連載
特集
カテゴリー
タグ
メディア

防御力を高めない|しないから幸せ南の島の幸福論 Vol.6

防御力を高めない|しないから幸せ南の島の幸福論 Vol.6
Photo: 永崎裕麻

南の島の人たちの生き方から「しない」をテーマに切り取るコラム「南の島の幸福論」。サモアに住む酋長ツイアビさんの言葉から生まれるコペルニクス的転回とは?


サモアに住む酋長ツイアビさんがヨーロッパを旅したとき、マンションを見て驚きました。

1つのマンションに、サモアの1つの村ぐらい多くの人が住んでいると。そして、さらに驚いたことを仲間のサモア人たちに伝えています。

それぞれの家族は、壁一枚をへだてて隣り合っているにもかかわらず、普通、ほかの家のことは何も知らない。まったく何も知らない。

あたかも壁一枚のあいだに、マノノ島やアポリ島やサバイ島(いずれもサモア諸島の島々)や、そのほかたくさんの海があるかのように。

「パパラギ」より引用

「地縁崩壊」が叫ばれて久しい日本(特に都市部)の状況と似ていますね。

私はサモアと同じ南太平洋の島国フィジーで暮らしていて、地縁の深い絆を肌で感じています。

先日も、私たち家族が住む小さなアパートの隣の部屋に引っ越してきたばかりのフィジー人夫婦(50代)の奥さんから電話がかかってきて、「雨が降ったら、ウチの洗濯物を取り込んでおいてもらえる?」と依頼がありました。

日本人の場合だと、「引っ越してきたばかりで、まだ挨拶程度しか交わしていない相手に、そんな依頼は図々しくてできない」となるのではないでしょうか。

フィジー人は依存し合うことによって、つながりを強化しています。人は弱い。だからつながって生きていこう。弱さを認めることで、強固な地縁社会が成り立っています。

「遠くの親戚より近くの他人」という感覚で、血縁だけでなく地縁をしっかりと育てています。

必要以上に防御力を高めない

(入口の壁には)女の乳首のかわいい偽物(=インターフォン)がある。叫び声が出るまでそれを押すと、家族が呼ばれて入口に現れる。

家族は小さな丸い、格子のついた壁の穴を通して、敵が来たのではないかどうか、のぞいてみる。敵ならあけない。

が、友達だったらすぐ、がっちりと鎖をかけた、大きな木の翼を細目にあけ、この隙間を通して客を本当の小屋の中へ案内する。

「パパラギ」より引用

ツイアビさんからみると、ドアチェーンやドアアイ(のぞき穴)はこんな風に見えているんですね。

友達の牧師さん(40代のフィジー人)はこう言います。

「家にも教会にも鍵はかけないよ。楽器とか音響設備とか高価な物も置いているけど、盗まれたらそれはそれでいい。盗られないように策を弄する方がしんどい」

鍵を閉めないことを推奨するつもりは毛頭ありません。

私自身、家の鍵を閉め忘れて仕事に行ってしまったことがあります。

帰宅するまでそのことが頭を離れず、仕事が手につかなかった経験を思い出しました。

でも、冷静に考えてみたら、特段、盗られて困るものが家の中にあったわけでもないと後で気がつき、感じる必要のないストレスに苛まれていたことを後悔しました。

私たちはときに「防御力」を高めることに、必要以上の「お金」や「時間」「気力」などを投資してしまっているのかもしれません。

その投資額(お金だけでなく、心労なども含め)は、防御して守っている物の価値を超えてしまっていないかどうか、見直してみてもいいのかもしれません。

次回は、<誘惑されない>をテーマに『南の島の幸福論』vol.7をお届けします。

至る所に蔓延る「あなたは不完全だ」という広告メッセージに洗脳されることなく、「ありのまま」の自分を楽しむためにはについて考えてみたいと思います。お楽しみに!

>>南の島の幸福論 をもっと読む


永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)Facebook

永崎裕麻

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住し、現在13年目。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府国際交流事業「世界青年の船」「東南アジア青年の船」に日本ナショナル・リーダー/教育ファシリテーターとして参画。ライター、教育企画の立案、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動もしており、フィジーと日本を行き来するデュアル・ライフを実践。2019年からは「幸福先進国」であるデンマークも加えたトリプル・ライフに挑戦中。大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業。二児の父。

世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論

著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

Photo: 永崎裕麻

永崎裕麻

swiper-button-prev
swiper-button-next