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STAY HOMEで不安なときこそ見つめなおしたい。「なぜ仕事をするのか」について

STAY HOMEで不安なときこそ見つめなおしたい。「なぜ仕事をするのか」について
Photo: 印南敦史

いまは新型コロナの影響で会社へ行かず、自宅で仕事をしている方も多いのではないかと思います。

そのため、『日曜の夜、明日からまた会社かと思った時に読む40の物語』(西沢泰生 著、祥伝社文庫)というタイトルを見たとき、「家で仕事だからなぁ」という印象を持たれるかもしれません。

しかし、それは比喩にすぎず、大枠において本書は“仕事そのもの”について書かれたものなのです。

この本では、「今の仕事を辞めて、起業しましょう!」なんて、勇気の要ることは言いません。「好きなことをして、1億稼ぎましょう!」なんて、ハードルの高い提案もしていません。

あなたの「会社での時間」を、少しでも「充実した時間」に変えるために、 役に立ったり、ヒントになったり、目からウロコが落ちる「きっかけ」になったり、と、そんな話を集めました。(「はじめに ――日曜日の夕方が憂鬱なあなたに」より)

つまりは、仕事に対するネガティブな気持ちを消し去り、仕事が“少しは楽しくて、やりがいがあるもの”へと変化するためのヒントになるようなストーリーやエピソードが紹介されているということ。

第4章「仕事に『やりがい』を感じないというあなたへ」から、トピックをひとつ抜き出してみましょう。

なぜ、映画監督になりたいのか?

ここでは、『アメリ』『デリカテッセン』などの作品で知られるフランスの映画監督、ジャン=ピエール・ジュネのことばが引用されています。

「よく、映画監督になりたいという人がいるが、その考え方は間違っている。何かになりたいという考え方は、『有名になりたい』とか『人から認められたい』という気持ちの現れにすぎない」

(中略)「大事なのは、『映画を作りたい』と心から願うことだ」(206ページより)

このことばについて著者は、仕事というものの本質を言い当てていると評しています。

製作費がなくて、1本も映画を撮ることはできないけれど、それでもまわりの人たちから「映画監督」と呼ばれてチヤホヤされたいのか?

それとも、肩書きはただの「会社員」にすぎず、表に名前は出なかったとしても、好きな映画を自由に撮ることができる人になりたいのか、ということ。

「映画監督になりたい」と口に出す人の本当の夢は、「映画監督になること」ではなく、「映画を撮ること」であるはず

さらにいえば「映画を撮りたい」だけではなく、「自分の撮った映画で、たくさんの人たちを感動させたい」ということこそが、「やりたいこと」の本質だとも言えます

仮に、完成した映画を誰ひとり見ないと言うことが決まっていたのだとしたら、映画を撮る気になどなれるわけがないからです。

さらに突っ込んで考えると、その人にとって「映画を撮る」のは、「人を感動させるための手段」なのかもしれません。

その証拠に、「映画監督になりたい」と思って映画学校で学んでいたのに、気がつけばテレビ業界でドラマの制作の仕事に携わっていた、などという経歴を持つ人もいます。

だとすれば、その人が最終的にしたかったのは「エンタテインメントでたくさんの人たちを楽しませること」であり、その手段は映画でもドラマでも、どちらでもよかったということになります。

あるいは、「自分で監督しなくても、脚本を書かなくても、その制作に携わることができれば満足」だという場合もあるでしょう。

つまり、監督であれ脚本家であれスタッフであれ、「自分がやりたいと思っていることの本質」をつかむことがとても重要だということです。(206ページより)

「ワクワクの核」

文筆家・エッセイストの深井次郎さんは、この「やりたいことの本質」を「ワクワクの核」と呼んでいます。

この「ワクワクの核」をキチンとつかんでいれば、今は不本意だと思っている仕事のなかにも、「やりたいこと」を見つけることができるかもしれません。(208~209ページより)

たとえば「本当は映画監督になりたかった」という思いを抱えながら家業のお菓子屋を継いでいる人が、自分の「ワクワクの核」を掘り下げてみた結果、「たくさんの人に喜んでもらいたい」ということが本質だったことに気づいたとします。

だとすれば、多くの人に喜んでもらえるようなお菓子の企画を考えて製品にすれば、たくさんの人を幸せにすることができるかもしれません。

つまり、ただ手段が変わっただけのことで、「ワクワクの核」を満たすこと自体はできるわけです。

なお、この考え方は企業そのものにも当てはまると著者は言います。

事実、経営学者のピーター・ドラッカーも、「経営者にとってもっとも大切なのは『自分たちの事業の本質はなにか?』を問い続けることだ」と言っているのだそうです。

自分たちは事業を通し、社内に対してどんなふうに役立っていきたいか。その本質をきっちりとつかんでいれば、新しい事業を展開する際にもブレずにすむわけです。(208ページより)

孔子のことば

孔子は仕事について、次のようなことを言っているそうです。

「あなたが愛するものを仕事に選びなさい。そうすれば、生涯、1日たりとも働かなくて済むであろう」(210ページより)

好きなことを仕事にしてしまう(あるいは仕事を好きになる)と、それはその時点で「仕事」というより「楽しみ」に変わってしまうということ。

「きみたちは努力したい何かを持っているはずだ。きっとそれは、きみたちの心のこもった立派な仕事になるでしょう」(映画監督 黒澤明の言葉)(211ページより)

「仕事のなかにやりがいを見出すヒント」として挙げられているこのメッセージは、仕事と向き合ううえでのヒントになりそうです。(210ページより)


必ずしも最初から順序立てて読む必要はなく、興味のある箇所から読んでみることも可能。肩肘を張らず、気軽に読めるわけです。

“STAY HOME”が呼びかけられているこの週末にをめくってみれば、来週からの仕事に前向きになれるかもしれません。

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印南敦史

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