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声かけは肯定語で。「行動したくなる環境」を生み出す2つのポイント

声かけは肯定語で。「行動したくなる環境」を生み出す2つのポイント
Photo: 印南敦史

最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす』(鈴木颯人 著、KADOKAWA)の著者は、スポーツメンタルコーチ。

アスリートの心理的な「思い込み」を取り除き、望む結果に最短距離でたどり着くメンタルコーチングを行っているのだそうです。

立場上、さまざまな悩みを聞いているそうですが、とくに多い相談が「いまいるメンバーが思いどおりに動かない」ということ。

そして、そのことで悩む人の大半は「リーダーはこうあるべき」という理想像を描き、指示命令して人を動かそうとして現実とのギャップに苦しんでいるのだといいます。

ところが著者は、「リーダーに命令など必要ない」と断言しています。

皆に命令して引っ張るのではなく、皆が自然と「行動したくなる」環境を作り出すことのほうが、100倍簡単なうえに、100倍早く結果を出せるからです。

かといって、ボトムアップのような仕組みを作る必要もありません。

方針を示すだけでメンバーが主体的に動き出し、あなたが動かなくても結果を得られるようになれば最高ですよね。それを目指そうというのが本書の目的です。(「はじめに」より)

そのために重要なのが、いまいるメンバーとしっかり人間関係を築くこと

そこで本書では、スムーズな人間関係が築けるように、相手とのどんな「違い」=ギャップにフォーカスして対話すればよいのかを明かしているのです。

違いは多数あるものの、なかでも大切なのは「感覚」「言葉」「意識」「期待」「目標」という「5つの違い」。

それらを意識して対話することで、相手との関係性は驚くほどよくなるのだそうです。

きょうは第2章「『言葉のギャップ』に注目→メンバーを伸ばす『接し方』がわかる」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

望んだ結果が手に入る「肯定語」の声かけ

著者は「言葉の力」を力説していますが、それには明確な理由が。

ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授ジェラルド・ザルトマンによれば、脳の中の割合は「意識」が5%、「無意識」が95%と言います。

実に9割以上を占める「無意識」が、私たちが使う「言葉」によって勝手に反応しているわけです。(61ページより)

事実、「梅干」や「レモン」を頭のなかで想像すると、口のなかが酸っぱくなってきて唾液が分泌されてきます。

ここからもわかるとおり、脳はイメージと現実を区別できないのです。とはいえ、そういった事実が「言葉」とどう関連してくるのでしょうか?

このことに関連して、著者はある実験を行ったことがあるのだそうです。

容器になみなみと注がれた水を運ぼうとする子どもに、「こぼさないように運んでね」と声をかけたところ、全体の約50%の子どもが水をこぼしてしまったそう。

一方、「しっかり運んでね」と声をかけた場合は全体の80%弱の子供が水をこぼさず運んだのだとか。

それほど体は「言葉のとおり」に反応するということ。

「梅干を想像しないでください」と言われれば、思わず梅干を想像してしまうのと同じで、「こぼさないように」と言われると、「こぼす行為」を無意識のうちに思い浮かべてしまうため、神経や筋肉が反応するのです。

つまり無意識(潜在意識)は、否定語を認識できないということです。

しかし、逆に「しっかり」という言葉をかけられると、「しっかり持つ行為」を想像するため、そうなるように体が動いてくれるわけです。

そして、同じことは部下についても言えると著者は主張しています。リーダーがどんな言葉をかけるかによって、メンバーの行動は変わってくるものだということ。

なお、どんな言葉をかけたらよいか迷ったときは、次の例を参考にするといいそうです。

×納期を守ってください→○あなたなら納期までに仕上げられると思います

×失敗しないでください→○うまくいくよう願っています

×緊張しないでください→○あなたらしく楽しんできてください

×プレゼンでは噛まないでください→○あなたならもっと丁寧に話せると思います

(65ページより)

このように否定語を使わず、できるだけ肯定後で伝えられる方法を考えてみるべきだという考え方です。(61ページより)

相手のやる気に火をつける「キラーフレーズ」

ここで紹介されているのは、相手のイメージ力に訴えてパフォーマンスを上げる方法。伝え方のコツは、上記の「否定語を使わない」に加え、次の2点だといいます。

・具体的であること

・相手と自分の共通点を話題に取り入れること

(66ページより)

営業成績で伸び悩む人に「もっと訪問件数を増やしたほうがいい」と伝えても、相手は「具体的にどうすればいいか」がイメージできないもの。

しかし「具体的であること」を意識すると、印象が変わってきます。

訪問件数をいまの1.5倍にするにはどうしたらいいと思う?

このようにリーダーが問いかければ、言われた側は「なにをすべきか」について具体的に考え始めることができるようになるのです。

そして「相手と自分の共通点を話題に取り入れること」とは、話す相手との共通の会話に盛り込むということ。

趣味や職歴、住んでいる場所、年齢など、共通することならなんでもOKだそうです。

たとえば、なかなか結果を出せなくて悩んでいるメンバーと自分との間に「ラグビー好き」という共通点があったとしましょう。

そんな場合、ラグビーの話を引き合いに出し、「いまのこの状況、リーチマイケルならどうすると思う?」などと会話のきっかけにするわけです。

つまりは、相手と自分で共有できる話題を話の“架け橋”にするという考え方。

そして、架け橋となる特定の言葉によって相手の目が輝いたり、テンションが上がったりする様子が見られれば、その言葉を「キラーフレーズ」とし、おりに触れて出すようにすべき。

するとメンバーのやる気に火がついたり、コミュニケーションが円滑になったりするからです。(66ページより)


このように平易で具体的なので、ピンときたメソッドをすぐに役立てることが可能。命令なしで動いてくれるメンバーを育てたいのであれば、大きく役立ちそうな一冊です。

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Source: KADOKAWA

印南敦史

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