
家に、まさかこんなに仕事が入り込んでくるとは思ってもみなかった…。
自宅で過ごす時間が増え気づいたことは、「家で仕事するならここじゃなくても良いのでは?」という今の住まい環境に対する疑問。
コロナ禍での働き方の変化とともに住まいに求めることや家探しは変わったのか、不動産情報サイトを運営するアットホーム広報担当の西嶋優理子さんと三留香澄さんにお話を伺いました。
住まいの需要はどう変わった?
昨年の10月の消費税増税やこの夏開催予定だった東京オリンピックなどが影響し、2019年後半から、賃貸購入ともに住居用の物件の動きは、鈍化していました。
また、コロナウイルス感染拡大の影響で、賃貸・購入ともに引っ越しを考えていた人たちに住み替えを様子見する傾向が見られたと西嶋さん。
「いつもだったら次の更新のタイミングで住まいをグレードアップしよう、購入しようという層の動きが少なく、様子見傾向にあったことが想像できます」(西嶋さん)
とはいえ、賃貸繁忙期(1〜3月)の動き(就職・就学・転勤などによる需要)は、例年通り。
それ以降は、5月末に緊急事態宣言が解除されたことで、少しずつ家探しが再開しつつあるようです。
アットホームが先日実施した調査からは、新たな傾向が見えてきました。
「住まい探しの意向について消費者に調査したところ、外出自粛期間中の4月上旬と5月下旬を比べると『理想の条件を変更した』という人の割合が増えていました」(西嶋さん)
どんな住まいが理想になった?
「やはり、テレワーク(リモートワーク)が鍵になっています。
これまで通勤通学重視で住まいを選んでいた方が、生活環境・スペースの重視(閑静な住宅地、憧れのエリア、広さ、間取り、防音など)を求める声が聞こえてきました」(西嶋さん)
単身者もファミリー層も変わらず、リモートワークをきっかけに同様な傾向にあるそう。
以前アンケートでまとめた「みんなのリモートワーク企画」でも課題としてあげられた。
- 子どもがいて仕事が捗らない
- ビデオ会議に部屋が映り込む
- 寝室とは別の個室が欲しい
- オンオフが切り替えられない
などの解決策として、住まい環境を変えたいという声が明確に出ているそう。
テレワークがしやすい住居って?

今後、企業の対応はフル出勤とテレワーク(ハイブリッド勤務も含む)の二極化していくと考えられています。そんな中、需要が高まる住居とはどんなものになるのでしょうか。
アットホームでも、働き方の変化需要に対応すべく、「テレワーク・在宅勤務におすすめの物件特集」がはじまっていました。
路線別に駅名で調べられる物件一覧を見てみると現状は東京近郊の単身者向け物件が多いよう。
ワンルームでも広めの物件や1LDKの個室のある間取り、インターネット環境が光回線を引いていたり、Wi-Fiが無料で使えたりする部屋などがピックアップされています。
「今後は、さらにワンルームで内装にこだわりウェブ会議などにも使いやすい部屋などが出てくるのでは」(西嶋さん)
テレワーク向けの部屋選びのポイント
単に、広さや部屋数だけでなく、特に仕事中に家族も在宅する場合はワークスペースを妨げずに人が通れる動線の有無や、家具を配置してもウェブ会議をする際の背景を確保できるか、日中の日当たりなども意識して選ぶ必要が出てくる。
家賃・物件価格は、下がるのか?
コロナ禍で特に物件購入の意欲は下がっていたようですが、需要が減れば価格も以前より下がる可能性はあるのでしょうか。
リモートワークの普及で東京から郊外へ住み替える動きが活発になるとすれば、高騰している都内の物件価格に変化が出てくるのでは? と少し期待もしているのですが…。

中古マンションの成約価格指数推移を見ると、首都圏では2020年1月に比べて4月は下がっていましたが、5月からはすでに回復傾向に。
東京23区の中古マンションに関しては、2020年5月は成約価格・成約価格指数ともに2019年5月と比べ10%、15pt以上のプラスとなっています。

さらに、東京23区の成約価格が4000万円を超えるのは、過去最高となった2020年1月以来4カ月ぶりで、2009 年1月の調査開始以来3番目の高水準に。

つまりは、都下や都内近郊の人気が出て、東京23区内の物件価格が下がるという状況は出てきていないようです。
「不動産は欲しいと思った時が買い時で、大きな買い物になるものですから、コロナ禍においては、一喜一憂せずに様子見しているオーナーや不動産会社が多いよう。
今後の価格変動については断言できませんが、都心・郊外の価格変動については注目しています。実際に首都圏では大きく下がったという動きは出てきていませんね」(西嶋さん)
住まい探しはどう変わる?

オンラインでできることが増える
対面での家探しが難しくなったこともあり、私たち消費者が期待するのは、オンラインで見られるよりリッチな情報と、非対面でもできる内見や不動産会社とのコミュニケーション機会を作れること。
「アットホームでは、物件情報の充実として360度画像を掲載できるようにしたり、物件画像の点数を増やし、アピールコメントで情報を追加したりしています。
また、駅ごとで調べられる街情報を公開するなど、物件だけでなく周辺環境も届けられるようにしています。
さらに非対面での家探し方法として、VRで内見ができる仕組みを導入し、お家にいながらリアルな内見ができる物件も増えてきています」(西嶋さん)
不動産のプロに頼むメリットはもちろんある
2019年に行った30歳未満の学生・社会人の住まい探しの調査結果によると、賃貸物件を探す際、ウェブでは複数の部屋をチェックするものの、実際に不動産会社を訪問するのは1軒のみという回答が多数を占めていました。
さらに内覧も1〜2軒で決める人が多いようです。
「今は、オンラインである程度絞り込んでから問い合わせるパターンがほとんどですね。
けれど、不動産会社はそれぞれウェブには載っていないプロの情報(住環境のメリットデメリット、物件の周辺情報など)を持っているので、ネットで完結してプロの力を利用しないのは本当にもったいないんです」(三留さん)
三留さん曰く、家探しをスムーズにするには、不動産会社の特徴に合わせて使い分けてみるのが良いそう。
●住みたいエリアが決まっていない
→ 多店舗展開型の不動産会社
●住みたいエリアが決まっている
→ 地域密着型の不動産会社
多店舗展開型の不動産会社のメリットは、広域で多数の物件を取り扱っているため条件で絞り込むだけでたくさんの物件情報に出会えること。
家賃と広さ、職場からの距離などからピックアップしたいろいろな地域の物件を紹介してくれるから、地域を絞らずに家を探している人には最適です。
一方、地域密着型の不動産会社は、地域のプロとしての情報だけでなく、地元の大家や業者との繋がりで、オンラインには掲載していない物件を持っていることもあるそう。
つまり住みたい地域や駅から探す人はその土地の不動産会社を探して問い合わせるのは必須のように思えます。
「レアな掘り出し物件と出会える可能性もあるため、ネット検索だけでなく直接不動産会社を訪ねる(直接訪れなくとも問い合わせをする)ことは、こだわりの家探しにおいても外せないポイントの一つです」(三留さん)
ステイホーム期間を経て、ニューノーマルを作っていく、今これからが住まいの在り方も大きく変わっていくとき。
家そのものにも、これまでとは違う目的が生まれ、働き方の変化とともに住み替えや移住など、個人の価値観に合わせて一様ではない新たな動きが出てくるはずです。
コロナを経て、人と住まいがどう変わっていくのかライフハッカー[日本版]では、さらに追っていきます。
お話を伺った方:
アットホーム株式会社 マーケティングコミュニケーション部 広報グループ
西嶋優理子さん
広報担当。2018年よりアンケートによる住まいや暮らしのトレンド調査に携わる。現在キッチンの広い部屋への住み替えを検討中。
三留香澄さん
アットホームに入社後、営業職を経て現職。現在は、広報・PR業務やアンケート調査業務に携わる。住まい探しの際は、1日3回ポータルサイトで検索。
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Source: アットホーム,テレワーク・在宅勤務におすすめの物件特集
Image: アットホーム,Shutterstock
ライフハッカー[日本版]編集部 丸山