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自分が上アピールに熱心。「マウント属」は、典型的な「ざんねんな人」

自分が上アピールに熱心。「マウント属」は、典型的な「ざんねんな人」
Photo: 印南敦史

どんな職場にも、「ざんねんな人間」がいるもの。

しかし、周囲に目をこらし、私たち自身のことを反省し、人間の行動や心理を理解できれば、職場環境も改善されるはず。

職場のざんねんな人図鑑 ~やっかいなあの人の行動には、理由があった!』(石川幹人 著、技術評論社)は、そうした理想を目指して書かれたのだそうです。

本書は「○○属」という形で、ほとんどの人が多かれ少なかれもっている特性ごとに、ざんねんな人間を分類しています。すなわち、どこかのだれかのことではなく、あなた自身のことでもあるのです。

たとえば「サイコ属」は問題を抱えたサイコパスと呼ばれる人々を念頭に書かれていますが、「サイコパス的な傾向性」と考えれば、多くの人に当てはまります。

サイコパスとはどのような特徴であり、どのような短所や長所があるのか。そして、その特徴を大きく持ち合わせた周囲の人々、さらには自分自身とどうつきあっていくか。本書は、そうした知恵を身につけるガイドブックになっています。(「はじめに」より)

明治大学教授である著者の専門は、人工知能や脳科学の研究結果に基づいて人間の行動や心理を解明する「認知科学」。

この分野では1990年代から生物学が導入されるようになり、その成果は心理学に展開して「進化心理学」へと、経済学に展開して「行動経済学」へと発展したのだといいます。

人間は、チンパンジーやネコと同様、哺乳類の一種であり、それらと遺伝情報は9割以上が同一で、脳の基本構造もいっしょです。

ですから、人間をほかの動物と比較して類似点や相違点を分析すると、人間の行動や心理をよりよく理解できるのです。(「はじめに」より)

紹介されている全25属の中から、きょうはどんな会社にもいる「マウント属」を抜き出してみることにしましょう。

マウント属

[生態]

人が評価されている際に自分の自慢をし始め、自分がそれより上であることをさりげなく見せつけるような話し方をする。人の足りないところを指摘し、評価を下げるように誘導することもしばしば。うまく自分の評価が上げられないと、露骨な自慢話やけんか腰になることも多い。

[生息地]

Facebook、会議室、休憩室

[天敵]

マウント属

(166ページより)

“あるある”な習性

たとえば職場で誰かがほめられている時などに、「○○さんって、いい大学出身だよね。私も○○は出てるけど」「でも、○○って、実際はたいしたことですよね。自分もやってたのでわかります」などというふうに、自分の話をし始めるのがマウント属。

人の話に乗っているように見えて、さりげなく自分の自慢話になっているのが特徴。

露骨な対立ムードではないものの、話題になっている人物より自分が上であることのアピールに余念がないわけです。

したがって、人のアイデアに乗ったり協力したりはせず、なんとか自分のほうに振り向かせようと、あの手この手を尽くすことに。

しかも思ったような評価を得ることができなかった場合、機嫌を悪くしたり、いつまでも人に突っかかったような話をしてくることもあるので厄介。

上司の場合は、精神的な慰めを部下に求めてくることも

その一方、手を貸してくれるときはぶつくさ文句を言い、相手が失敗すれば嬉々として周囲に言いふらす側面も持ち合わせているというのですから困りものです。

また、自分の方が上だとは主張せず、他人の行動の価値を否定し、無効化しようとするタイプもいるといいます。

「でも、あんまり意味ないんじゃない?」「たいしたことないって聞いたよ」というような発言によって、相手をいまいる場所から引きずり落とそうとしてくるということ。

ちなみに公平な目線を気どってはいるものの、実際には狭い知識と感情論が勝っているので、本人は隠しているつもりでも、周囲には悪意がバレバレだったりもするそう。(166ページより)

生態の「なぜ」を読み解く

マウント属は、他人を支配することで自分の立場をよくしようとする戦略をとっているもの。

著者はそれを、「チンパンジーのような上昇志向のあらわれ」だと表現しています。

チンパンジーの群れは、ボスを頂点にした階層集団です。食料の獲得も配偶者の選択も、上位の個体が優先されます。上の命令に下が従うのが基本です。その仕組みは、敵が襲ってきたときに首尾よく反撃するなど、素早い対応が必要なときには功を奏します。

しかし一方、上下関係を決定するためのもめごとが集団内で終始起きる問題が発生します。ボス争いに至っては熾烈をきわめる戦いになり、有能な個体が失われるなどの損失も大きいです。(168ページより)

なお、迅速な意思決定が求められる企業においても、こうした階層が取り入れられています。たとえば、部課長の制度がそれ。

もちろん、職場で殴り合いの戦いが起きることはまずないでしょう。

しかし、昇進をめぐる上下関係の探り合いや見せつけあいは、しばしば起こっているはず。そして、それに積極的な人がマウント属だということです。

昇進をめぐる争いというと、階層の上の方で起きることと思われがちかもしれませんが、底辺でも起きることがあると著者はいいます。その目的は、最下層の確認をすること

階層の末端にいるチンパンジーは、いつも「おこぼれちょうだい」の身分なので、食糧不足になれば真っ先に餓死してしまいます。そんなことからもわかるように、末端にいることの危険性は少なくないのです。

人間社会で死に直面することは多くないかもしれませんが、それでも末端にいることの不安は少なくないはず。

そこで人間も、自分より下の人間を作ることで精神的安定を求めるわけです。

マウントによって上位を表現し、それが受け入れられたら「自分は底辺ではない」という安心が湧き上がってくるということ。

それが高じて暴力が伴うと、“いじめ”になるわけです。

だからこそ、「職場に上下関係が必要だとしても、深刻な状態にならない、弱い上下関係にすべき」だと、著者はこの項をまとめています。(168ページより)


本書によって、多くの人が「ざんねんな人間」を乗り越えて職場で活躍できること、そして、多くの企業で多様な人々がともに生きる職場環境が実現されることを願っていると著者は記しています。

とはいえ決して堅苦しい内容ではなく、楽しみながら大切なことを身につけられるようになっているので心配は不要。

「ざんねんな人」と無理なく共存するため、大いに活用したいところです。

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Photo: 印南敦史

Source: 技術評論社

印南敦史

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