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過剰なポジティブシンキングは、有害な肯定感しか生まない

過剰なポジティブシンキングは、有害な肯定感しか生まない
Image: Shutterstock

ポジティブ・シンキングは、幸福感のある生活をしていく上で大切です。ただし、なにごとも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。悪いことは一切見ないようにして、常に良いことにだけ目を向けていると「有害な肯定感」しか得られません。

『The Gifts of Imperfection, Daring Greatly, Rising Strong, Braving the Wilderness』や『Dare to Lead』の著者であるBrené Brownさんは、最近のポッドキャストで次のように語っています。

自分の感情を否定するとその感情は約2倍も増幅して、心の底に深くこもり、化膿して転移します。否定された感情は、そんなふうに増幅するのみならず、当事者を恥ずかしい気持ちにもさせます。

共感はさらなる共感を呼ぶ

誰にでも、多かれ少なかれ悲しいことがあります。

誕生日パーティーができなかった子どもや新型コロナに感染するリスクを負いながら毎日出勤する大人にそれぞれの悲しみや苦しみがあるように、今は世界中に多くの恐怖や不安があり、心が傷つくことが山ほどあるのは無理もないことです。

なにしろ、私たちはパンデミックの中で暮らしているのですから、自分の安全も愛する人たちの安全も確かではありません。また、仕事がなくならないか、解雇されたらどうするか、今月の請求書の支払いができるか心配している人もたくさんいます。

そうした深刻な不安に加えて、もう少し小さな悲しみもあります。パーティーや卒業式、結婚式が中止されて悲しんでいる人もいれば、友人や家族が安全と健康を維持できるか心配な人もいます。誰もがもはや安全とは言えない世界と折り合いをつけながら生活しているのです。

このような辛い現実を棚に上げて、良いことにだけ目をむけようとすると、上述した不安や恐れを否定することになり、目の前の現実に対処する機会も他者に共感して悲しみや不安を分かち合う機会も逸してしまいます。

Brownさんもポッドキャストで指摘していますが、誕生日パーティーができなかった子どもの悲しみや通勤することで日々感染リスクを負う大人の苦しみなど、人が苦しんでいることに対して、「それは大変だ」とか「それは大したことじゃない」と値踏みしようとするのは、共感の尺度を決めつけているからです。

「自他共に共感することでさらに共感が生まれます」とBrownさんは言います。

誕生日パーティーが中止になったことは、大人から見れば大したことではないかもしれませんが、子どもにとっては大事件です。

毎日通勤するたびに感染リスクにさらされる大人に対して、仕事があるだけマシだと思うかもしれませんが、自分や家族の健康に不安を抱きながら通勤しているのですから、本当にハッピーだとは言えません。

誰もが、それぞれのやり方で悲しみに耐えています。悲しみの専門家であるDavid Kesslerさんは、最近のインタビューで次のように語っています。

大切なことは、自分の中にある悲しみ、不安、怒りを感じることです。他人がその感情をどのように評価しようと関係ありません。(中略)そうしたネガティブな感情を抱いても構わないのだと思うと、感情が暴走することが無くなり、心が強くなります。

問題の存在を認識することが解決の第一歩

ポジティブなことだけに目を向けて、それ以外のすべてから目を背けていると、いつまでたっても何も変えられません。問題の存在を認めない限り、問題を解決できないからです。

この2~3カ月の間、私たちは人々の素晴らしさをたくさん目にしてきました。

ワクチン開発や治療法の治験に従事する研究者たち、自らの健康を危険にさらしながら患者を治療するために長時間労働をいとわない医療従事者たち。

たくさんの創意工夫と人間味溢れる優しさを見ることができました。

一方、こうした良いことばかりではなく、パンデミックを増幅させる多くの問題も見てきました。感染拡大を抑えて社会活動を復活させるために必要な検査を広範囲に実施できませんでした。感染を食い止めるために必要なインフラがないのに既に活動を再開した州もあり、それによって感染者と死者が増加することにつながると見込まれています。

何よりも、アメリカでは有給の病気休暇を付与する義務が無いばかりか、多くの人が保険に入っていない不十分な保険にしか入っていないという大変な現実に直面しています。つまり、この国には、経済的な理由で1日も仕事を休めない人や医者に行けない人がたくさんいるわけです。

また、過去6週間で3000万人が失業しており、経済恐慌に突入しています。死に至る危険性がある病気に感染する不安を抱きながら、家賃を払えるか、家族を食べさせていけるか心配している人がたくさんいるのです。このパンデミックで、アメリカの社会の構造的な問題が多数露呈されました。

現状の問題点を認識するのは悪いことではありません。どんな問題も、まずその存在を認めないと、解決しようがないからです。

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Image: Shutterstock

Source: Startribune, Brene Brown, HBR, The New York Times, KFF, STAT, USA Today

Rachel Fairbank – Lifehacker US[原文

訳:春野ユリ

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