「エビデンスはない」が意味する2つの解釈を読み違えてはいけない
- カテゴリー:
- KNOWLEDGE

世の中には、まだわかっていないことがあります。とくにここ最近は、わかっていないことで溢れています。
コロナウイルスが脅威として浮上した瞬間から、答えがわかっている質問より、答えがわかっていない質問のほうがはるかに多く、耳にするようになりました。
だって、ウイルスがこの世に登場してまだ5カ月しかたっていませんから、わからないことが多いのは仕方がないのです。
「エビデンスはない」が意味すること
そんな昨今、コロナウイルス関連で「エビデンス(証拠)はない」というフレーズをよく耳にするようになりました。
世界保健機関(WHO)が今年の1月、人から人に感染するというエビデンスはないと発表したのは周知のとおりです。
また先日WHOは「コロナウイルスから回復した人が、免疫を獲得するというエビデンスはない」と今後のCOVID-19対応案をまとめたガイドラインで強調しています。
しかし結局、人から人へウイルスが感染することがわかりました。そして、多くの科学者や医師は、将来、コロナウイルスから回復した人が免疫を獲得することが判明する可能性は高いと考えています。
それでは、WHOは間違っていたのでしょうか?
よく言われるように、エビデンスはないということが、ないことのエビデンスにはなりません。
つまり、「…というエビデンスがない」とは、「入手可能なエビデンスでは…であるかどうかはわからない」という意味なのです。
検証してみましょう。
1月の段階で入手可能だったエビデンスでは、コロナウイルスが人から人へ感染するかどうかはわかりませんでした。(つまり真実)
また、現在入手可能なエビデンスでは、コロナウイルスから回復した人が免疫を獲得するかどうかははっきりわかりません。
免疫が獲得できたとしても、それがどれくらい続くのかも定かではありません。
Earlier today we tweeted about a new WHO scientific brief on "immunity passports". The thread caused some concern & we would like to clarify:
— World Health Organization (WHO) (@WHO) April 25, 2020
We expect that most people who are infected with #COVID19 will develop an antibody response that will provide some level of protection. pic.twitter.com/AmxvQQLTjM
信じるまでもないことの意味もある
余談ですが、このフレーズにはもう1つ意味があります。
「エビデンスがない」を「信じる理由がない」という意味で使う場合です。たとえば、クリスタルに願いをかけるとがんが治るというエビデンスはありません。
もっとも、厳密な試験を実施して、この主張に反証することも可能かもしれませんが、わざわざそうする必要があるでしょうか?
「エビデンスがない」のは事実であり、反証があるのかないのか、とはまた別の議論なのです。
「エビデンスはない」というフレーズは便利ですが、文脈をよく見ないと、意味を取り違える危険があります。
今度、このフレーズを見かけたときは、注意深く文脈を調べて、発言者が実際に何を言おうとしているのかを、よく見極めてください。
それはただ、「今のところわかっていない」というだけの意味かもしれません。
あわせて読みたい
Image: Shutterstock
Beth Skwarecki - Lifehacker US[原文]
訳:伊藤貴之