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「コロナうつ」を鎮める思考。ネガティブケイパビリティを精神科医に学ぶ

「コロナうつ」を鎮める思考。ネガティブケイパビリティを精神科医に学ぶ
Photo: 印南敦史

コロナうつはぷかぷか思考でゆるゆる鎮める』(藤野智哉 著、ワニブックス)は、以前ご紹介した『あきらめると、うまくいく ー現役精神科医が頑張りすぎるあなたに伝えたい最高のマインドリセットー』の著者による最新刊です。

前著をご紹介した際にも触れましたが、著者は幼少時にかかった川崎病が原因で心臓に障害を抱えながら活動する精神科医。

4歳で発症し、できることが限られた日々を送るなかで、「あきらめ」の気持ちを身につけていったそう。

本書ではそのような経験を、増え続ける「コロナうつ」「コロナ疲れ」のために活かそうとしているのです。

注目すべきは、中学生時代の体験です。

薬を一生飲み続けなければならず、どれだけ生きられるかわからないという現実に直面したとき、「明日死ぬかもしれないなら、好きに生きてやろう」と病気の恐怖から解き放たれ、自由になった気がしたというのです。

私は病気を克服することはできませんでしたが、人生がいかにあやふやで不確かなものか受け入れることができました。あきらめることの大事さを知りました。私はいつ死ぬかわからないと言われました。

だけど、私は毎日死のことを考えて生きているわけではありません。 最終的に死というゴールがどこで来るかわかりませんが、それを無理に変えようとせず、答えを求めず、むやみやたらに解決しようとすることをあきらめ、ぷかぷかと、ゆる〜く付き合いながら生きています。(「はじめに」より)

この能力を、「ネガティブケイパビリティ」というのだそうです。ネガティブ(否定的)ケイパビリティ(能力)。

「どんな物事でも解決できるとは限らない、答えがあるわけではない」ということを受け入れる能力

無理に抗わず、すぐに答えを出そうと急がず、ぷかぷかとのんびり堪える力こそ、アフターコロナを生きる私たちに必要な能力だということです。

第3章「コロナうつを鎮める10の思考」のなかから、「ぷかぷか浮かぶようにゆるゆる生きる」に焦点を当ててみたいと思います。

ぷかぷかと浮かぶように生きる

毎日が不確かで不安に押しつぶされそうになっている患者さんに対し、著者は「ぷかぷか浮かんでみたらどうでしょう」と問いかけることがあるのだそうです。

目的地に向かって泳いで行こうと必死で頑張るから疲れるんです。

世界ではコロナが猛威を振るっていて、その中で今までと同じような毎日を過ごそうと思うこと自体に、無理があるんです。(73ページより)

自分が思い描く未来に向かって、しっかりとまっすぐ泳いで行こうと意気込んだのでは疲れて当然。

いまの位置をキープすることで精いっぱいになってしまうかもしれませんし、息切れしてしまう可能性もあります。

だったら、無理せずぷかぷかと浮かんでいればいいという考え方。言い換えれば、問題となることからそっと目線を逸らすことを著者は勧めているのです。

大切なのは、目を背けるのではなく、そっと逸らすこと。そうすれば、違うなにかが視界に入ってくることになるから

それは美しい夕焼けかもしれないし、楽しそうな音楽かもしれないし、あるいは近所のカレーの匂いかもしれません。

いずれにしても、五感を通じて流れ込んでいるそれらを受け止めることが、とても重要だということです。(72ページより)

自分をボーっと見つめなおす

辛いことから目を逸らすだけでなく、自分を見つめなおすことも大事。

幸いにして、コロナは私たちに1人で考える時間をたくさん与えてくれました。1人の時間をじっと過ごしているうちに不安が増幅してしまったかもしれません。

でも、こう考えたらどうでしょう。 仕事に追われていたけど、自分と向き合える時間がようやくできた。(74ページより)

一例を挙げてみましょう。

SNSを通じて人とつながっているような気になっていたけれど、実はSNSが逆に不安を増殖させていた。そんなことに気づけたかもしれません。

だとしたら、人や会社とのつながりに無理して手を伸ばすのではなく、波の赴くままに身を任せてみてもいいと考えることもできるわけです。

同じ場所にとどまって見つめなおすと、自分がこれまでどれだけ懸命に荒波のなかを泳いできたかに気づくはず。

おそらくそういうときは、不格好な泳ぎ方をしていた可能性も少なくはありません。

ぷかぷかと水面に浮かんでいるような、くつろいだ気分になれば、自分がいた状況を客観的に見ることができるようになるわけです。その結果、「そこは思っていたほど価値のある場所ではなかった」ということに気づくかも。

そして、戻らないと決めてしまえば、意外と気楽になれるものでもあります。

だからこそSNSをしばらく断ち、「ログインさえすれば、またつながれるのだから」ということを心の支えにすればいいのだと著者は言います。(74ページより)

死を思うことがいちばん死から遠い

幼少期に「死」という概念を知り、恐怖感に苛まれることは誰にでもあるもの。もちろんそれは大人になってからも同じで、つまり死は誰にとっても怖いものであるわけです。

なぜなら、いま生きている誰もが経験したことのないことだから。

とはいえ、

わけです。

死にあらがうことは不可能だとわかっていても、決して投げやりになることなく、幸せに生きているということ。

しかし、心臓に持病を持っていて人より死が身近ではあるものの、著者は意外と心地よくぷかぷかと浮かんで暮らしているのだそうです。

波間に浮かんでいるだけなので、あまり前には進めないし引き返せない。荒波の前では立ち尽くしていようが、ぷかぷかしてようが一緒なわけで、せっかちに答えを追い求める人から見たら図々しく思われるかもしれません。

それとも鈍感だと思われるかもしれませんが、それくらいでいいと思うんです。(77ページより)

なぜなら、人生のゴールが死だとしたら、生き急いでも意味がないから。

つまりは鈍感さがあるからこそ、毎日を楽しく過ごせる。著者は、そう考えているのです。(76ページより)


苦しかったり不安なときこそ、ぷかぷかと浮かんだような気分になり、自分を俯瞰で眺めるような感覚を持ってほしいと著者は記しています。そうすれば、自分がなにに苦しんでいるのかが、少しだけわかるかもしれないから。

そう考えれば、「ぷかぷかのマインド」を身につけることの重要性がわかるのではないでしょうか?

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Photo: 印南敦史

Source: ワニブックス

印南敦史

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