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VUCAの時代。不確実な未来に対する問題解決力を高める「推論」の技術

VUCAの時代。不確実な未来に対する問題解決力を高める「推論」の技術
Photo: 印南敦史

現在、成熟化した多くの市場は、簡単には利益を上げにくい状況になっています。

加えて世の中にはビッグデータがあふれ、デジタル技術やIoT(モノのインターネット)は加速度的に進化。

つまり多くの企業やビジネスパーソンは、これまでにない未曾有の変化に直面しているわけです。

そんななかで我々はどうすべきなのか?

問題解決力を高める「推論」の技術』(羽田康祐 k_bird 著、フォレスト出版)の著者も、本書の冒頭でそのことに触れています。

現在は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)を略して「VUCAの時代」といわれるように、「企業の行く末」はもちろん「組織の在り方」「あなた自身のキャリア」……、一寸先の未来すら読みにくい時代だ。

こうした時代には「今、目の前に見えるもの」から物事を考えるのではなく、「その背景には何があって」「どのような法則が働いて」「どのような未来になりうるのか?」を見抜く必要が生じてくる。

そうである以上、今あなたに必要なのは、不確実性の高い環境変化を読み解いた上で確実性の高い結論を生み出す「推論力」だ。

そして、推論力を元にPDCAを愚直に回すことによって初めて、さまざまな問題を解決できるようになる。(「まえがき『正解』から『可能性』へ」より)

著者は、外資系コンサルティングファームと広告代理店でキャリアを積んできた人物。

その経験からも、これからの時代に必要な能力は、左脳と右脳を駆使しながら未来の可能性を見出す「推論力」であると断言できるのだそうです。

しかし、そもそも「推論力」とはどのようなものなのでしょうか?

その疑問に対する答えを、第一章「可能性を広げる推論力 今後希少性が高まるスキル」のなかから探し出してみたいと思います。

推論力とはなにか?

日常的に仕事に臨むなかで、「なにをどう考えていいかがわからない」状態に陥ってしまうことはあるもの。

いいかえればそれは、未知の出来事に出くわして、思わず「頭が固まってしまう」状態でもあります。

それを、未知の出来事に対する「推論」が働かず、思考停止になっていると表現することもできるでしょう。

たとえば浅い分析しかできなかったり、伝えたいことが伝わらなかったり、いつも仕事がギリギリになったり、提案が通らなかったり…ビジネスの現場では、大なり小なりさまざまな困難に直面するわけです。

しかし、その原因を見抜いたり、解決に向けた仮説を考えることができなければ、ビジネスを前に進めることは不可能。

だからこそ、問題の原因を見抜いたり、仮説を考えたりする際には「推論力」が必須になるという考え方です。

なお本書では、「推論力」を次のように定義しているのだそうです。

推論力=未知の事柄に対して筋道を立てて推測し、論理的に妥当な結論を導き出す力(22ページより)

さまざまな問題の原因を見抜くために求められるのは、「なぜ問題が生じたのか?」という「見えない原因」に対する推論力

加えて、仮説を考える際にも「見えない未来」に対する適切な推論が必要不可欠だということ。(20ページより)

推論力は、今後希少性が高まるスキル

端的にいえば「推論力」とは、見えないものを推測し、適切な結論を導き出す力。それは、

ビジネス思考力:何をどう考えるべきか。

分析力:物事や関係性をどう捉えるべきか。

コミュニケーション力:何をどう伝えるべきか。

生産性:何をどう進めるべきか。

提案力:どう期待と納得をつくり出すべきか

(37ページより)

という、ビジネスに不可欠な主要スキルを支える中核能力であると著者は主張しています。

たとえば、もし「日本語の読み書き」という中核能力がなかったとしたら、日本語で出題された「国語」「算数」「理科」「社会」の問題を解くことはできません。

同じように、もしも「推論力」を身につけることができなかったら、「ビジネス思考力」「分析力」「コミュニケーション力」「生産性」「提案力」を向上させることはできないわけです。

つまり「推論力」は数多くのビジネススキルの中核に位置し、広い範囲にまたがって大きな影響を与える能力だということ。(37ページより)

情報洪水時代の3つの副作用

市場成熟化やインターネットの発達によってモノや情報が氾濫する近年は、大きく分けて3つの副作用が顕在化しつつあるといいます。

1つ目は、モノや情報の差別化が難しくなっていること。

多くのモノや情報が簡単に手に入るため、それ自体で価値を生み出すことが難しくなっているのです。

2つ目は、情報が流れるスピードが速くなるあまり、ひとつひとつの情報の「意味合い」や「解釈」が難しくなっていること。

情報に追いすがるのが精一杯の状態となり、情報を解釈し、推論を働かせることに手が回らなくなっているということです。

そして3つ目は、私たちの働き方が問われ始めていること。

情報やデータがリアルタイムに可視化され、高速PDCAが進むと、結果的には疲弊を招くばかりか「次の仮説を立てる」という仮説検証サイクルが回らなくなるわけです。

そんな時代だからこそ、数あるなかから重要な情報を見抜き、早い段階で精度の高い「解釈」を加え、独自の「推論」に変える「推論力」が必要だということ。

それこそが、自分自身の希少価値になりうるという考え方なのだと著者は訴えているのです。(38ページより)


こうした基本を踏まえたうえで、以後の章では「推論力」についての深い考察がなされていきます。

そこで知ることのできるノウハウは、ビジネスの精度を高めてくれるはず。

そういう意味において本書は、いまこそ読んでおくべき一冊だと言えそうです。

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Source: フォレスト出版

印南敦史

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