、ある心理学者のストーリー

――「アドバイスをこんなふうに理解したのは初めてだ」と思わせるストーリーに最近出会いましたか?

『How to Sleep』というエピソードがその良い例です。誰でも恐らく次の2つのことを知っていると思います。1つ目は、睡眠時間を増やすべきだということ。誰もが夜は最低7時間の睡眠を取るべきだと言われています。2つ目は、眠りに落ちる方法です。誰もが文字通り一生することですから。

睡眠に関しては、寝る前にカフェインを飲んだり食事をしてはいけない、心を落ち着かせる方法を学ぶべきだといったわかりやすいことばかりで、革新的なものは無く、長年耳にしてきたことばかりです。

リスナーに一晩中ぐっすり眠ったことが9年間で一度も無いという心理学者がいました。彼はセミプロの柔道家なので、常に身体を鍛えていて、セラピストにも通い、薬も服用しました。できることはすべてしました。

このエピソードに登場した専門家はAndy Puddicombeさん。あの瞑想アプリHeadspaceの開発に携わった人です。Andyさんのストーリーは非常に興味深いものでした。彼は深刻な心の問題を抱えていたので、それを解消したくてインドに行き、瞑想と出会いました。彼の瞑想へのアプローチは、瞑想は「手放すこと」を練習するセッションとしてとらえることです。つまり頑張って行う練習であって、リラックスすることではありません。

Andyさんは、このエピソードの最後まで、私が目新しいと感じるアドバイスは口にしませんでしたが、私は彼のストーリーを聞いて突然腑に落ちました。「しまった! 私はこれまで完全に間違ったやり方で瞑想をしていたんだ」とね。

リラックスして頭を空っぽにしようとしたり、呼吸に集中しようとしていたのは間違いだったのです。瞑想はリラックスすることでなく、作業であり練習なのです。「これが私を悩ませている考えです。私はこの考えと格闘して隅に追いやり背を向けます」と言えなければいけません。

それ以来、私は入眠方法が変わりました。繰り返しますが、彼は私に何も目新しいことを言っていません。彼自身のストーリーを語る中で話してくれただけですが、本当に初めて聞くことのように突然私の腑に落ちました。

――生産性を構築する際に、サポートシステムは「あったらいいな」程度のものでしょうか。それとも「絶対に必要なもの」でしょうか

もちろん、絶対に必要なものです。私たちはそれを認識しています。

突き詰めていくと、なぜストーリーがそれほど重要なのかというところに立ち返ると思います。たとえば、友だちからポジティブなフィードバックをもらうことはとても重要ですし、説明責任を負わせてくれる人がいるととても助かります。

このようなサポートが「欲しいと思う」理由はたくさんあります。そういう意味での社会的サポートは、「あったらいいな」という程度。社会的サポートがあると変化を遂げることが多少容易になるからです。

しかし、私が絶対必要だと思うものは、それとは別のものです。

たとえば、何かを始め、試してみたけれど失敗したとします。でも、別のことを試してみたら上手く行き始めて「今の自分は変化しつつあり、新しい人間になっている」と感じたとします。

このように、自分の変化をストーリーの筋に組み込めない限り、つまり、自分で自分の変化を認識できない限り、自制心を要する道を歩み続けて変化を遂げるのはとても困難です。そして、そのストーリーが他人の目に映るところが見られるのは、この方法しかありません。

ストーリーテリングの興味深い点は、聴衆を意識しないとストーリーを語れないところです。その聴衆が今から5年前の自分であろうと、1週間後の自分であろうと、ストーリーテリングという行為には心理的に聴衆が必要なのです。だからこそ、社会的なサポートが絶対に必要なのです。

自分について語るストーリーは、他人との会話を通してしか作れないからです。そして、人間は、自分のことを語るストーリーが無いと変われません。

生産性を決定づけるポイントとは

――仕事場はどんな感じですか?

私の場合、オフィスはコワーキングスペースにあり、ポッドキャストをするスタジオは自宅にあります。でも正直なところ、特別なものは何もありません。仕事をするスペースについて時間をかけて考えることはなく、基本的には、デスクとコンピューターさえあれば十分です。

私は、『How I Work』などのハウツーものを読むのが大好きです。「PCをこんな風にセットアップしました」とか「○○をしやすいように3つのスクリーンがあります」とか「特別な背景照明が必要です」といった文章を読むのも好きですが、中身が真実とは思えません。そういうことは生産性を左右する要因だと思わないからです。

それが自分の生産性を決定する要因だと思いたい気持ちはわかりますし、快適なスペースに身を置くのは明らかに良いことです。しかし、実際のところ、オフィスがどのようなものでも生産性が左右されるとは思いません。

もっと重要なのは、自分はきちんと管理できていると思わせてくれるものを見つけることだと思います。

そして、それが素晴らしいオフィスをセットアップすることなら、そのことに注力すべきですが、私の場合は、オフィスのセットアップはどうでもいいことです。私のオフィスはそこまで素敵にも特別にも全然見えませんよ。

――あなたの生産性を決定する主な要因は何ですか?

この場合の目標は、自分が下す決定を自分でコントロールできると感じさせてくれるものや考えを深める助けになるものを見つけることだと思います。それは、『Smarter Faster Better』の主題であり、本当の生産性は、自分が行う選択に関して考えを深めて、単に反応するのではなくて、集中すべきことを適切に選択することです。

そして、私の場合、自分が管理できていると感じさせ、考えを深めるために必要なことは3つあります。1つ目は、子どもや他人から離れたスペースを持つことです。そのスペースがどんな風でもどうでもいいのですが、子どもは騒がしくて私をイライラしてしまうので、子どもと同じ家にいたくありません。

2つ目は、散歩ができることです。それで、サンタクルーズに引っ越しました。実際に散歩できるだけでなく、簡単に散歩できると思えることが大切です。私にはそれが本当に役に立ちます。

3つ目は、テクノロジーが使えることです。たとえば、去年少しコスタリカに住んでいたのですが、インターネットが使えなくなって、本当に慌てました。何よりも、自分のコントロール外だと感じたことが大変でした。テクノロジーが使えないと、私は本当にお手上げ状態になってしまいますから。

――挑戦中の課題はありますか?

今取り組んでいる課題は2つあります。

まず、今、新しい本を書こうとしています。コミュニケーションに関する本で、コミュニケーションがうまくいかない理由を理解する助けになる本です。もう1つは、本当に素晴らしいストーリーを、あまり時間をかけずに伝える方法を見つけることです。

世の中には素晴らしいポッドキャストだけれどエピソードを年に10話しか公開しないものがたくさんありますが、私たちのポッドキャストは毎週公開しています。

毎週公開する理由の1つは、できるだけ多くの問題を解決したいからです。ですから、ストーリーテリングとエンターテインメントの要素とは何か、そして誰かの生活に影響を与える要素は何か、その中でも特に重要な要素は何かということをいろいろ試して発見したいと思っています。どうすればもっと速くできるんでしょうね。

――今日されたのと同じ質問をするとしたら誰にしたいですか?

Michael Lewisさん(ノンフィクション作家)に、時間をどのようにオーガナイズして、目的を絞って仕事をしているのか、ぜひ聞いてみたいです。

非常に才能に恵まれている人なのは明らかですが、何にどの程度の時間をかける価値があるかに関して確固たる意見を持っている人のようです。制限時間に達すると、さっと切り上げてしまいます。

同じ理由で、Malcolm Gladwellさん(ジャーナリスト兼作家)が時間をどのように調整しているのか実に興味があります。おもしろい話を聞けると思います。

最後の1人は、小説家のJennifer Eganさんです。信じられないほど見事な仕事をしていると思うので、彼女ほどクリエイティブで注目に値する人物でいるためには、仕事と休息にそれぞれどのぐらいの時間を配分する必要があるのか知りたいところです。

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Image: Courtesy of Charles Duhigg

Source: Slate, gtd,

Jordan Calhoun – Lifehacker US[原文

訳:春野ユリ

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