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「持ち家」「賃貸」に続く選択肢。移動できる家「タイニーハウス」は主流になる?

「持ち家」「賃貸」に続く選択肢。移動できる家「タイニーハウス」は主流になる?
Image: Cabin One

ノマドワーカーやアドレスホッパーなど新しい働き方や暮らし方が次々に生まれる今、「家」に対して人々が求めるものも変わりつつあります。

そんな中、数年前から新しい住空間としてじわじわと注目されつつあるのが、タイニーハウス。無駄を省き、コンパクトかつ機能的なその住宅スタイルがトレンドとなっています。

ドイツ・ベルリンで誕生したCabin Oneは、タイニーハウスの特長を備えた移動式住宅ユニットを提供することで、家の利便性を生かしたまま、さまざまなライフスタイルにより柔軟に適応する住まいを実現しています。

そのCabin Oneの共同創業者・CEOであり、TOAワールドツアー東京にも登壇したサイモン・ベッカー氏に、多様化する住まいの形やタイニーハウスの可能性、そしてCabin Oneのビジョンについて話を伺いました。

サイモン・ベッカー氏
Cabin One共同創業者・CEOのサイモン・ベッカー氏
Photo: KOBA

――まず初めに、Cabin One創設のきっかけを教えてくれますか?

サイモン・ベッカー氏(以下サイモン):今から2年前、未来の住まいを再考する目的のもとベルリンで誕生しました。これまで不動産といえば、「定住」「人生で一度きりの買い物」という柔軟性のない考え方が普通でした。

そこで私たちは、建築家としてもっと柔軟な不動産のあり方を模索してきたのです。そしてたどり着いたコンセプトが「Cabin One」でした。

Cabin Oneが提供するキャビンは100%工場生産のプレハブ住宅で、どこにでも運べて、いつでも置き換えることが可能です。つまり、「不動産を1つの製品として考える」ことがコンセプトのポイントでした。

過去に類似プロダクトがなかったわけではありませんが、どれも現代のライフスタイルに合ったものではありませんでした。そこで、最適なインテリア、素材、技術を組み合わせて、スマートエコハウジングであるCabin Oneを開発しました。

現在はキャビンを販売している段階ですが、ゆくゆくは世界の隅々にまで広がるネットワークを築いて、自由に泊まり歩けるようにしたいです。

言うなれば、「Living-as-a-service-product(住まいのサービス化)」ですね。世界中どこに行っても家があって、日単位・月単位で住むことができる。そんなビジョンを掲げています。

Cabin Oneが提供するスモールハウス
Image: Cabin One

――現在、ヨーロッパ各国ではどのように使われているのですか?

サイモン:実にさまざまなアイデアでご利用いただいています。約25平米と狭い空間のため、西ヨーロッパや中央ヨーロッパでは住宅のダウンサイジング・ムーブメントの先駆者を自称する人々が暮らしています。

一方で、オフィス別荘として利用している人もいます。運送手段さえあれば国も選ばないので、世界中で利用することが可能です。

――約25平米という広さは、日本では一般的ですがヨーロッパの住まいとしてはかなり狭いのでは?

サイモン:当初は、機能面と快適性を兼ね備えたモダンハウスを小さなスペースに詰め込むことができるかどうかが懸念でした。そこで、全面窓を採用して自然光を取り込むなど、内と外をつなぐ工夫をすることで広く感じさせています。

スモールハウス内の様子
Image: Cabin One

――内部の間取りは自由にカスタマイズできるのでしょうか?

サイモン:多少は可能ですが、あまり大きなカスタマイズはできません。あくまでもプレハブ住宅であり、同じものをたくさん作ることでコストを下げているからです。

これまでの常識として、「家とは自由にカスタマイズ可能なもの」と考えられてきたかもしれません。でもCabin Oneの場合、「これが気に入らなければ買わなければいい」というスタンスです。

たとえて言うと、自動車と同じです。大枠やパーツの配置は同じですが、細かな部品などは好みのものに変えることができますよね。でも、ポルシェが老若男女にまんべんなく受けるかというと、そうではないでしょう。

――内部・外観ともに、いわゆる一般的な「タイニーハウス」とは異なった特徴的なデザインである印象を受けました。デザイン面でのこだわりにはどのようなものが?

サイモン:細部まで熟考を重ね、入念に設計しています。狭い空間のため、キャビン内に高低差をつけて空間を最大限活用するようにしています。たとえば、寝室はロフトに設置し、ベッドをキャビンの中心ではなく一番高い部分に配置しました。

また、正面の大きな窓が独特な外見につながっているのだと思います。このデザインが解放感をもたらし、狭い空間に特有の圧迫感を和らげる効果があります。

こうしたデザインは見た目から入ったものではなく、機能性を追求した結果生まれた、いわば創作の賜物といえるでしょう。

サイモン・ベッカー氏
Photo: KOBA

――タイニーハウスは、大きな土地が必要ないことも利点の1つではありますが、それでも都心部などではある程度のスペースを確保するのは難しいように思います。この課題に対してどのように取り組んでいるのですか?

サイモン:ご指摘の通り、実際に住むためにはプロダクトだけでなく、もちろんそれを置くスペースが必要です。

そのスペースについて、従来の不動産では実現不可能なため利用されてこなかった場所として、私たちは屋上に目をつけました。集合住宅をメインとした既存の建物の屋根にキャビンを設置し、新たな住空間を生み出すのです。

今から数週間後には、初の屋上キャビンを納品予定です。これがコンセプトの実証となるでしょう。

今はもっと広い屋上を探しています。そこに7~9棟のキャビンを置くことで、コミュニティが生まれるとともに、コストを下げることに繋がるからです。

スモールハウスの外観
Image: Cabin One

――昨今では世界中で新たな働き方やライフスタイルが次々と生まれ、さまざまな変化が訪れています。そんな中、住まいの形は今どのフェーズにあり、今後どうなっていくことが予想されますか?

サイモン:住まいというプロダクトは、急速な変化を続けており、不動産のライフサイクルも短期化傾向にあります。

一方で、不動産業界はそのような変化に対応しきれず、需要は変化しているのに供給は変わらないという問題が起きています。スマートホームなど、適応可能なコンセプトがまったくないわけではありませんが、規模は小さく、スピードも遅すぎるのが現状です。

これは私たちにとってはチャンスです。不動産業界にはできなくても、私たちは社会の発展する方向性に適応することができます。

その方向性の1つはモビリティフレキシビリティ。もはや人々は、1つの土地を所有してそこに留まりたいとは思っていません。好きなように動いていたいのです。不動産というコンセプトはこの需要に合致しません。

もう1つの動きが、家とテックの融合です。まだ完全なシフトには2年ぐらいかかるでしょうが、いずれ完全に融合する日が来るのは間違いないと見ています。

運ばれるタイニーハウス
Image: Cabin One

――Cabin Oneをはじめとするタイニーハウスが、「持ち家」「賃貸」に続く第三の選択肢になり得るでしょうか?

サイモン:どんなビジネスモデルを考えられるかにかかっていると思います。

たとえばCabin Oneで言えば、キャビンモジュールの一部や丸ごと1棟、あるいは2棟を買えばそこに何泊か泊まることができたり、さらに1棟買うと10年間自由に住めたり。その後そのままの状態を維持しつつ、賃貸の柔軟性も持てるというようなイメージでしょうか。

これから1~2年の間に、そうした新たなアイデアを誰よりも早く考えていくつもりです。それが第三の選択肢になるかもしれません。

そのためには、とにかく挑戦し続けなければいけませんね。コンセプトに楽しさと喜びがあれば、あとはほかのプロダクトと同様のカーブを辿るはずです。つまり、アーリーアダプターが現れ、レイターアダプターが追従し、広く社会に浸透していくという流れ。

それを加速できるかどうかは、やってみなければわかりません。

サイモン・ベッカー氏
Photo: KOBA

――今後、ヨーロッパ以外の国や地域でもローンチする予定はあるのですか?

サイモン:現在、オーストラリアに進出しています。私たちにとって初の新大陸です。オーストラリアを選んだのは、言葉と文化の壁が低いから。

翻って日本はどうかというと、私たちのプロダクトとの相性は良いと思います。なぜなら日本人は、狭い空間で暮らすことに慣れているでしょう。そのため、ヨーロッパで行なったような狭い場所に暮らすための教育をする必要がありません。逆に、目新しさは感じてもらえないでしょうし、むしろ退屈に思われるかもしれません。

とはいえ、リソースさえ整えばすぐにでもローンチしたいと考えています。実際これまでに、日本進出は何度も話題に上がっています。アジア進出の第一歩として、日本は文化的なバリアがそれほど高くありませんから。

また、ほかの国や大陸に進出することで、賃貸に出すなど新しいコンセプトを試す動きにも繋がります。

それによって、私が考える不動産の柔軟性を高められるし、プロダクトをある地点から別の地点へと移動するだけでなく、ユーザー自身がプロダクトを通じて移動できるようになる未来もあり得るでしょう

サイモン・ベッカー氏
Photo: KOBA

――最後に、あなたが考える「理想の家」とはどのようなものかを教えてください。

サイモン:居住空間の「質」とはソフトなものであり、測ることが難しい概念です。

たとえば最も重要な快適性。これを測ることは難しいですが、「どんな素材を使うか?」「視覚や嗅覚にどう訴えかけるのか?」「空気はきれいか?」など、何らかの方法でコントロールすることは可能です。

そして、何よりも重要な要素が光であり、それを操るのがです。私にとって上質な家とは、外界とのつながりを意味します。窓を通して、今どこにいるのか、何時頃なのかを把握することができるからです。

だからといって全面ガラスでできた家では、誰に見られているかが不安で、とてもじゃないけど住めません。ですから、背中には何かがなくてはならない。つまり、窓の向きが重要なのです。

さらに、「良い家」は生活の自然な流れを乱してはいけません。人の生活を変えさせるのではなく、プロダクトが人の要求やニーズに応える必要があるということです。

これらの条件が私の考える理想の家で、そしてそれをデザインするのが私の仕事です。その視点を皆さんとシェアでき、私がデザインした家を気に入っていただけるなら、それ以上の幸せはありません。

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Photo: KOBA

Image: Cabin One

Source: Cabin One

堀込泰三

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