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ジョジョのセリフがヒント。バイアスはうまく使えばビジネスの武器になる

ジョジョのセリフがヒント。バイアスはうまく使えばビジネスの武器になる
Photo: 印南敦史

人はコミュニケーションするとき、必ず「勘違い」してしまいます。 100%確実に、誤解なくやり取りすることは不可能。

なぜなら、誰もが「バイアス」を通して物事を見ているからです。(「はじめに 『バイアス』がコミュニケーションの成否を分ける」より)

こう主張するのは、『「勘違い」を科学的に使えば武器になる 正しい話し方よりも納得される伝え方』(堀田秀吾 著、秀和システム)の著者。

法言語学」という、ことばやコミュニケーションに基づいた資料(証拠)を分析する分野を研究している明治大学教授です。

また法言語学の研究手法として、言語学のみならず心理学や脳科学なども積極的に取り入れているのだとか。

そして、そのような研究を続けた結果、人間関係やコミュニケーション問題の大半が、バイアスによって生まれる“誤解”によるものだと気づいたのだそうです。

ともあれ、主張どおりなのだとすれば、バイアスの知識を深めることによって、人間関係やコミュニケーションの問題はかなり改善できるはず。

そこで本書では、必要最低限のバイアスを学ぶことを目的としているわけです。

きょうは第1章「バイアスの使い方を知って負けない武器としよう」内の、「ジョジョになって他人のセリフを操ろう」に焦点を当ててみたいと思います。

自分の望むセリフを相手の口から引き出せる?

『ジョジョの奇妙な冒険』という人気マンガをご存知でしょうか? そのマンガの中で、主人公の1人ジョセフ・ジョースター(ジョジョ)が、

「お前の次のセリフは●●だ」

というように、これから話す相手のことばを読み、相手も本当にそのとおりのセリフを言うというシーンが、たびたび出てきます。(17ページより)

著者はこのパートの冒頭で、こんなエピソードを持ち出しています。

それは、実際の会話においても、自分が望むことばを相手に言わせることができたなら、かなり強力な武器になるはずだという確信があるから。

ビジネスでの交渉はもちろん、アンケート調査、プライベートでのお誘い、また裁判などでも、自分に有利な発言を引き出し、活用できる可能性があるわけです。

しかもそれは、バイアス(勘違い)を利用することで、ある程度は可能になるのだといいます。

印象や記憶、判断などは、本人に気づかれないうちに簡単に変えられてしまうということです。

その一例として、ここではイリノイ大学の心理学者リチャード・ハリスによる実験が紹介されています。

被験者たちにバスケットボールを見てもらい、「身長がどれくらいだと思うか?」と質問する際、グループによって質問の仕方を次のように変えてみたのだそうです。

① 「いま見たバスケットボール選手の背の高さはどれくらいでしたか?」

② 「いま見たバスケットボール選手の背の低さはどれくらいでしたか?」

(18ページより)

その結果、②のグループは①のグループよりも低めに答え、①と②のグループで、平均約30センチもの差が出たることに。

190センチの選手は大きな人ですが、160センチの選手はかなり小さめです。

つまり、たったひとこと変えただけで、とてつもない差が出てしまったわけです。この質問では、その人が「背が低かった証左」となる発言を引き出しているそうです。

通常、背丈に関しては、その人の背が高くても低くても「高さ」と表現します。

しかし、このように「低さ」という形で聞くと、その人の背が低いことが「前提」となるのです。

「低さ」ということばが持つ前提がバイアスとなって印象を変えるということであり、これが「誤報効果」。(16ページより)

語法効果を応用するコツは「前提条件の使い方」

なお語法効果は、ビジネスにも応用できるといいます。その一例として著者が取り上げているのは、次のような実験です。

① 「いままで何種類くらい他社の製品を使いましたか? 1種類、2種類、3種類?」

② 「いままで何種類くらい他社の製品を使いましたか? 1種類、5種類、10種類?」

(21ページより)

両方の質問をくらべると、違いは些細なものでしかありません。

質問の最後に挙げている具体例が「1種類、2種類、3種類」と小さい数字の場合と、「1種類、5種類、10種類」と大きい数字の場合だけ。

つまり後者は、より多くの会社の製品を使っていることが前提となっているわけです。ところが、それぞれの質問に対する回答には、きっちりと影響が出ていたのだそうです。

小さい数字で聞かれた①の被験者たちが平均で3.3種類と答えたのに対し、大きな数字で聞かれた②の被験者たちは、平均で5.2種類と答えたというのです。

つまり、1.5倍もの違いが出たことになります

もうひとつ、頭痛になる頻度を聞いた実験も見てみましょう。

③ 「頻繁に頭痛になりますか? もしそうなら、どれくらい(の頻度で)なりますか?」

④ 「たまに頭痛になりますか? もしそうなら、どれくらい(の頻度で)なりますか?」

(22ページより)

ここでの違いは、③の「頻繁に」と④の「たまに」だけ。「頻繁に」のほうが、より多い頻度で起こることが前提になっているわけです。

その結果、③のグループが平均で週に2.2回と答えたのに対し、④のグループは平均で週に0.7回と答えたそう。3倍以上の差が出てしまったのです。

このような語法効果には、すべて共通の原理があるのだそうです。自分が持っていきたい回答の方向性が、単語の意味に含まれているものを使っているということ。

つまりそのポイントを抑えれば、自分に有利な数値や証言を引き出したいときに有利だということです。(18ページより)


たとえばこのようなバイアスの本質を理解し、応用すれば、コミュニケーション能力を手っ取り早く向上させることができると著者は言います。

コミュニケーションに関して苦手意識を持っているなら、手にとってみてはいかがでしょうか?

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Source: 秀和システム

印南敦史

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