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ビジネスでも汎用性が高い、人生の達人・シェイクスピアの2つのことば

ビジネスでも汎用性が高い、人生の達人・シェイクスピアの2つのことば

心を支えるシェイクスピアの言葉』(河合祥一郎 著、あさ出版)は、“人生の達人”としても知られるシェイクスピアが残した全40戯曲とソネット集から110種のことばを選び出し、それぞれに解説を加えた書籍。

著者は日本シェイクスピア協会会長であり、『シェイクスピア――人生劇場の達人』(中公新書)、『謎解き『ハムレット』』(ちくま学芸文庫)、『シェイクスピアの正体』(新潮文庫)、『あらすじで読むシェイクスピア全作品』(祥伝社新書)と、シェイクスピア関連書籍を多数執筆している人物です。

ヒトゴロシの芝居をイロイロ書いたシェイクスピアーー 一五六四年生まれの一六一六年没なので、生没年を語呂合わせでヒトゴロシ・イロイロと読みますーーは、四百年以上も前の劇作家でありながら、現在に至るまで頻繁に上演され、映画やオペラ、バレエ、絵画などジャンルを問わず広く受容されています。その魅力はどこにあるのでしょう。 それはやはり、シェイクスピアが紡いだ言葉の力にあると言うべきでしょう。(「はじめに」より)

こう述べる著者は、本書をていねいに読めば、シェイクスピアのことばに込められた深い意味をよく理解できるはずだとも記しています。

お気に入りの台詞を見つけて、口に出してみてほしいとも。

きょうはShakespeare quote II「生き方に迷ったら」のなかから、2つの名言と解説を引用してみたいと思います。

どん底にあっても希望はある

最悪となり、運命にすっかり打ちのめされてどん底にあっても、 まだ希望はある。

恐れることはない。 嘆くべきは上から下へ落ちること。 下から上なら、笑いが待っている。

――『リア王』第四幕第一場

To be worst, The lowest and most dejected thing of fortune Stands still in esperance, lives not in fear. The lamentable change is from the best; The worst returns to laughter.

King Lear, Act 4 Scene 1

(52ページより)

グロスター公爵の嫡男エドガーは、弟に騙され、命を狙われていると信じて裸で荒野をさまよい、どん底を経験します。

しかしそれでも楽観的に考え、「落ちるところまで落ちたら、あとは上昇するだけ」というこの台詞を口にしたのです。

最高の状況にあれば、あとは下り坂になるもの。しかし下にいるなら、上がっていくだけだという考え方です。

ところが、この台詞を言った直後に、エドガーは、目をつぶされて悲惨な状態になった父親がやってくるのに出会って、「『最悪だ』などと言えるうちは、まだ最悪ではない」(The worst is not so long as we can say, ‘This is the wosrt’)と言い直す。

これまで自分が最悪の状態にあると思っていたが、どんでもなかった。もっとひどい状況があったとショックを受けるのだ。 下には下があるということだ。(53ページより)

シェイクスピア作品では、運命はぐるぐる回る糸車のイメージで捉えられているそうです。

上がれば下がり、下がれば上がるものと考えられたわけです。下がり切ったかどうかは、回っている本人にはわからないもの。

上がった下がったと一喜一憂せず、目の前のことに集中して一歩一歩歩いていくしかないということです。

夜もいつかはきっと明ける

明けない夜はない。

――『マクベス』第四幕第三場

The night is long that never finds the day.

Macbeth, Act 4 Scene 3

(56ページより)

マルカム王子がマクダフに向かって、あとは暴君マクベスを倒すのみだと決起を呼びかける際に口にした台詞。

どんなに絶望的な暗い夜であっても、必ず希望の朝日は差してくるもの。

つらい時間を過ごしているとき、思い出したいことばです。

ただし、松岡和子訳のように「明けない夜は長いからな」とするのが、文字どおりの訳である。

小田島雄志訳は「どんな長い夜もいつかはきっと明けるのだ」と楽観的な意味になっているが、ここに悲観的意味を読み込むべきだという議論もある(松岡和子訳『マクベス』訳者あとがき参照)。 楽観的なのか悲観的なのか、それが問題だ。(57ページより)

著者によれば、シェイクスピア翻訳のおもしろいところ、そして難しいところは、さまざまな読みの可能性がある点なのだそうです。

妻子を殺されて悲痛になっているマクダフの台詞ではなく、彼を慰めようとするマルカムの台詞であること、そしてマルカムがこの直前に「マクベスは熟れ切った果実ですぐに落ちるのだから、決起しさえすればよい」という意味のことばを口にしていることを考慮すると、マルカムは楽観的にこの台詞を言っているとも考えられるわけです。

解釈はなかなか複雑ですが、タイトな日常を生きるビジネスパーソンとしては、楽観的にこれを受け止めたいところでもあります。(56ページより)


シェイクスピア作品にあまり馴染みのない人に向け、巻末には全40戯曲のあらすじが執筆順に掲載されています。

つまり本書に目を通せば、シェイクスピアに関する基本的な知識を身につけることもできるわけです。

ぜひ一度手にとって、シェイクスピアの世界に浸ってみてください。

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