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シェアをやめない|しないから幸せ「南の島の幸福論」vol.5

シェアをやめない|しないから幸せ「南の島の幸福論」vol.5
Photo: 永崎裕麻

南の島の人たちの生き方から「しない」をテーマに切り取るコラム「南の島の幸福論」。サモアに住む酋長ツイアビさんの言葉から生まれるコペルニクス的転回とは?


南の島の幸福論」vol.5は「所有」について。サモアの酋長ツイアビさんはこう考えています。

「私の頭は私の物」は正解だが、「私の家の前に生えている椰子の木は私の物」は不正解だと。その椰子の木は誰の物でもないと。

シェアとは何か?

ここ数年、日本でも注目されている「シェア」について、ツイアビさんの金言をみていきましょう。

私たちの言葉に「ラウ」というのがある。

「私の」という意味であり、同様に「おまえの」という意味でもある。二つはほとんど一つであり、同じ意味である。

だがパパラギ(ヨーロッパ人)の言葉には、この「私の」と「おまえの」以上に違いの大きな言葉はほとんどない。

「私の」とは、ただ私ひとり、私だけのものである。

「おまえの」とは、ただおまえひとり、おまえだけのものである。それゆえパパラギは、自分の小屋の範囲にあるものを、すべておれのものだと言う。

「パパラギ」より引用

私が住む南国フィジーでも「俺のものはみんなのもの、お前のものもみんなのもの」という「共有」感覚が非常に強いです。

日本も、高度経済成長期以前は共有する習慣が普通でした。ご近所間で米や醤油などを貸し借りしたり、子どもを預け合ったり、高齢者の介護を助け合ったりと。

フィジーに来る日本人からよく「なぜフィジー人はいろいろとシェアするの?」と質問されます。しかし、日本も昔はシェア社会だったことを考えると、逆の質問が浮かんできます。

「なぜ日本人はシェアをやめたのか?」

理由はいろいろあるとは思いますが、原因の1つは「シェアの必要性がなくなったから」でしょう。

必要なモノは自前で揃えることができる。そんな豊かさを手に入れた結果、シェア率が下がり、人間関係も希薄になっていきました。

人間関係から、悩みも幸せも生まれる

アドラーによれば「人間の悩みはすべて対人関係の悩み」

では、人間関係が希薄になれば、悩みが減って、幸せになれるのだろうか。

答えは否。

幸福学の研究によれば、幸福度の高い上位10%の人たちの共通点はたったひとつ。「社会との結びつきが強いこと」です。悩みだけでなく幸せもまた、人間関係の中にあります。

アドラーはいいます。

「共同体の中で生きていく上で最大の不幸は、自分がまわりに必要とされていないと感じる孤独感であり、最大の幸せは、人に必要とされること」

誰かに何かをシェアすることで、「自分は役に立っている」と感じることができます。人に貢献する行為は人間関係を良好にします。

シェアで人間関係は豊かになる

つまり、シェアは人を幸せにし、それを支える人間関係を豊かにしてくれます。

神はパパラギの「おれのもの」を打ち壊すために、湿気と熱を送られた。パパラギのものは、やがて古び、ボロボロになり、腐っていく。神は、彼らの財宝に襲いかからせるために、火に大きな力を与えた。そして嵐にも。だが、なかでも重く神が定めたもうたのは、パパラギの心の中に恐怖を植えつけたことである。昼間に集めてきたものを夜の間に持っていかれないよう、覚めていなければならないから。

「パパラギ」より引用

温暖化や異常気象は「シェア」をしない私たちに対する神の怒りなのかもしれません。

「集めてきたもの」を失う不安や恐怖はもちろんあります。

でも、フィジー人はシェアをやめません。

モノを独り占めして得る幸せよりも、みんなと共有して得る幸せのほうが、心が満たされるのを知っているから。

私は息子を「ラウ」と名付けました。

ツイアビさんの言葉にあったように、ラウは「mine」と「yours」を合わせた言葉。「私のもの」と「あなたのもの」の垣根を取っ払う「シェア」はこれからの時代、地球にとっての必須スキルだと信じています。

次回は、<防御力を高めない>をテーマに『南の島の幸福論』vol.6をお届けします。

防御力を上げるために鎧(よろい)をまとってしまい、その重みで日常生活に疲れていませんか。鎧の一部を脱いでみることはできないのかを考えたいと思います。お楽しみに!

>>南の島の幸福論をもっと読む

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永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)Facebook

永崎裕麻

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住し、現在13年目。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。

100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府国際交流事業「世界青年の船」「東南アジア青年の船」に日本ナショナル・リーダー/教育ファシリテーターとして参画。ライター、教育企画の立案、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動もしており、フィジーと日本を行き来するデュアル・ライフを実践。2019年からは「幸福先進国」であるデンマークも加えたトリプル・ライフに挑戦中。大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業。二児の父。

世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論

著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。


Photo: 永崎裕麻

永崎裕麻

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