1日に10億PV! 新型コロナウイルス感染症ダッシュボードに、世界が信頼を寄せる理由
- カテゴリー:
- TOOL

ジョンズ・ホプキンズ大学が運営している「COVID-19 Dashboard(新型コロナウイルス感染症拡散ダッシュボード)」。
黒い世界地図に血のような赤い丸。それが新型コロナウイルスの感染拡大を不気味に示しています。
1月30日公開の記事を読んで以来、アメリカ在住のわたしは主にここで拡散状況をチェックしています。
世界や各国の感染状況が一目でわかるダッシュボードは、アメリカトップの医学部を抱える超難関大学が運営管理していることで信頼度が高いのです。
学術研究目的で生まれたこのダッシュボードですが、今ではアメリカ合衆国保健福祉省政府を含む政府期間やニュースメディアでも利用されており、1日に10億を超えるアクセスがあるそうです。
ダッシュボードはこうして生まれた
このダッシュボードの生みの親は2人います。
(大学公式インスタ画像:ガードナー教授)
まず、ジョンズ・ホプキンズ大学准教授ローレン・ガードナーさん。同大学のCenter for System Science and Engineering(システム科学工学センター)の共同所長。35歳。彼女の専門は、ジカウイルス、デング熱、はしかなどの感染病流行の空間モデルを作ることです。
2人目は、ガードナー准教授が指導している博士号課程の大学院生、30歳のEnsheng Dongさん。Dongさんは中国山西省出身で、母国や山西省、多くの友人が住む武漢で拡がりつつある感染症を心配していました。
そのことをガードナー教授に話したところ、ダッシュボードを立ち上げようということに。その話をしたのが2020年1月21日、その夜にはダッシュボードが誕生、翌日にTwitterでシェアされました。
信頼できるデータが一目でわかるダッシュボード
こうして2人で立ち上げたダッシュボードは当初は6人のチームで運営されていましたが、今ではチームは20人以上に。
24時間体制なので、サーバー管理などは時差のあるイギリスにいる大学院生も担当しているそうです。最初はマニュアルで入力していたデータも今は自動になり、WHOを始めCDCや欧州疾病予防管理センターなどの公式データが取り込まれ、1時間ごとに自動更新されています。
統計学に詳しくなくても、一目で世界全体の感染状況がわかるようになっています。また、データの重複など疑問点が生じた時には、世界中からメールが届くとか。今では異常検知システムもあり、できるだけ正確で最新の情報を提示しようと尽力していることがわかります。
アメリカの患者数が爆発的に増えたのに対応して、ダッシュボードもアメリカの細かいデータを含めるようになりました。オープンソースのダッシュボードは必要に応じて変化しています。
ダッシュボードのチームは、気候がどうパンデミックに関わっているかについてNASAと共同研究もしているそうです。また、NPRによると、Dongさんは感染者の性別や人種別のデータなども含めていきたいと話しています。
ダッシュボードからわかる数値も増えている

3月の時点では、右上のコラム2つは死亡者数(白)と回復者数を表していましたが、現在では死亡者数とアメリカでの検査数(青)に変更されています。
回復者数(緑)は、死亡者数コラムの2番目のタブに表示されています。

4月に入ってからは、世界地図の下のタブも増えました。

- Cumulative Confirmed Cases(確認された感染者数累計)
- Active Cases(現在の患者数。感染者数—死亡者数—退院者数=現在の患者数)
- Incidence Rate(発症率)
- Case-fatality Ratio(致命率、致死率)
- Testing Rate(検査率。10万人につき何人検査されたか)
- Hospitalization Rate(入院率)。
検査率と入院率については、アメリカのデータのみが示されています。

左上コラムには、最初から変わらずに感染者数の累計が赤で表示されています。そこにはタブが3つあります。
Admin0は国レベル、Admin1はアメリカの州や中国の省などの地域レベル。Admin2はアメリカのカウンティ(郡)別になっています。
数値の高い場所から表示されています。執筆時(日本時間4月22日午前6時)では、Admin 1には日本の都道府県は表示されていません。

2月から3月の時点では、日本地図にズームすると東京や大阪といった地域別で数値が表示されていたことを覚えていますが、今では日本としてひとまとめに。
それでも、日本全体としての数値や致死率はわかるようになっています。

ダッシュボードが誕生した時には、320個だったという赤い丸。
最初はアジアに多かった赤が、今ではヨーロッパとアメリカを真っ赤に覆うようになりました。地図の左に位置するアメリカについては、赤い点だけで国の形がはっきりとわかるほどになり恐ろしい限りです。
1月からほかの研究は後回しとなり、ずっとダッシュボードにつきっきりだというガードナー准教授。コロナウイルスのデータ追跡はおそらく1年間は行なうだろうとインタビューで語っています。
誕生から3カ月のこのダッシュボードがいつ過去のものになるのかはわかりませんが、「海軍特殊部隊で学んだメンタルを強く持つ3カ条」と「ストックデールの逆説」を心に留めて、きっとその日は来ると信じています。
あわせて読みたい
Image: COVID-19 Dashboard
Source: NPR, Science Magazine, COVID-19 Dashboard
ぬえよしこ